14.1対25でざまぁ!
クードヴァンの元には、次から次へと渡り鳥たちが情報をもたらした。
中には使い魔とした鳥もいるが、大半は本当はユニコーンであるクードヴァンに恩を売って、取り入ろうと考えている計算高い鳥たちだった。
クードヴァンはほぼリアルタイムに、ゴリモーリたちの足取りを掴んでおり、冒険者街の外れにある廃屋にたどり着いた。
「なるほど。25人も集まっているのか……」
「ピー!」
小鳥たちの助力によって、すでにゴリモーリ隊の人数や配置などは筒抜けとなっていた。どうやらゴリモーリたちは日ごろから、女性や少女をさらっては、この廃屋で拷問をしたり辱めを与えてから売り飛ばす行為を繰り返しているという。
「なるほど……常習犯だからこそ、ここまで手慣れていたという訳ですね」
「ピー!」
クードヴァンは頷くと夜の森の中へと身を隠し、服を脱ぎ捨ててからユニコーン化していく。
やがて、リットーゲイルとなった彼は、エメラルド色の角を光らせたまま、正面からゴリモーリ隊の立てこもる廃屋へと乗り込んでいく。
「な、な、何でこんなところにユニコーンが!?」
『退け、三下』
そういいながら近寄ると、男たちは「ざけんな!」と叫びながら武器を構えて向かって来た。
カンカンボコ、カンドカ、パコン、ドン、ボカッ!
三下でも5人がまとまっていると、多少の抵抗はできるものである。
それでも全体の4割が倒されると部隊の力は維持できなくなり、一方的に倒されてしまうものだが。
リットーゲイルがドアを蹴破ると、中では後ろ手縛りにされた受付嬢ゾーイは横向きに倒れ、水をかけられたまま震えている。
ドアを蹴破るまでは、一方的な暴力を楽しんでいたゴリモーリ隊の連中も、邪魔をするなと言いたそうにリットーゲイルを睨んできた。
「おい、なんだこのウマは!?」
「角が光ってる……ユニコーンじゃねえか!」
「ひゅううう! カモがネギしょってやって来るとはこのことだなぁ!」
ゴリモーリもまた、リットーゲイルの姿を見ると得意げにいった。
「へっ……本日のイケニエにつられて、とんだ獲物が紛れ込んだもんだぜ」
その手がバケツを掴むと、中に入った水をお構いなく受付嬢のゾーイにかけた。
「お前ら! 俺様が許す……そのウマをぶっ潰せ! 止めを刺したヤツにゃ……角の代金の半分をやる!」
その言葉を聞くや否や、一斉に20人近い男が武器を手にリットーゲイルに襲い掛かってきた。誰しもが野獣のような顔をして、奇声をあげながら飛びかかって来る。
一方リットーゲイルは、角を真っ赤に光らせた。
ドバーーーーーーン!
最初の男の剣が振り下ろされるよりも前に、爆裂魔法が廃屋ごと敵を吹き飛ばし、ゾーイの周りだけ大地系の防護壁で守られている状態だった。
その一発を受けて、立っている敵は5人ほどまで減り、そのうちの3人が耳から血を流し顔中が黒焦げという状態だ。
愕然とする様子のゴリモーリを前に、リットーゲイルは何食わぬ顔で言った。
『おや、突然謎の大爆発なんて……君たちもついてないね』
その緑色の瞳が、近くで転がっているならず者を映した。
『辛うじてまだ、生きているようだけど……両目ともに失明で、更に全身が大やけど』
別のならず者の姿も映した。
『こっちは、がれきが体に突き刺さったから大変だ。あと1時間くらいが限界だろうし、地獄の苦しみだね』
「な、なにが言いたい!?」
ゴリモーリが叫ぶと、リットーゲイルはすまし顔で言った。
『だけど、これも天罰ってやつかな……君たちだって、関係ない女の人を拉致して、水責めという拷問までしていたんだからね。このまま逝くというのも天の意志だろう』
「ふ、ふざけんな!」
ゴリモーリが荒々しい声を上げると、リットーゲイルは少し険しい表情をした。
『今の言葉、自分たちの悪事は見逃して仲間は助けろ……そう言いたいのかな?』
「よくわかってるじゃねえか! 俺様を誰だと……」
『プラチナ貨15枚』
「はぁ!?」
ゴリモーリは青筋を立てたが、リットーゲイルはゲス顔をしたまま言った。
『命令だ。この人質……15人の命が惜しければ、今すぐにプラチナ貨15枚を払え』
その言葉を聞いたゴリモーリは、ブルブルと身を震わせながらリットーゲイルを睨んだが、その瞳を見て悟ったようだ。
そもそも目の前に立っているのは人間ではない。コイツは無価値と判断した人間の命が消えることなど、何とも思っていないのである。
「けっ……」
捨て台詞と共に、プラチナ貨の入った革袋がリットーゲイルの脚元に投げられると、彼は目を細めた。
『2枚足りないよ?』
「ひ、開いてないのに……どう……」
『音でわかる』
そう言いながらリットーゲイルが耳を動かすと、ゴリモーリは舌打ちと共に2枚のプラチナ貨をリットーゲイルの脚元に投げた。
『確かに……』
そう言うと彼は、大地魔法でゴリモーリたちを次々と気絶させると、全身に大やけどを負った手下たちに治癒魔法をかけて応急処置を施した。
ゲスコーンとはいえ一角獣。一度交わした約束は守るようである。
一通りの仕事を終えると、リットーゲイルは角を赤く光らせながらゾーイを暖めていた。
『ケガはないかい?』
「ありがとうございます……このご恩は忘れませ……クシュン!」
鼻をすすると、受付嬢ゾーイは心配そうに言った。
「でも、大丈夫なのですか……この者たちを生かしておいたら、貴方に危害が……」
『ああ、そのことなら既に対策は考えてあるよ。ちょっと耳を貸して』
そして数時間後、気絶していたゴリモーリは頭を抑えたまま起き上がった。
「いつつ……あのウマ、ここまでやっておきながら止めを刺さねえなんて、意外と甘い奴だぜ」
その口元がいびつに歪んだ。
「次あったときがヤツの命日だ。くくくく……」
そう言いながら剣を取ろうとしたゴリモーリだったが、自分の背格好が変わっていることに気が付いたようだ。
「え……は?」
剣の刃先に自分の顔を映すと、そこには全く別人の……それも女性の顔が映っており、身長も2メートル越えの大男から、150センチほどまで縮んでいた。
「お、お頭……あれ? お頭どこ?」
次々と子分たちも起き上がったが、全員が女性ばかりになっていた。
そう。ざまぁ職人はあえてゴリモーリたちを生かし、そして固有スキル【性別転換】を用いることで、全員を女性化させていたのだ。
「つーか、お前……誰だよ?」
「お前だってだれだよ、つーかブスだし!」
「なにこれ……悪人づらのブスばっかりじゃん。どーなってるのぉ!」
リットーゲイルは物陰からその様子を見ていた。
『君たちも女性になって今まで以上に苦労すれば、もっと見識が広がるだろう』
その表情がゲス顔になっていく。
『この地域は男尊女卑……どれだけ君たちがいい思いをしてきたか、たっぷりと理解できると思うよ?』
リットーゲイルの救済者 10人(?)目:ゴリモーリ隊の方々
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