逃げた先に。
――あの後、私たちは何も言わなかった。
ただ、家族の再会を邪魔しないようにと。
翌日。私たちはいつものように学校に来ていた。
教室で、二階堂さんと一緒に三上君を待っていた。
あんなことになったから、もしかしたら今日は来ないかもしれない。
特に、前川さんはいつになく静かだった。
「うーっす……」
それをいい意味で裏切るように、気だるげに入って来た。
「先輩、休んでなくて大丈夫?」
「ああ……俺も学校なんて休みたかったが、母さんが許してくれなかった」
「……いいんですか?」
「心配するな。みんなには会いたかったから」
ほっと一安心する。その笑顔に噓はない。
不意に、三上君が目を開く。視線の先には前川さんがいた。
じとーっと見つめ、急にそっぽを向いた。
「……乱暴、暴言女」
「〝あ〝あ?」
「前川さんどうどう!」
すぐにでも殴りかかる気迫だった。
「もう、先輩?」
「……わかったよ」
二階堂さんに窘められて、渋々佇まいを直していた。
なんか、お母さんみたいですね……
「悪かった。酷いこと言った」
「……ボクもごめん。言い方が悪かった」
「……なんか、二人が真面目だと調子狂いますね?」
「ホントだね?」
「……今、いい感じに青春してたぞ」
「あやなっち空気読め~?」
全員で笑う。何と言うかこれが私たちらしい。
そうだった。オルタナティ部ってこんな感じだ。
「所でせーじん? 返事は?」
「何の?」
「みそっちの告白の」
「んなっ!」
二階堂さんが素っ頓狂な声を上げる。
手を繋いで戻ってきた二人。そのことについてしつこく問いただしていた。
「みそっちのあれ、告白でしょ?」
「えっと…………うん」
観念したらしい。
「なら返事するのが……おいこら? どこ行く気だ?」
「いやぁ……その、ちょっと用事を……すたこらサッサ!」
「おいゴラァ! 待てやせーじん!」
「HRまでには帰ってきてくださいねー?」
二人が廊下に飛び出していった。
「行っちゃいましたね……いいんですか?」
「うん、いいよ。だって、逃げるってことはさ?」
嬉しそうに一呼吸置いた。
「それだけ真剣に考えてくれるってことだから」
「……そうですね」
三上君の言う通り、逃げることはそんなに悪いことじゃないかもしれない。
当然、向き合わないといけない時だってある。
それでも、居場所はきっとある。
今は一人でも、逃げた先にはきっとあるから。
「――待てぇ! 後輩の気持ちに応えろ!」
「待ってくれ! 本当、今は勘弁してくれ!」
完結しました。ここまで読んでくれた方がいれば感謝しかありません。最後の方は賞の文字数制限で急ピッチになってしまいました。計画性がないですね。
しばらくはもう一つの方に専念します。




