騒動の後。
「――はい。こちらでも、この子にはよく聞かせますので」
西澤先生の前、俺の隣で深々と頭を下げるスーツ姿の男。
「本日は大変、申し訳ありませんでした」
「いえ、頭を上げてください。事情が事情ですので」
放送室乗っ取りの後、先生に呼び出された。
教師陣はお冠と言った様子で、重い処罰も覚悟していた。
ただそれは、西澤先生の取りなしで事なきを得た。
それでも問題行動ではあるので放課後に、改めて親も交えてのお話である。
「これは一個人としてですが、今回の件は胸がすく思いでした」
弛緩した表情から、雑談に切り替わったのが理解できた。
元々、親への注意も形式的なモノだったらしい。
「ただ教師としては最低な発言なので、どうか内密に」
「いえこちらとしても、そう言って頂けると荷が軽いです」
「成人君も、立場上は褒められないことを承知してください」
優しい笑みを背に、頬を擦りながら退出した。
「……いてぇ」
「だははは! ま、成人君の自業自得だな!」
「だって親父、グーだぞ? 女の子がグーだぞ?」
さっきまでの真面目な空気はどこへやら。
豪快に笑いながら背中をバンバン叩かれる。
「てか、いいのか? 俺に言い聞かせるんだろ?」
「あんな話聞かされて、怒れる親がどこにいるんだ」
叩いていた手を、今度は頭わしゃわしゃに切り替えた。
「とは言っても、母さんは怒ってたが」
「母さんが⁉」
「監督不行届け案件だって、怒られたよ」
「そう、か……その、帰ってくるとかは……」
前のめりになった体を引き戻す。
その言葉には、神妙な面持ちで首を振られる。
淡い希望だと理解していても、肩は落ちる。
「大丈夫だ! 家に帰れば愛しの父さんと、お兄ちゃんが待ってるんだ!」
努めて明るく、迎えるように両腕を広げる。
「……努君はまだしも、親父はなぁ」
気を遣わせたことを反省して、軽口を叩き直す。
「さてと。父さんは帰るつもりだが、一緒に乗っかってくか?」
「……いや、いいよ。父さんも悪い、呼び出して」
楽したい気持ちもあるが、今は他の二人が気になる。
考えを読んだように「気にすんな」と手を振っていった。
「――あ、因みに……お小遣い一割減だぞ? 父さんたち」
「うげぇ、まじか」
最後に大事なことを言い残してからに。
ため息を吐くと、入れ替わるように足音が近づいてくる。
その少女はと言うと、ジトーと音が出そうな視線を浴びせてくる。
「あの、機嫌が悪いっすか?」
「は?」
「ごめんなさい俺が悪かったです」
とげとげしい物言いに、頬骨が疼く。
「誰かさんのせいで、私の性癖が校内放送されましたけど」
そのままぶつぶつと文句を連ねる。
「半分は自爆だったと思うが」
「は?」
「あー、そっちはどうだった?」
「……説教もありましたが、心配の方が大きかったですね」
呆れからため息を吐かれた。
「紗那香さんは? 何か言ってたか?」
「えっと……大爆笑してました」
遠い目をしている。何となく想像がつくのが良くない。
「おーい! 二人ともー!」
心美が遠くからやって来る。
その後ろに、二階堂もいた。
「いやー、まいったね! お母さんにド叱られちゃった!」
「だよな……何で、頬が腫れてるんだ?」
「あやなっちに叩かれた!」
容赦がない。そう、視線を送ると顔を逸らされた。
「……先輩たちごめん!」
突然、二階堂が頭を下げだした。
「何で二階堂が謝るんだ?」
「だって、あたし……何もできなかったから」
「そんなことないよ! そみっちがいなかったらもっと大変だったよ?」
鍵を貸してくれなかったら、この状況にならなかっただろう。
校内の張り紙を全部剥がしてくれたのも二階堂だ。
「はい。むしろ私はお礼が言いたいです」
体を曲げて、下げた頭を下から覗き込むようにする。
「ありがとう、二階堂さん」
「……うん」
罪悪感が軽くなったのか、ゆっくりと顔を上げる。
「ひそひそ……俺たちには暴力振るった癖にな」
「ひそひそ……だよね、フルスイングだった」
「その点についてはちゃんと反省してくださいね?」
微笑みに対して、強い威圧感が放たれる。
二人で一緒に誤魔化すと、心美の腹が鳴る。
「よし。ケーキでも食べに行くか、美味い所を知ってるんだ」
「お、いいね! 勿論、君のお奢りだよね?」
「……二人には迷惑を掛けたからな、今回だけだ」
「あたしまで……いいの?」
遠慮がちな二階堂に、心美が肩を組んだ。
だが、意外にも新波さんが頭を下げる。
「あの、ごめんなさい。私、この後、用事があって」
「そうか? それなら仕方ないな」
申し訳なさそうに、その場を後にする。
「新波先輩、大丈夫かな?」
「さっきも嫌味言ってたし、よっぽど大丈夫だぞ」
馬鹿みたいなやり取りができている。
少なくとも、昨日よりはマシだろう。吹っ切れただけかもしれないが。
「――二階堂も家こっち側なんだな」
三人で電車に揺られている。
「うん。あたし、先輩見かけたことあるから」
「それってー、もしかして狙ってるんじゃないのぉ?」
「そ、そんなんじゃない! せーじん先輩も違うから!」
ニヤニヤと揶揄う心美に赤くなって吠える。
やっぱり、二階堂の気持ちってそういうことに……なるのだろうか。
純粋な好意に時々、どんな態度をすればいいのか困る。
「君、ケーキ屋なんてお洒落なお店行くんだね?」
「ホントに意外……男はあまり興味ないと思ってた」
「二人とも、割と失敬だな。男でもスイーツは好きだぞ」
地図アプリを頼りに歩き出す。
目的地に近づくと、こじんまりとした店が見えてくる。
店内に入ると、小さな飲食スペースと、その向こうにショーケースが見える。
二人が音を漏らし、密かに目を輝かせる。
「美味しそう……本当に良いの?」
「いいぞ。但し一人一個まで」
「じゃあ、ボクはこのフルーツタルト!」
「その心は」
「可愛いから!」
即決する横で、二階堂が悩んでいる。
「チョコ……でも、クリームも……あ、モンブランも美味しいかも」
「スイーツ、好きなんだな」
「……イメージ、じゃない?」
「全然。あれだけ美味しいの作れるんだし」
「そ、っか……また、作ろっか?」
「い、いいのか? 何か申し訳ないな」
照れくさそうに提案され、釣られて言葉に詰まった。
「ならボクも食べたい!」
「お前は遠慮を知れ」
「君ばっかりズルいんだよ!」
「いいよ先輩。あたし、作るの好きだし」
どことなく嬉しそうに頬を掻いている。
少なくとも、負担とは思っていないようだ。
「そんなに悩ましいなら、みんなで分けるか」
「え?」
驚いた様子で顔を見てくる。
「嫌だったか?」
「あ、いや違くて。そういう距離感、あんまし慣れてなくて」
落ち着かないようで、ソワソワとしだした。
「いいねそれ。じゃあ、君はチョコだね」
「何故、心美が決める……すいませーん」
「はーい。ご注文は――」
ショーケースから視線を上げたその時。
そこには、見覚えのある顔があった。
「――お帰り下さいませご主人様⁉」
「新波先輩……⁉」
「ここそう言う店じゃないだろ」
「あやなっちはどういうシュチュを想像してるんだろ」
何事かと出てきた店員さんに事情を話す。
すると、笑顔で新波さんに休憩を上げてくれた。
なろうでもAIがどうのこうのという話が出てきましたね。かく言う私もAIは多少使用しております。項目で言うと「補助利用」に当たりますね(誤字脱字のチェック、壁打ち等の利用に留まる)。なので、本文は私が書いてます(そもそもAIならもっと上手く書くと思います)ので、そこはご安心ください。
それから、こちらではなくカクヨムの方になりますが「このライトノベルがすごい!WEB大賞」に二作応募してみようと思います。規約を見る限り、なろうとの同時掲載でも問題ないと思うのでこちらも更新は続けていきます。
「カクヨムではそんなことやってんだ、へー」ぐらいに思って応援していただければ幸いです。




