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私が着られなかったロリータ服を、異世界で広めます。  ―転生令嬢のドレス革命―  作者: 烏斗
第5章:黒という美

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第31話 夜に映える美しさのかたち

ヴィオレッタ邸の書斎。

大きな机の上には、いくつもの布見本と紙が広げられていた。

黒い布。

深い色の生地。

細いリボン。

そして一枚の、白いレース。


ヴィオレッタは椅子に腰掛け、静かにペンを動かしている。

紙の上にはドレスの線が描かれていた。


侍女が少し離れた場所から、その様子を見守る。

「新しいドレスのデザインですか?」

ヴィオレッタは手を止めずに答える。

「ええ」


机の上の紙には、フェリシアドレスとは少し違う形のスカートが描かれていた。

ふんわり広がる形ではあるが、丈は長く、足首まで届く。

「まず、スカートは長めにしましょう」

ヴィオレッタは線をなぞりながら言う。

侍女は少し驚いた。

「長いのですね」

ヴィオレッタは頷く。

「可愛いドレスは軽やかです。ですが、私のドレスは――落ち着いた美しさを持たせたいのです」


次に描いたのはフリル。

しかし、その量は控えめだった。

「フリルは少なめに」

侍女が首を傾げる。

「最近は、フリルが多いものが流行っていますよね」

ヴィオレッタは静かに微笑む。

「それも一つの形です。ですが、フリルを減らすことで縦のラインが際立ち、スカート全体が静かに広がります」


ヴィオレッタはスカートの下にパニエを重ねることを思い浮かべる。

「パニエを使い、裾の広がりは抑えめに。静かに、しかし確かに形を整えます」


さらにヴィオレッタは布を手に取る。

柔らかな黒い布の上に白いレースを重ねる。

光を受けて、繊細な模様が静かに浮かび上がる。


「そして――」

「レースは飾りではなく、輪郭として使いましょう」

袖、襟元、スカートの裾――白い線が黒い布の上で立体的に形を際立たせる。

侍女は息をのむ。

「綺麗……」


ヴィオレッタは静かに頷く。

「フェリシアドレスとも違います」

ふんわり軽やかなスカート、明るい色――

光の可愛さを持つフェリシアドレス。


「ですが――私のドレスは、夜の美しさを持たせます」

縦のライン、控えめなフリル、白いレースの輪郭。

長く静かに広がる黒いスカートは、パニエに支えられながらも重くなく、静かな存在感を放つ。


侍女は思わず呟いた。

「可愛いのですが…」

「……少し怖いほど美しいですね」

ヴィオレッタは微笑む。

「それでいいのです」


机の上の白いレースが、夕暮れの光を受けてゆっくり影を落とす。

「可愛いは光のドレス」

「私のドレスは――夜のドレスです」


ふんわり広がるパステルカラーのスカートの少女たちと、静かに影を落とす黒いドレス。

光と影――二つの美しさが、王都に新たな彩りを加え始めていた。

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