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最終話 それから
修学旅行から数ヶ月。
既に春の季節だ。
三年生は卒業式を終え、学校は少し寂しくなっていたように思う。
俺と倉世の関係は更に遠くなっていった。
もう、それで良いと思った。
どうにも出来ないから。
どうにもならないから。
俺は、諦めた。
本当は、未練という物は色々あって、そんな簡単な話でもなかったが。
端的に言えば、諦めたのだ。
「篠森」
「どうしたの、甲斐谷……?」
ただ、諦めるきっかけも確かにあった。
「悪い、呼び出して」
俺と篠森以外に生徒は居ない空き教室。
「……ちょっと言っておきたい事があって、な」
たった、一言。
修学旅行のあの日に篠森が乗り越えた、一言を。
「────好きです、付き合ってください」
俺は震える声で吐き出した。
あの日断っておきながら、どの口で。そんな気持ちもあった。
「篠森……いや、楓」
俺は篠森の名前を、下の名前を呼ぶ。
「────うん」
篠森が顔を真っ赤にして首元を撫でながら目を伏せて頷いた。
「帰ろ、甲斐谷」
差し出された篠森の右手を取った。




