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第188話 点呼

 大浴場から出て、部屋に戻る。

 ベッドに座り、俺はスマホで時間を確かめれば通知が一つ。風呂に入っている間に届いたらしい。

 

「…………」

 

 篠森からだ。

 内容は『何があったの?』と言う、突然の予定変更の理由を確かめる物。

 

「悪り、ちょっと飲み物買ってくる」

 

 部屋に戻って二、三分。

 山邉が財布を手に、扉に向かう。

 

「ん……ああ、おう」

 

 俺は顔を上げてから山邉に返事する。

 

「何か欲しいのあったら買ってくるぞ? 後で金は貰うけどな、今回は」


 前回とは違って。


「いや、俺の分は良いよ」

 

 気にしないで自分の分だけ買ってくるように。欲しかったら、俺も自分で買いに行くつもりだから。

 

「そうか。んじゃ、留守番頼むな」


 山邉は頼むが。


「留守番って……」

 

 まあ、何だって良いか。


「取り敢えず、行ってくる」


 俺は山邉が部屋から出ていくのを見送る。


「そうだ」


 入力の途中だった『予想外に水戸部が来てな』というメッセージを、最後まで書き切ってから送信する。

 篠森から『そっか』と一つメッセージが返ってきて、直ぐに『そう言う事あって』と続いた。

 

「……ごめん」

 

 俺が謝罪を口にしながら、同じように謝罪のメッセージを打ち込み、再び篠森に送る。

 直ぐにスマホが震える。

 

「…………」

 

 メッセージは『大丈夫』と。

 それを見ていれば一〇秒も待たずに『明日、大丈夫?』という確認がくる。

 

「そう、だな。明日に……」

 

 俺は『明日、頼む』と篠森に。

 送信して間もなく、ドアの開く音がする。

 

「────よっ、と」

 

 山邉が扉を開いて部屋の中に戻ってくる。手にはペットボトルのジュースを握っている。

 

「何かしてたか?」

 

 山邉はベッドに向かいながら、俺を見て聞いてくる。

 

「いや、特には」

「まあ、言うて一〇分も経ってないから別にやれる事なんて特に無いか」

 

 腰を下ろし、ペットボトルの蓋を開け中身をゴクゴクと流し込む。三分の一程を飲んでから口を離し「ふう」と息を吐いた。

 

「てか、テレビ点けてないのかよ」

 

 山邉が暗いテレビを見つめながら言う。とは言え、直ぐにでも立ち上がる気配はない。

 

「点けるか?」

 

 俺はスマホを右太腿の横に置いて立ち上がり、テレビのリモコンを取るためにベッドから立ち上がる。

 

「悪い悪い」

 

 山邉が軽い謝罪を口にしながら、俺がテレビを点けるのを座ったまま待ってる。

 

「……で、今って何入ってんの?」

「チャンネル変えて良いか」

「おう」

 

 俺は適当にリモコンを弄り、チャンネルを幾つか変えてから番組表を開き、山邉にリモコンを渡す。

 

「ん」

 

 山邉が番組表を横に移動しながら、入っている番組、これから入る予定の番組を確かめていく。

 

「ぬぁ〜、特に観たいのも無いんだよな」

 

 番組表画面から元の画面に戻し、山邉は適当にチャンネルを変えてリモコンから手を離す。

 

「そういや点呼って何時からだっけか?」

 

 テレビから視線を外し山邉が聞いてくる。俺はしおりを鞄から取り出して、これから行われるであろう点呼の時間を調べる。

 

「……一〇時半だな」

「じゃ、もうちょいか。今日は先生、部屋まで来るんだろ?」

「らしいな」

 

 と言うのは、今日は夜の自由行動があったからだろう。部屋を確認した方が確実性がある。

 

「今日は眠くないのか?」

「ん? ああ、まあ昨日よりは平気」

 

 初日ほど早起きをすると言う事もなかったからか。至って普通の学校に行く日の朝のような起床時間。

 

「先生来るまで何してっかな」

 

 山邉が天井を見上げて言う。

 

「……そうだな」

 

 俺も特には思い浮かばない。

 ただ流れる映像を眺める。

 そうして時間は自然と流れていき、気がつけば一〇時半。扉を叩く音が聞こえて、近い方にいる俺が立ち上がる。

 

「はい」

 

 扉を開けば見回りに来た先生が「山邉は」と聞いてきた為、部屋の奥の方も見えるようにする。

 

「……どっちも居るな」

 

 持っていたのは名簿か。

 チェックを入れるような手の動きをしてから、顔を上げる。

 

「明日は八時から朝飯だ。会場は今日と同じ。その後の事は朝飯の時に伝える」


 後は、と呟いてから。


「特にないな。じゃあ、おやすみ」

 

 そう告げて次の部屋に向かう。

 俺はゆっくりと扉を閉めてベッド近くまで戻る。

 

「明日、八時に朝飯だと」

「了解」

 

 点呼も終われば、後は自由だ。

 先生が部屋に来ると言う事も基本的にはないだろう。

 

「…………っと」

 

 俺はベッドに座り、そのまま仰向けに倒れる。

 

「もう寝るか?」

「いや、ちょっと」

 

 倒れただけで、直ぐに寝ると言うつもりはなかった。ただ、少しこうしたかっただけだ。

 とは言え、このまま眠ってしまっても問題はない。

 

「まあ、俺も特にする事もないし……電気消すか?」

「消しても良いよ」

「んじゃ」

 

 山邉が「よっこいせ」と立ち上がり、電気のスイッチを押しに行く。天井に付いている電気の明かりは消え、部屋を照らすのはテレビの光だけだ。

 

「テレビ……は、このままで」

 

 山邉はテレビを点けたままにして戻る。


「じゃあ、おやすみな。甲斐谷」

「ああ、おやすみ」


 山邉も寝る準備ができたのだろうか、挨拶を交わしてから隣のベッドから倒れ込むような音が聞こえた。

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