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かわいいひと:6

森の奥にある岩場をひたすら下って、細くなってゆくその岩場を最後まで下って行くと、ミナモトだと教えられた。

キヤイルの母が作った白い衣をまとい、父が作った丈夫な革の靴を履いて、ネリーはキヤイルに導かれ足元の悪い道を歩いていく。

ボルフには悪いが、キヤイルが来てくれてよかった。

戦況は今のところこちらに有利らしいが、キヤイルがいなくなったことに気づかれ始めている、とボルフが困った顔をしていた。


「一応手は打ってあるけれど、なるべく早く戻ってきてほしい」


と言われてキヤイルが文句を言った。


「普通は昼と夜が7回変わるくらいかかるじゃないか」

「戦の途中なんだ、キヤイル。本当は一時もお前に村から離れて欲しくないんだよ」


ボルフはため息をつく。

こんな大変な子どもにさらに重荷を背負わせたくない。

命だって救いたい。

慣れないから大変だろうとボルフに心配されたが、生まれ育った孤児院は半分が海の上だった。岩場は苦手ではない。

ネリーを導くキヤイルが何度もふり返り、歩く速度を上げていく。

体力のある踊り子のネリーでなくてはついていけなかっただろう。


「セイランが来ていたらあきらめているところね」


幼いころから一緒に育った琴の名手を思い出して呟くと、キヤイルが振り返った。


「セイランって、ネリーのつがいになる者か?」

「つがいというか……大事な人の一人よ」


今頃一人で慰問をしているだろうか。

やけにメーユが遠く感じる。


「メーユでは一人にたくさんの相手を持つ者もいると聞いた。セイランはそうか」

「ちがうわ、一人の人を大事にするでしょう」

「ネリーはセイランが好きか」

「好きよ?」


キヤイルがぷいっと前を向くと、さらに速度を上げて下り始めた。


「ちょっとゆっくり歩いてちょうだい」


ついていけなくなったネリーを振り返らずに、


「もう少しだから」


と、答えたキヤイルの声が震えている。

後ろから見えるキヤイルのあごからしずくが落ちるのが見えて、


(あっ、泣かせちゃった)


とネリーは焦る。

ほたりほたりと涙が足元に落ちると、そこから光る水が湧き出てきた。

湧き出した水は二人の身体をからめとり、押し流してゆく。

はぐれるまいと細く短いキヤイルの腕がネリーを抱きしめた。

息は不思議と苦しくない。


「ミナモトにつながった」


キヤイルがつぶやいた。

どうやら、近道に成功したらしい。

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