19-4.黒幕?の正体
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-4.黒幕?の正体
師匠の一言で、俺たちは我にかえった。
「いや、毎日会ってましたね、夢の中で」
毎晩悪夢でうなされた予言の女にそっくりだと言う。
「顔は見たんですか?」
「いえ、仮面を付けておりましてね」
白い面で縦横に赤い十字が描かれていると言う。
「でもそれじゃあ女だと判らないでしょう?」
「私にはわかります。それに体付きが母と同じで」
母の体付きって、こいつマザコンか?
「実は7つの時に、母の寝室にその仮面が隠してあるのを見付けてしまったんです」
「どう言う事?」
「予言の恐怖をシオさんに植え付けるために、母上が毎夜仮装していた。と言う事なんですね?」
「恐らくは。なので母が死んで入隊してからは、予言の女が夢に出てくるのを、むしろ楽しみにしておりました」
「じゃが今回の女の本体は、そなたの母上ではないぞ」
今まで存在感が無かったマーリンが口を開く。
「マーリン、やっぱり知っているのですね?」
「今の話を聞いて確信した。ワシの知っておる女じゃ」
「それはいったい…」
「じゃが昨日シオ・ラメンを襲った女は、十中八九シオの母親であろう」
ん?話に整合性が無いぞ?マーリン認知症か?
「では何者かが蘇生させたのですか?それ程時間の経った死体を蘇生させるとは」
師匠が唸る。魔術師の常識を超えた世界だから。
「いや違う。確かにご母堂は逝去されている。じゃが、お前達も遭遇したであろう?大東の殭屍に」
確かに大東西域の三元道士を祀る村で、大東軍を丸ごと殭屍にした科学者達の手勢に遭遇した。パーサが瞬滅させたが。
「ですがあれは鈍重な操り人形の様なもので、筋肉兵の方がまだ手強いくらいのものでした」
「人間の死霊師が使う術は、所詮そんなものじゃ。じゃがその死霊師らが祈りを捧げる大悪霊の女神がおる」
そんな存在は聞いた事がない。いやもしそんな超越した悪霊神がいるなら、歴史上行われた悪事の裏で存在を知られず巧妙に糸を引いているのかも知れない。
「英雄ギルガメシュを殺した魔女メラッサ、初代妖狐九尾の狐、最強の人造人間サンディ、暴風の魔女メル=ハバ、彼女達には一時的にこの者が憑依しておった。お前達、"魔が差した"と言う言葉を聞いた事があろう?」
一同うなづく。
「超古代神は、ただ単に『魔』と呼んでおった。悪事を行わせる対象は女が多かったので、この悪霊は女神と考えられておる」
男に憑く方は早々に古代の神々が退治したが、女神の方はいつも巧妙に逃走し、憑依された者だけが残る。と言う。
「では憑依対象は生死に関係がないのですね?」
師匠が興味深げに尋ねる。
「メル=ハバ(メルファ)が聖狐天に帰依してからは力が衰え、死者にしか憑依できなくなっているようじゃ。じゃが生きている女を殺してから憑依する事は、たやすく出来る」
憑依していた部分以外に本体は別にあるが、メルファに憑依した部分が聖狐天のオーラに瞬殺されたので、その者は多くの力を失った。と言う。
「その者には名前がないのですか?」
「古来無数の名を持っているが、最古の名は、"滅びの魔女 メハシェファ"と言う」
聞いた事のない名前だが、師匠は思い当たる事がありそうだ。
「スメル人の都市国家城壁内にアギト人を導いた魔女の名前ですね。アギトの神話で読んだ気がします」
「その者はメハシェファの信者で、信仰する神の名を名乗ったのじゃ」
「と言う事は、その古代大悪霊が、大御所の配下にいると?」
「逆じゃろう。大御所ごときが御せる相手ではない」
大御所こと清腹幌鰭は、東国の武士としては人望厚く、実直な東国武士だったと言う。それが権力を得て慈班宮を建設した頃から、人が変わった様な暴君となった。
「大御所は男性ですが、メハシェファが操っていたと?」
「男神が復活したのかも知れんが、それにしては大御所が小者過ぎるな。むしろ本物の清腹幌鰭を殺して、メハシェファが化けているのやもしれん」
「シオ殿は今年で何歳になられる?」
唐突に師匠が尋ねる。
「28歳になります」
意外に若くて驚いた。元々年齢不詳の顔だちだが。
「メハシェファは28年前、なぜ呪いの予言を占い師にさせたのでしょう?」
「判らぬ。蓬莱の東国で起きた事とは無関係に思えるが…」
マーリンはしばし考え込み
「恐らくはレムリアの各地で同時に、何かの目的を持って事を起こしておるのじゃろう。禍事が起こり、多くの命が失われる事、こそが奴の歓びじゃからな」
俺たちも一応この敵を魔女メハシェファと呼ぶ事にした。
シオ・ラメンの元を辞してから、俺はスミティの意見を聞いた。
『マーリンの言うとおり、その魔女は大御所の上位存在でしょうね』
『ではカペラの部下なのか?』
『データが不足していますが、カペラの同僚、もしくはは上司かもしれません』
『ではアドミンの様な宇宙生命体?』
『否定的、恐らくレムリアの固有の思念体でしょう』
『つまりレムリア神の敵対勢力?』
『レムリア神のデータが少なすぎます。この魔女がローカルなのは、男女と言うローカルジェンダーに支配されているところです』
『宇宙生命体には性別がないの?』
『無いと言うより区別出来ないですね。人間が考える生殖行為はありませんから。下等な宇宙生物と言う範疇ならば、五種の性により生殖が行われるものもいます』
なにそれ、合コンがめんどくさそう。
『それで、なぜシオ・ラメンが狙われた?』
『今回のコンサートで、貴方がたとの縁ができたからでしょう。28年前になぜこの予言が行われたか?については、別の要因でしょうが、一旦終わったシオのラインが、俺たちとの遭遇で繋がったと言う事だろう。とスミティは言った。
『つまり、リサイクルですね』
俺は漠然と、かの大悪王タンランも、この者の手下だったのでは無いか?と思った。
タンランの征服に抵抗したナイラスを、その者は攻略しようとし、シオの父ミソに憑依して悪政の限りを尽くし、ナイラスを弱体化しようとしたが、ミソより良い傀儡を求めてシオに目を付けた。母親に憑依し、シオを女性として育てさせ、シオに憑依しようとしたのだろう。しかしカライ大佐が現れてタンメーン家が滅んでしまい、タンランもシバヤンに倒され、メル=ハバも聖狐天に浄化され、大御所を使った蓬莱征服も水泡に帰した。
つまり弱体化した今のメハシェファには、宇宙生命体の力を借りるしか方法が無いのだろう。
かなり追いつめられているな。
カペラはともかく、こちらは今、大御所と共に葬り去る事が出来るのでは無いか?
『無理』
『ですよねぇ〜』




