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ボンダイビーチ(3)

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


2-24.ボンダイビーチ(3)


「村の公式行事にするなら、安全対策は万全にしないといけませんね。マットが駄目だとすると、どうやって?」

パー子が秘書っぽい感じで提案する。やっぱり実務面ではパーサより有能そう。ザ・ナンバーズ!と言う感じだ。

「怪我しない様に鎧兜でやった人もいるんですが」

村長が言う。

「重すぎてかえって怪我が大きかった」


「それならええ考えがあるで。他所の古都に住んではる友達の話やけど」

イナリさんだな。

「その町の一番ええ学校に『強盗英雄』言うケッタイな名前の戦闘ギルドがあってな。他所の学校と戦さやのうて、球を取り合う陣取り合戦をしとるそうな。そんで将来は大臣とかになるええしの坊んやさかい、怪我したらいかんて、身軽な鎧兜を考案しはったそうや。旦那はん、判るやろ?」


「ああ判るよ」

アメフトだろ。俺はヘッドギア、肩と背中のパッド、肘当て膝当ての絵を描いた。

「おお!この兜ならココナッツの殻で作れそうだ。パッドは、使わなかったマットで作れるなあ。これも売れば…」

「おいおい金取るのかい?」

若者達が怒る。

「試してみたい観光客にレンタルするんだよ。お前さん達には支給する。防具のテストもして貰わんとな」


「彼らからお金貰うなら、こう言うのもありますよ。観光客からも。傷害保険と言ってね」

村長大歓喜。今日はワシの奢りだと言うので、集まった連中は大盛り上がりで、俺はコンコンを頭に乗せられて、肩車された。ペンジクでは喋る獣は珍しいけど、居ない事は無いらしい。コンコンもいい知恵出したので人気者だった。

「これで町がますます栄えます。本当にありがとうございます」

ようやく肩車から降ろして貰った俺に村長が礼を言う。

「ただ、いくら防具の素材に使えると言っても、かなりマットが余ります。高かったんですよ」

「じゃあこう言うのは?」

「ほう…。詳しく」


後はシバヤンに状況説明と問題解決を報告すると、数日後ご一同様大挙してやって来た。

「ななな南都!シバヤン様、パトゥニー様、サンディ様、漆黒の美少女神 キャーリー様まで!ぱーにゃん様方は本当にシバヤン様の侍女人形だったのですね」

「し、失礼な!どれだけ私をポンコツだと思ってたんですか?2号じゃあるまいし」

「あんたも村長に輪をかけて失礼だがね。てゃーぎゃーにしなかんて」

したたかな村長だからこれだけの口が利けるが、他の者はただ平伏しているだけである。


「一同の者、苦しゅうない、面を挙げよ」

こう言う威厳のある役をやらせるとサンディはピカイチだ。しかも今日は腕10本モード。怖い。とてもシバヤンとバカップルを演じてる人(神)と同じとは思えない。

勇気を出して顔を挙げた男たちは、目の前にある美と恐怖のハイブリッドに、慌てて顔を下げる。

「あらあらまあまあ。そんなに威圧しちゃあ、民が萎縮してしまいますよ」

慈愛に満ちた笑顔。ザ・聖母といったオーラに男達は虜になる。だが男達よ警告する。目が笑ってない。繰り返す、目が笑ってない!


シバヤンは素顔だとちょっと威厳がアレなので、礼装用の鎧兜を付けているが、軽く手を振っただけでこの村など消失しそうだ。触らぬ神に祟り無しとはこの事。

そしてひっそりと佇む美少女。えーとヤマンバさんでいいんですよね。(パトゥニー)の美肌技術で磨き抜かれた、黒檀のような美しい肌。人生の暗黒の中、土壇場で頼るならこの女神。と言うのもわかるな。マイトレーヤ(弥勒)ぽいポジションだ。正直フィギュア欲しい!


「ぱーにゃん一号二号、ご苦労だった。そしてまたしても貴殿には礼を言うぞ」

「いささか想定外の結末だったが、民が栄えるなら言祝ごう。これからより一層の人々を集めて栄える事を希望する」

村長は、これだけの神々が顕現した事の聖地効果を計算して目眩がしていた。急ぎ神殿を造営せねば。村長はオラオラ以外にも大規模な賭場(カジノ)の造営も検討中だった。となると最後の救済者キャーリー様に、ぜひ村の守護神について貰いたい。

恐れ多くもと願い出ると、パトゥニーがおおはしゃぎした。

「キャーリー、良かったわね!」

娘のグレた原因を知っている母は心から喜び、目が笑っている!!


「私の…信者…」

キャーリーは感無量の様子。

親友の幸せをうーにゃんも心から祝福している。思えば大変な苦労(首取れたし)をして守った親友だ。

自動式侍女人形(オートマタ)に、嬉し涙を流す機能を付けたシバヤンは、本当に偉いやつだと思う。


「では、競技を見せてくれ」

シバヤン達が、突貫工事で作られた観客席に着席する。壊さない様に、ちゃんと人間スケールだ。海洋堂制作で食玩に付けてくれたら大人買いしそう!

ドラが鳴らされ、まずオーソドックスな、海に弾かれ、飛ばされる飛形を競う競技。かなりの選手が回転して着地出来る様になっている。

「着地は?見事なテレマーク姿勢!飛形点9.5が出ました!飛距離と併せて暫定トップです!」

アナウンスが煽る。


次は三方にロープを張り、6人ずつがチームとなって、楕円形のボールを取り合う競技。コンコンの話からヒントを得たらしいが、アメフトと言うよりオージーフットボールにメキシコのルチャ・リブレが混ざった感じ、オラオラとロープの反動で空中戦や体当たりもあり、見ごたえがある。競技名は"ダキャティ・スィターラ(Gang Stars)"と言うらしい。


そして洗濯板程の板を持って、見覚えのある不良が登場。まだこの競技はこの選手しか出来ないらしい。ぶかぶかの俺式海パンを履き、檳榔の実をクチャクチャやって運動選手らしくはないが、実に妙技を披露した。オラオラの波に乗って見せたのだ!

感心したシバヤンが自分もやって見ようとして皆に止められていた。貴重な群生クラゲの生態系が全滅するところだった。

シバヤンは選手の波乗り板を借りると、ささっと指を走らせた。四角い板が見事な流線型に変わる。

試してみた選手が感激して

「全然操縦しやすいっす。神さまに直して貰って感激っす。俺、田舎の両親に手紙書くっす」

存外純朴な子だった。


試合終了後ちょっとしたアトラクションがあった。浜辺に20m四方くらいのマットが敷かれ、水着の女の子達が

「きゃーーーっ!」

と叫びながらオラオラの海に体当たりしてマットに転がる。

「おーっと、サライ・チャーン(月)ちゃんの水着からポロリ!」

いやあんな下品なアナウンスは教えてないぞ。

後でパー子から性の商品化についてお説教を受けたが、あんなの聞いてない。俺は女子競技もあっていい。とアドバイスしただけ。と逃げ切った。


シバヤンは帰って行く時、一緒に来るか?と聞いたが、俺はもう少し南レムリアを歩いてみたい。と頼んだ。

「そうか、旅行家としては当然だな。しかし貴殿には時々顔を見せて欲しいのだ。キャーリーも喜ぶのでな。色々制約もある様なので、パリトネカビル(通行手形)は渡せないが、我が宮殿に参るために、八娘2号を同行させよう。八娘がいつまでも二人いるのも紛らわしいのでな」


正式にパーサを譲渡された!

ナンバーズは人間どころか、神同士でも門外不出らしいのだが。

「2号、メグル殿を頼むぞ」

「メグル様を主上としてお仕えしますで」

ゆっくり仲間とコミュニケーションをとって行こう。うーにゃんよりも悪い意味で委員長らしい(というより風紀委員長)1号よりは融通が利きそうだ。

だが『楽したいからさあ、神界を通って行こうよ。手形出してよ。パーえもんっ!」と言う願いだけは一度も聞いてくれなかった。


後日談:

ボンダイ村はあっという間にオラオラ試合場と、聖地礼拝堂と、守護神キャーリー様の神殿、そしてカジノで大成功した。

キャーリー様を祀った神殿には多くのちょっと暗い表情の人たちが参拝し、カジノですっぽんぽんに毟られた信者が、帰りの乗り合い馬車代を神官から借りたりしていた。


そしてキャーリー神殿の隣には小さな祠があり、

「商売の神」

として出自不明の頭が狐の神が祀られ、これがのちにレムリア全土で広く信仰される事になるのだが、まさか俺とコンコンの事じゃないよね。

読んでいただきありがとうございます。

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