11-7.母
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
11-7.母
「パーサ、バウトランスって狼にも使える?」
「方言あるでな。わっからせんかも知らんけど、まあちっとは分かるだろうがね」
いやパーサが言うなと思ったが、必要ない様だった。
神獣の里にはポツンポツンと小さめの家とか、止まり木とか、キャットタワーが建てられており、門番の明らかに玄武の眷族と思われる老亀に教えて貰った、こざっぱりした気持ちのいい家を訪れた。
「はい、どちら様でしょうか?」
ほっそりした、綺麗な中年の女性が顔を出した。
「かーさん!」
ウプウアウトが前に出る。
「お前…ウプウアウトかい?」
女性は息子を抱き締める。
「良かった…」
オコがもらい泣きしている。
「会えて良かった!」
ウプウアウトは泣きながら言った。
「私の様な普通の獣がこの様な安住の家まで与えられて、アn…神様には感謝の言葉もございません」
「サラ、もういいのだ。ウプウアウトには父の名乗りをした。本当に苦労をかけてしまったね」
アヌビスが言うと
「かーさんがいつも寝る時にお話ししてくれた、異国から来た強い大きな父さんって、アヌビス様の事だったんだね」
「黙っていてごめんね。神様の子と知れたら、人間にも狼にもいじめられるのじゃないかと思ってね」
ウプウアウトは、自分が今では狼神としてナイラス神界に受け入れられている事を語った。
「それで、仲間の狼たちは死んでしまったのかい?あの恐ろしい病で」
「ザダムのじいさんは助からなかった。だけど他の仲間は、オレが連れて谷を逃れたよ」
「そうかザダムさん、助からなかったのね。でも裂け谷を出ても、行くところあったの?周りは敵ばかりだと」
「ナイラスが鎖国というのをやめたので、街道の通行が盛んになって、天敵のジャッカルが一掃されたんだ。それで平穏に平原を通過し、母さんの言ってた先祖の森に戻る事が出来た」
「まあ先祖の森に?」
「鹿とか、結構獲物が多いんだよ。オレは仲間に人間と家畜を襲わない事、不要に森から出ない事を教えた。最初は森に入って来た人間と小さなイザコザはあったけど。人間は『あの森には大きな狼神が住んでいるから、狩りはしちゃいけない』と言う様になった。今では上手くやってるよ」
「それは良かった。で、みんな元気なの?病気の者はいない?」
「年長の者の何人かは体調が良くない。他は元気で、森に来てから、子供が何匹か生まれたよ」
「割り込んで済みません。アヌビスの知人のウラナと言います」
「まあ!聖狐天様のお父様ですね?」
サラは跪いて、懐から小さな聖狐天像を取り出した。ここへ来てから入信したのだろう。
「とても気になったので、話を止めて済みません。その体調の悪いお年寄りは、お母様やザダムさんが命を落とした病なのですか?」
「多分同じだと思う。看病してる者の誰にもうつったりはしていないです」
ウプウアウトが答える。
「それなら、それは何か裂谷の風土病の様なものだろうか?」
「裂谷には50年以上住んでいましたが、一頭もそんな病気になった者はいませんでした」
サラが答える。
「気になるの?」
オコが尋ねる。
「うん、それが伝染病でないとしても、その元凶を持ち出してナイラスや別の国に持ち込む者がいないとは限らない。それにお年寄り狼たちの治療もしてあげたいしね」
「主よ、ありがとうございます!オレウプウアウトはウラナ様に終生の忠誠を誓います」
ウプウアウトが跪く。
「止めてよ。神様を臣下にしたりは畏れ多いよ」
「いいじゃないですか。我が子ながら、ウプウアウトは私なんかよりよっぽどしっかりしています」
とアヌビスが言うと、俺たち全員が頷く。
「それにウラナ殿は既に獣神を従えているじゃないですか」
ステルは臣下じゃなくて娘みたいなもんだし。
「あるじはステルのあるじだよ」
結局俺はウプウアウトの臣従を保留にして貰った。まだ問題は解決していない。
「まずは伎芸天事務所とシャミラムに話を付けて」
「何をするの?」
「現在考えうる最高の医師を手配して狼の森に行くのさ」




