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旅立ち(2)

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


1-33.旅立ち(2)


さて、先ほどの魔法士の言っていた商会はすぐ見つかった。荷馬車の旅支度をしている商会はそこしかなかったからだ。

木の葉隠れしながら、荷馬車に便乗出来れば最高だ。

まだ2時間経っていなかったので町を歩いていたら、ヨウコが行きたい所がある。と言い出した。

木の葉隠れで近づいて行くと、そこは孤児院だった。


柵の中の様子を見ると、子供達が何か作業をしている。

見ると皆腕に黒い腕章を巻いている。

「ここはね。私がよく来ていたところなの」

俺は知っていたが、黙って頷いた。


「先生、ヨウコ様は本当に死んじゃったの?」

「死んでないよね?」

「いやら、ようこちゃまにあいらい」

子供たちは泣きべそをかいている。

舎監の先生もどうしていいかわからず、幼子をただ抱きしめている。


俺もこの施設の事は気にしていて、経営責任者である神官長のギンランには何度も問い合わせたので、財政は安定していると思う。だからヨウコはお菓子を持って遊びに行っていたのだった。


俺たちは院の事務棟に行った。入口に

「寄宿棟改築費用募金」と書いた箱が置いてあったので、俺は一番大きな金貨を1枚放り込んだ。ヨウコは口だけで

「ありがとう」と言った。


事務室の戸をそっと開けて中に入ると、歳とった僧が書類を整理していた。

院長だ。俺も何度か会った事がある。宮殿内の昇進を諦めて、孤児院の経営に一生を捧げた立派な人物である。


院長は隣の部屋に何かを取りに行ったので、ヨウコはその隙に

「要・処理」と書かれた書類箱の一番下に、手紙の束を隠した。

後から聞いたら、一番上は院長宛、その下には現在院にいる9人の子供宛の手紙。


院長宛の手紙には、この手紙を読む時には自分はもう死んでいるかも知れないが、子供たちに手紙を渡して欲しい事と、12歳になったら渡して欲しいと9枚の銀貨が入れてあった。孤児院は12歳までしか居られないからだ。

この逃亡作戦が計画された時から、ヨウコは手紙を準備し始めていたのだ。給金を貯めていた中から、9枚の銀貨も用意した。


外に出ると、9人の子供達が小さな土の塚を作り、野の花を捧げていた。

ヨウコのお墓のつもりなのである。

ヨウコは口をきっと結び、俺の手をぐいぐい引っ張って孤児院の門を出た。


振り返るとみんな一心に祈りを捧げていた。

ヨウコは大声で、

「みんな。元気でねー!」

と叫んだ。そして俺の手を引っ張って走り出した。引っ張られる俺の顔にヨウコの雨が降った。


この孤児院の事もベンガニーは取材して小品を残している。

孤児院の奇跡の話は神官長にも届き、寄宿棟の改築は速やかに実現したが、改築費用の一割にもなる多額の寄付を誰がしたかは不明だった。

創立時には別の名前があった筈だが、人々はこの孤児院を

「聖狐天孤児院」

としか呼ばなくなった。


子供たちは手紙を何度も読み返して育ち、それぞれが12歳になる時に院長から渡された銀貨は、使わずに大事にお守りにしていた。

彼らはそれぞれ町で立派に育ち、ヨウコ様の恩を人々に返し、尊敬される大人になった。そして、毎年この日には孤児院に集まった。


10年程後に近隣で大きな戦があり、家と親を失った孤児をジョウザと孤児院は、延べ1000人以上養った。今でも近隣諸国ではジョウザの悪口を言うと、青筋立てて怒る人が多い。


今も聖狐天孤児院はジョウザの門前町にあり、孤児達を養っている。

ジョウザを観光するなら聖狐天孤児院の記念館を見学するといい。

9枚の銀貨と、10通の手紙を見る事が出来る。


これも好きな話

私の事を

「顛末作家」と呼んでいただいて構いませんw


読んでいただきありがとうございます。

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