9-1.顛末記
さていよいよ第9部の始まりです。
今回は登場人物少なめですが、神話大好きな方にはご満足頂けると思います。
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※第9部の主な登場人物
◯旅の仲間
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの恋人。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの恋人。
◯その他の登場人物(神)
パナ…元八娘のパー子。人間となってアルディンの妻となる。
アルディン…バクロンのイザン朝第五王子。王位を捨ててパナと結ばれる。
◯箱庭世界
ハピネス…箱庭世界魔物国の女王。
ゾフィア…第一王女。
レティア…第二王女。
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
9-1.顛末記
ちょっと前回あっさりし過ぎだったので、箱庭世界の話を補足したい。
俺達はただのフィギュアでなく、何故かこの世界でも生きたハーピーの姿を保っているレティアに(シバヤンは『条件付けか…興味深い』とかブツブツ言っていた)今回の話をした。
レティアは興味津々で、
「アルディンさんとパナさんはこれからも一生愛し合うのですね。私もお姉様とそんな風になりたい」
とうっとりしている。
箱庭世界でも恋人や夫婦は雌雄だが、ハーピーだけは繁殖期にしか雄を迎えないので、恋愛感情は同性同士で育む。いわゆる百合関係なのだが、レティアの場合は姉(女王ハピネスの娘なので、シバヤンが置いたフィギュア由来のレティアとは血が繋がっていない)ゾフィアと約束した
「比翼連理」
の間柄である。
母は我が子とも思っている"神の子"王女レティアが神隠しにあったので、沈痛の余り床につき、生霊的な呪いを発してしまったが、姉のゾフィアは、根強い陰謀の噂のあった人間国に潜入調査をしようとする程、妹を探し求めていた。影夫の扮装はその時の工夫である。
結局ノモ始め臣下のものに止められ、魔物国を出る事は叶わなかったが、国内をくまなく歩いて情報収集をした様だ。
結果これはどうも人間国の陰謀と考えるには無理があり過ぎる。と考え始めた頃に俺達が現れ、この人達が妹救出のキーパーソン(各地に伝わる伝説に俺たちの様な神の使いの話が多かったそうだ)であるかの確認の為、武闘会や魔法展覧会で実力を見る事になった。
ノモは止めたのだが、ゾフィアは影夫と名乗って自ら出場したのだった。
ゾフィアの願いに応えて無事レティアを依代の呪縛から解放し、元の姿に戻す事が出来た。
レティアはハーピーの常に違わず、全身羽毛に包まれ、顔と胸だけが人間の美女と言う姿だった。オコが影夫から奪った(剥ぎ取りマッチだからね)フード付きガウンを羽織らせた。
「何故こんなものを?私達ハーピーは服を着ませんのに」
と不思議がるレティアに、人間の雄は乳房を見ただけで欲情する事があると余計な知識を与え、そのマントが姉ゾフィアが着ていたものだとオコが伝えると、匂いを嗅いで
「ああ…お姉様の香り」
とうっとりしている。
まあ恋人同士みたいなものなので仕方ないが、ちょっと変態っぽい。
一回箱庭に行った者は先入観が条件付けられるので、本物のジオラマに着陸したりはしない。とシバヤンに太鼓判を押され、俺達は
「いちにのさん!」
で飛び込んだ。ちゃんと城門の前に着地し、ゾフィア王女の大歓迎を受けた。
「お姉様!」
泣きながら抱きつくレティアをひしと抱きしめ、王女は平伏して礼を述べた。
翌日
「母が、お礼を申したいと」
ゾフィアが言うので、病室に初めて入った。
女王ハピネスはレティアを奪われて、名前に反して不幸のどん底に落ちてしまい、羽毛が抜け落ち床に伏せっていたのだ。
全身鳥肌と言うのはちょっと見たくなかったが、包帯で包まれた姿で床についていた。
しかしその目は喜びに輝いていた。
「妹が戻ったと聞いた途端に元気を取り戻し、薄っすらと産毛も生えてきた様です」
女王は体を起こし、
「この度はなんとお礼を言って良いか」
随分顔色も良くなった風に見える女王は、深くお辞儀をして礼を言った。これで蝋燭も伸びるかな?
「今後は皆様を『魔物の友』ウラナ様を『魔族王』とお呼びしたいと思います。いつでもお気軽にご訪問下さい。大歓迎致します」
いつかはこの世界の人間国にも行ってみたいものだ。シバヤン厳選古今の英雄達が活躍する国のはずだから。
幼い頃聞かされた幻の英雄。あのサンダル大王にも会えるのだろうか?
お体に障ると行けないので、今回は早々に箱庭世界を後にし、俺達はレムリアに戻った。
戻ると早々にパナに掛けられた呪いが消え去った事をパーサが教えてくれた。
「また世話をかけてしまったな。何か願いが有れば言って欲しい」
とシバヤンに言われ、俺は今抱えている問題(ゴンドワナとの絆)が解決したら、箱庭世界の人間国に行ってみたいと言った。古代最高の英雄、サンダル大王はいるのか?
「その者はまだあの世界にはいない。大王に関しては余りにも謎が多いのだ。調査が完了して、それに基づいた伝説体系が周知されれば、かの大王のフィギュアも置く事になろう」
シバヤンは趣味には結構完璧主義者だった。
「なるほど調査中なんですね」
「いや」
「じゃあ誰が?」
「言い出しっぺ。と言う言葉を知ってるかい」
やられた。シバヤンコレクションに協力する羽目に。でも面白そうだからいいや。
「でも伝説なんて定着するのに何百年もかかるでしょう?」
オコが尋ねる。
「従来はな。今は伝説をあっと言う間に大衆に伝える、便利な存在がいるじゃないか」
俺に材料を集めさせて、ベンガニーに新作を書かせる気か。マーリンとは別の意味で、シバヤンの恐ろしさが伝わってくる。
少女パナとアルディンは、俺が(妖狐の里の天才少年レナルド・ダンチビの開発した)新サスペンションに付け替えた馬車で旅立って行った。
アルディン、お前それ犯罪じゃ?と思ったが、どうも二人はもう一度、思春期恋愛から始める様だ。
この二人は12歳の頃一度ペンジクで出会っただけで再会するまではずっと離れていたので、もう一度ゆっくりと愛を育むつもりだと言う。
手を握っただけで真っ赤になる二人を見て、俺はちょっとアルディンに嫉妬した。
オコとはずっと一緒で、そんな甘酸っぱい恋愛を経験する間もなく、仲間と共に旅を続けている。もちろんそれは大切な思い出だし、妻としてのオコを愛しているが、おじさんには、中学の頃の儚い恋心が懐かしく思い出されるのだ。
アルディンは旧パナと内縁関係と言うか、完全に大人の関係だったにも関わらず、もう一度失われた思春期から新パナとやり直すのか。
ずるいなあ…。




