8-32.冥界への旅路2
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
8-32.冥界への旅路2
二機の超音速機で一気に神界に入り、記録の神殿に降り立った。
「ようこそおいで下さいました。ビッグセブン様」
ちょっと待って!
なんでそんな名前が通り名みたいになってるの?
「これですよ」
マッチョ神官が新聞を見せる。
「神界タイムス?こんなのあったっけ?」
「最近発刊されたんですよ。見てください、一面を」
『ビッグセブンまたやった!』
『ビッグフライ、ウラナサン!」
内容はゴンドワナとの多重世界解消の件だった。
ヴァルガさんや賢者さんの話を聞いてただけなんだけどな。なんか悪い事出来なくなっちゃったじゃないか。
新聞のせいか記録は簡単に済み、俺たちは部屋に通された。
「あーやっぱり寛ぐわぁ」
隣から師匠夫妻も現れた。
「本当にゆっくり出来ていいねえ、ここ」
「まあせっかくだからゆっくり羽根を伸ばしましょうよ」
まあたまにはいいか。曲がりなりにも休まず毎日連載しているからな(メタ表現)。
「あれ?私たち、何をしに来たんでしたっけ」
あれ?じゃないよ、いかんいかん。
「みんな3日だけだからな!パナを助けなきゃ!」
「あそうだった。いけないいけない。明日から3日ね」
「今日からだよ」
じゃあ今日を楽しまなきゃと、皆いそいそと入浴の支度を始めた。
「本当に呆れた人達ですね。使命の重要さが判っていないのです」
ロクが吐き出す様に言う。
「ロクは楽しくないの?パーサは楽しそうだったよ」
「あの子はパーサなので。ナンバーズは与えられた使命を果たす事が楽しみなのです」
堅いなあ。まるで3日後のフランスパンだよ。
「俺たちは使命なんて与えられてないんだよ」
「どう言う事ですか?」
「俺たちに主人はいない。やりたいからやるだけ、面白そうだからやるだけ、頼まれちゃったから仕方なくやるだけ。今回はパナのためだから、ちょっと本気だけどね。でもきっと上手く行くよ」
「私には理解出来ないユニークな考えです。メグル様は神界で評価されて、どんどんのし上がりたい。とか思わないんですか?」
「ないなあ。神々扱いも迷惑だ。俺の望みは二つ。オコや生まれてくるだろう子供達や仲間達が幸せになる事と、立派な旅行記を後世に残す事だけさ」
「でも神々になれる人は殆どいないのに」
「うん、と言ったらすぐ文殊菩薩にはなれるけど、色々面倒なんだよな。第一生まれた時にすでに神みたいなものだったし、今更だなあ」
「なるほど流石前身がジョウザのボン様。私はナンバーズの中で、競争に勝ちたいんです」
色々あるんだなあ、シバヤンとこも。
「でも君は名シェフとして、大切にされてるじゃないか」
「それはお父様が、私だけに人間の消化器官を与えたからに過ぎません。一娘お姉様が同じ立場だったら、もっと上手くやっているはずです」
自己評価の低い子だなあ。
「大海の蛙と言う言葉もあるよ。今回初めて宮殿から出て、何か得る物があるといいね」
「はい、ありがとうございます。まずはあの素敵な神官様に教えを受けたいものです」
タイプなんだ、神官。
やがて晩餐の知らせが来た。
初日はいつもこう言うバンケット会場みたいなもので歓迎会が行われる。
いつも思うが、品数とか見た目の華やかさなら、もっと凄い宮廷料理を食べた事がある。
しかし一つ一つの料理に張り巡らされた細やかな配慮が、食するものを心から喜ばせるのだ。
しかも毎日メニューが変わる。どこ風と言う範疇に収まらない、自由な、そして懐かしいレシピだ。
「不思議よねえ。いつ食べても全然口に合わないものがないの」
「そうそう。ちょっと目新しいかな?と思って食べても、あっと言う間に大好きになるの」
「おいしおいし。人型になって、好きなものがふえたの」
「なんと…。確かにこの料理のレベルは至高のものですが、その上嫌いなものが出ないと。例えば今私が手に取っている極上のエンジンオイル、皆さんは嫌いどころか、飲めませんよね」
「なに言ってるんだ。ロクちゃんが今飲もうとしているのはグレープフルーツジュースだろ?」
そうか!多重世界。俺にはそれがビールに見えるんだ。一人一人にあった料理を用意して、それをそれぞれの席に設けた小世界で提供してるんだ。
「本当に感嘆しました。私にはここで学ばなければならない事が沢山あります。長い滞在になりそう」
おいおい。
しかしロクが新しい意欲を持った事は良かった。
結局ロクの粘りで、我々は一週間滞在した。
俺たちは勿論気をもんだが、反対も出来ない。出発したくないのはこっちも同じだから。
ロクは神官を師匠と呼び、今回の任務終了後5年間の赴任の許可を得た。シバヤンは毎日弁当を宮殿に届ける事を条件に許可した。
後ろ髪引かれる思いで記録の神殿をたち、大氷原の村を少しだけ訪問する。ワイン倉庫建設の進捗を社長が気にしたからだ。
イグルーは元気そうだった。そして大切な情報があった。
「仔犬達は元気でもうどこへでも歩ける様になりました。でも時々4匹で姿が見えないと思ったら、海岸でじっと海を見てるんです」
絆が出来つつあるのかな?
ヤクスチランには寄らなかったが、パトニカトルには表敬訪問した。
「懐かしいなあ。妖狐さんのとこに行くんかい。じゃこないだ出来た新酒、持ってっておくれ」




