8-24.解呪
※第8部の主な登場人物
◯旅の仲間
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの恋人。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの恋人。
◯その他の登場人物(神)
イグルー…大氷原の村の娘。村長の孫。メープル朝の末裔。
パナ…元八娘のパー子。人間となってアルディンの妻となる。
アルディン…バクロンのイザン朝第五王子。王位を捨ててパナと結ばれる。
◯ペンジク4神
シバヤン…南レムリア最高神の一人。破壊と創造の大神。
パトゥニー…シバヤンの第一夫人。慈悲と再生の母。
サンディ…シバヤンの作った美少女人造最終兵器でシバヤンの第二夫人。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘でサンディの妹。人生崖っ淵の最後の希望。漆黒の美少女神。
◯ナンバーズ
一娘…最初に生まれた自動式侍女人形にしてシバヤン家の宮宰。シバヤンも頭が上がらず、ナンバーズ全員に恐れられているスーパー秘書。
五娘…ナンバーズにしてキャーリーの親友。レムリア最速。
二娘…ナンバーズだが、現在は聖狐天の部下になっている。武芸の達人でメル、オコ、御供の師。
◯箱庭世界
ハヤテ…警備隊長。
ノモ…村長のコボルト。
影夫…力試しトーナメントに出て来た謎の存在。
ハピネス…箱庭世界魔物国の女王。
ゾフィア…第一王女。
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
8-24.解呪
王女は一つの箱を取り出した。
「これには王家の呪いが掛かっている。この箱が開けられるかな?」
王家の呪いって、ツタンカーメンかよ。
俺はナイラス、アプベルの神殿を思い出した。
師匠はまずは机に置かれた箱をしげしげと見た。前後左右移動してつぶさに拝見だ。
懐から鑑定団の様な虫眼鏡まで取り出して。
「ふむ触ると発動する呪いはなさそうだな」
師匠は箱を持ち上げると、底を調べた後、ぽいっと俺に投げ渡した。
「おっと!衝撃で発動する地雷型かもしれないじゃないですか。危ないなあ」
「そんなものあのお姫様が持ち歩いてる訳ないじゃない。ウラナ君。これなんの呪いだと思う?」
「まあ普通箱に入れたものを盗まれないための呪いでしょう」
「でもさ、こんな小さな箱、持ってかれちゃうだろ?」
「だから開けようとすると、泥棒を殺すとか」
「それだと、誰かにやらせてから盗めるだろうに」
そうか。こう言う鍵付き金庫は、あるだけで盗まれやすい。だからこの呪いは持って行かれないためのものだろうな。
「すごく重くなるとか?」
「それだと持って逃げてからアジトで重くなるね。結果的に盗まれる」
そうだなあ。じゃあ
「本人特定型かなあ。登録した本人以外が持ち去ろうとすると」
「何かが起こる。この場合、登録者は王女様か」
「王女様、呪いを発動されてしまったら負けですか?」
「いや、結果的に解呪できればいいぞ」
師匠が箱を開けようとすると、なんと箱が消えてしまった。
「なるほどね。王女様、もう一度箱をお渡し願います」
開けると持ち主の元に移動する呪いか。便利なものだな。解呪だけでなく、仕組みを覚えたい。
「ウラナ君、どう思う?」
「そうですね。マーリンのアトランティス呪術に似ています」
酷く用心深いマーリンは、大事なもの全てにこの種の呪いをかけている。そしてマーリンの性格から、呪いを受けると大変恐ろしい災いが降りかかるのだ。
マーリンは盗まれてもすぐ取り返せるのだが、これが性格と言うものだ。
事情を知らない泥棒が、マーリンの隠棲所に盗みに入って悲惨な目にあったのが、アトランティス島嶼群の大魔王伝説の元になった。
ハーピーは西の方の妖怪だったからアトランティスにはまあ近いのだが、西方の古代文字で記述されたものに似たものがあった。
「そうだね。あとペンジクのヨージャにも似ている」
ジバヤン教徒の修行僧が使う呪法だ。
確かにペンジクの神話にも腕が翼の鳥人がいた気がする。
「解けますかね」
「魔方陣がいるな。王女様、二人でやってもいいですか?」
「構わんぞ」
俺が魔方陣を書く。基本的には、これはナイラスの作法だ。
「師匠、祝詞の作成はどれ位かかります?」
呪法は憎み・恨むものだから、解くには祝って褒め殺すのだ。
「ちょっと手こずるなあ。時間貰って。3分」
「3分だそうです」
「そんなに簡単に解けるのか?」
「まあ師匠ですから。俺の魔方陣もあと2分で書きあがります」
この場合の魔方陣は、解呪途中で他の魔法に影響されないための結界の様なものである。
ナイラスの呪法が、あの鎖国結界を生み出したのだ。
3分きっかりで
「まあこれでいいだろう。じゃあ解呪しようか」
魔方陣の中央に箱を置き、聞いた事のない言葉で師匠が祝詞を唱える。
「呪いよ、ご苦労」
さっと箱の色が変わり、師匠は先程の様に箱を開けたが、箱は消えなかった。
中には小さな金の鍵が入っていた。
「素晴らしい。宮廷の祈祷師でもここまで鮮やかに解呪できぬぞ。合格じゃ」
別に試験を受けた覚えはないが、ゾフィア王女がご満悦なので良しとしよう。
「この鍵は?」
「そなたらのものじゃ。いつか役に立つと思うぞ」
なんかフラグがたった。
「この解呪なら人払いは不要だったのでは?」
「実はここからが、余人には聞かせられない話でな。ノモ、ご苦労だった。下がってくれていいぞ」
「はっ。このものが危害を加える素振りあれば、および下さい」
ノモは王女に呼び鈴を渡した。
この音は人払いの結界を突き抜けるのだ。
「その心配には及ばぬ。この方々は、大神の使いと心得よ」
なんか言い方が改まった。
ノモが去り、コンコンが人払いの結界を張る。
ゾフィア王女が居住まいを正した。
「臣下の手前、尊大な態度をとり誠に申し訳ございませんでした。皆様は大神様のお使いだと、今こそ確信しております」
この世界はシバヤンが作ったのだから、ここではシバヤンがレムリア様にあたる存在という事になる。
これはレムリア様の真相に迫ろうとする、シバヤンの実験なのだ。
「そのご認識でよろしいですよ」
いきなりゾフィア王女が平伏した。
土下座というより、五体投地に近い。
そして権力者然とした凛々しさの微塵もない泣き声で、こう言ったのだ。
「お願いでございます。我が妹レティアを我らの元にお返し下さい」




