54-16.事情聴取
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
54-16.事情聴取
俺たちが陣に入って行くと、兵たちがわらわらと武器を持って集まってきたが、全員パーサが電撃で黙らせた。
「殺したのですか?」
「ここは翼院大尉の陣です」
愁艶姉妹が心配そうに訊く。
「失神させたっただけだで、でゃー丈夫だでよ」
パーサがニカっと笑う。
「この者たちは今から施術が必要ですので、大人しくして貰ったのです」
オコが言う。
「大聖母様が?」
「確かに兵らは満身創痍」
「そっちも大事ですが、命に関わる者以外は後回しです」
「ではどんな」
「施術を?」
「ちょっと人代秘なので。とにかくこの者たちの正気を取り戻すためです」
俺は後方に居た、一番立派な鎧をつけた軍人を指差す。
「これが翼院大尉ですか?」
「確かに装束は尉官のものですが」
「顔が違う」
俺たちが覗き込むとステルが
「ぶたさん、みーつけたっ!」
と叫ぶ。
確かに兜のないその顔は八戒の様な豚の首だ。
「なるほどこれは、分かり易くてええねえ」
コンコンが独り頷いている。
「どゆこと?」
とステルが尋ねると、コンコンは
「そろそろ、頭使かい?これはさいぜんから愁艶はんらが言うてはった翼院はんやで」
「しかし顔が…あ!」
「そう言う事ですか!」
「そういうこっちゃ」
「だからどういうこっちゃなの?ステルがわかるようにおせーて」
「ステルちゃん。この人たちを朱雀国軍から青龍近衛軍に変貌させたのは、自称天蓬元帥の豚伯爵だろ?」
師匠が助け舟を出す。
「うん」
「豚伯爵だから」
「わかった!おかおがぶたになっちゃう」
「正解」
「でも幼稚な精神操作魔法ですね。普通人に乗り移ったら、なるべくバレない様にしませんか?」
メルファが首を捻る。
「それはレムリアの黒魔法さ。魔界ではきっと認識が違うのだろう」
「ニンシキ?」
「言うことを聞かないと、お前を豚奴隷にしちゃうぞ!という脅迫に使うのだろう」
ステルだけでなく、全員ポンと平手の上で拳を打つ。
あれはいつ頃からあるボディランゲージなのだろう?
「ではメグルの…その…精神治療で?」
オコが言いにくそうに言う。
愁艶姉妹が
「ほう、人代様は」
「その様な魔法を」
とか言い出した。
違うんだよオコ。
ここはスミティの出番じゃない。
「いや、ここはメルファにやってもらう」
「わたくしが?」
「ああ、これは魔界の魔法だ。だから」
「ああ、そう言うことね。メルファ、準備を」
「かしこまりました、大聖母様!」
倒れている兵士たちの中央に立ち、メルファはグラムを抜き放つ。
「南無八幡大聖母尊!」
八幡はビッグセブン+自分のつもりらしい。
メルファが気合を入れるとグラムから雷光が迸り、兵士たちを淡い紫色の光が包む。
「グゴゲッゲガガッ!」
兵士たちが呻いて電気ショックを与えられた様に数十センチ体が浮いた。
「ぶたさんがハンサムに!」
ステルが目玉をまんまるにして叫ぶ。
ハンサムは翼院大尉だった。
「よくやったわメルファ。次はアタシの番よ」
オコが祈りを捧げると、兵士たちは淡いピンクの光に包まれる。
治癒系神聖魔法だ。
手足が切断された兵士の体からは、早くも小さな手足が生えてきている。
「これが再生魔法…」
「凄まじいものですね」
愁艶姉妹がドン引きしている。
俺は翼院大尉に近づき、額に手を当てる。
「人代様は何を?あっ!」
「申し訳ありません。人代秘でしたね」
まあ大した事じゃないが、姉妹に説明は出来ない。
俺の手からスミティが這入り(※西尾維新風)、翼院大尉の脳をスキャンしただけ。
『手術の必要はありません。まもなく覚醒します』
と戻って来たスミティが告げる。
「うーん…」
と大尉が目を覚まし
「ややっ、これは如何に」
と時代がかった驚き方をする。
「翼院」
「気を確かに」
その声を聞いて翼院大尉はその場に正座してしまう。
「愁艶様方!軍装、久々に拝見しました。恐悦至極にて!」
やはり朱雀軍の中では、愁艶姉妹は憧れの軍神扱いなのだろう。
「何があった?」
「話してみよ」




