54-17.翼院の供述
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
54-17.翼院の供述
「我ら第三防衛隊は『北部国境時点で騒乱が起こった』と言う報告を聞き、現地に向かいました」
と、まだ舌がもつれる様な感じで大尉はゆっくり話し始めた。
「現地に到着すると騒乱どころではなく、二種の侵略軍が戦闘状態でした。既に大東軍と青龍軍の間に戦端が開かれていたのです。何度か戦闘が行われた後があり、互角の戦況を感じました」
「それで第三隊は?」
「手を出したのか?」
「いえ、隊長の命令は一旦様子を見る。でした。我らは丘陵地帯に陣を置き、平野を見渡しておりました。そして再び戦端が開かれたのですが、半刻ほどで決着がついたのです」
「大東が勝利したのか?」
「それとも?」
「勝ち負けはございませんでした」
「どゆこと?」
ステルが突っ込む。
こういう戦記モノとかはステルの大好物だ。
「大東軍が消失したのです」
「姿を消した?」
「いえ、軍としてはそのままですが、いきなり旗や幟の色が」
どう言うことだ?
最初に我々が来た時、倒れていた兵士たちは黄色の大東軍の旗だったが。
「青に変わってしまい、今まで戦っていた青龍軍に合流したのです」
「それでは敵が」
「いないではないか?」
「一瞬青龍軍が我らに向かってくるのでは?と身構えましたが、そうではなかったのです」
大尉は一旦間をおく。
記憶を再構築している様だ。
「黄色から青に代わって増員した青龍軍が、一気に平野部に押し出され」
「ところてんのように?」
「ところてんが何かは存じませんが、総崩れ的に対面の山地から押し出された感じです。そしてその後ろにさらなる黄色い旗がびっしりと」
「待て待て!」
「その旗とは」
「はい、今まで戦っていた大東軍の旗は生成りに近い薄黄色でしたが、今度の旗は岩絵具を使った様な鮮烈な黄色で、甲冑の装備も赤と銀を用いた高価そうなものでした」
「それはやはり」
「うん。大東禁軍」
「はい。我らもそう思いました。まさか首都防衛の禁軍がこんな南辺まで出征とは。といささか困惑しました」
「皇帝の本気度が高いと言うことかな?」
師匠が言うと、愁艶姉妹が首を捻る。
「先日我らが王府に到着した折」
「閲兵式がありましたが、ほぼ総員総出でした」
では、現れた大東禁軍は何者だ?
「なにせ大東は広おすでなあ。別の禁軍かも知れまへんで」
コンコンが含みを持たせた言い方をする。
いやいや、禁軍といえば首都禁城防衛軍一つだろう。
と思ったが、その謎はこれからわかるのだろう。
(※作中の主人公は回想で書いているので、当然なりゆきはわかっている体だが、正直作者はまだ展開を決めていない。というかぶっちゃけ決まらない(汗))
「今度の大東軍は圧倒的に強く、青龍軍は苦戦しておりましたが、戦況は一進一体で日が沈むと一旦両陣は退却・野営しました」
夜襲というのはあるが、両軍が夜間に激突することはまずない。
敵味方の区別がつきにくく、飛び道具の命中率も下がるからだ。
「それから?それから?」
「そこから記憶がありません」
ステルがずっこける。
「いいところでぇ〜」
「何か覚えていることは」
「ないのか?」
愁艶姉妹は諦めない。
確かに俺たちが陣に入った時、彼らは普通に向かって来たのだから、気絶したわけではあるまい。
「覚えていることですか?ああ、そう言えば最後に何か声が聞こえたような」
「こえが?どんな?」
ステルが復活した。
「『やはり青に増員が要るな』という野太い男の声がした様な気が」
と、言うことは、ここで反対側の丘陵にいた朱雀軍に何かが起こったのだろう。
「記憶を失った。と言うことは、そこで大尉たちは」
「ぶたさんになっちゃったのね?」
ステルは跳び上がって叫ぶ。
「ご苦労。しばらく休んでくれ」
「戦闘はまだ起こらない」
愁艶姉妹は大尉を労う。
「アシは愁艶さらぁと他の部隊を探してくるでよ。全部眠らせとくでな」
俺はスミティに問う。
『先ほどの翼院大尉の供述に補足はあるかい?』
『大尉の見た映像記録を観てください』
夥しい映像が早回しで、頭の中に流れ込んで来た。
『ここです』
映像が止まる。
丘陵から見通す遠景。
反対側の山岳地帯から、雲霞の様に大東禁軍が現れる時の視覚記録。
『画像が荒いですけど』
スミティが拡大をかけたのだろう。相手の兵隊の顔のアップがどんどん大きくなる。
『実際には大尉には遠すぎて見えない映像ですので補正をかけています』
モザイクみたいになっていた兵士の顔がだんだん輪郭を得て行く。




