ゲームの始まり(2)
ここまでの登場人物
朱雀還流 →主人公14歳。レムリアに転生した唯一の俺。只今絶賛逃亡中。
ヨウコ→妖狐は転生を続ける種族の名。幼馴染で一つ歳上。メグルと一緒に逃げたいヒロイン。幼ない頃はメグルに「オコ」と呼ばれていた。
タンジン→侍従長。赤子の頃からメグルとヨウコを育て、父性愛全開。
ギンラン→神官長。大東出身だが醍醐教徒は大東で差別されているので、恨みを持っている。
侍女たち→キャピキャピしている。
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-13.ゲームの始まり(2)
「痛てて…。何から何まで(おっぱいまで)良くして頂いて、本当にありがとうございます。これでヨウコと逃げられるんですね?天帝様に何かお礼しなくてもいいのでしょうか?」
と俺は尋ねた。
「 メグル…。あんたなにか勘違いしてへんか?天帝様の約束は、あんたらが無事脱出出来たら、の話や。どうやって脱出するかは、あんたらで考え」
そんなに甘くなかった。
「神仙界は娯楽が少ない。天帝様一同、神様たちはメグルとヨウコがこの双六(人生ゲーム)に勝って脱出出来るか、盛大に賭けてはるで」
ゲームって…。しかし俺だって転生の話に乗ったのはゲーム感覚だったしな。
「頑張ります」
「お気張りやす。メグルの知能は折紙付き。あんたが貰った、ほれ何やったか、ちいとて言ったか?まあ恩寵やな。"知は力なり"と言うちいとはな、思考能力強化と共に、相手の放った術を学習して自家薬籠中の物にしてしまう恐ろしい恩寵。後でごっつ使える技いくつか教えたるわ」
ありがたい!生まれてから勉強や術の習得に困った事ないのはそのせいか。前世の俺からは考えられん。
もう一つの非暴力思想は今は役に立ちそうもないが。
「とにかく、良く考えるこっちゃ。ヨウコはちょっとアホやけど、行動力はある」
「先先代様、言い方」
「あはは、生前の妖狐は余り頭使う様に出来てへん。ただ主様のお膝に乗ると、たまに凄い閃きがあると言うぞ」
ヨウコがキラキラと顔を上げる。
「冗談や。何本気でワクワクしとんねん、この色ボケ!」
ヨウコが露骨に凹む。
「冗談はともかく、メグルは何でも自分の頭の中で解決してしまうから、物分りの悪いヨウコに説明してやる事で、盲点も見えて来るかもしれへんな。昔の大王は愛妃との閨の語り(ピロートーク)で政策を決めた言うしな」
ホームズとワトスンか。
「では今夜から早速主上と同衾を」
「アホ、そう言う事は賭けに勝ってからにしなさい。うまく逃げられたら、子供だってバンバンバカスカ作れるぞ」
ヨウコ、その変な踊りはやめなさい。
「では、今夜から早速話し合おう。まずは即位までの日程だな」
「その事やけどな。これからタンジンやギンランも、どんどんガードが堅くなるやろから、これだけは最新情報教えといたるわ。大東から医師が到着するのは即位式の一週間前や」
「あのう、傷が痛むから座れないって」
「うちの人の頃からは、大東の仙術が進歩しとんのや。強力な傷の治癒作用を持つ仙丹を使うらしい。ただこの薬を用いると、それ無しでは居られなくなって廃人の様になり、やがて死ぬ。不老不死の仙丹ちゅうことになってるので、周りも止められへん。大東の思惑通り、史上最強のボンの息の根を止める。ちゅう訳や」
始皇帝がやられたやつだな。麻薬の一種か。ボンの健康がどんどん悪化して行く頃には医師は帰っており、大東は知らん顔。しかも死ぬまでに、ボンは大東に莫大な借金をして仙丹を求め続ける。上手い手だ。
「ともあれ、あと半年弱執行猶予がある訳だ。何とか一番自然に脱出出来る方策を練ろう」
その後先先代は、遁術その他幾つか見繕って、俺に伝授して去って行った。
余談だが、この先先代の行動で俺たちチームのオッズが一挙に下がったとか。
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