アンタ、あの子のなんなのさ(3)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-11.アンタ、あの子のなんなのさ(3)
難儀な事になった?
確かに生きるか死ぬかの大ピンチな訳だが。
ヨウコが口を開く。
「何か脱出のいい方法を…」
「そないな事、自分らでお決めやす!」
ピシャっと遮られた。
「わてが困ってるのは、そんな瑣末な事やおまへん。妖狐が間違って、ボン様でない男はんと縁を結んでしもた。その事や」
いや瑣末と言われましても、殺されちゃうんですけど。
「わてらからすれば、あんたはんがこのまま殺されてしもた方が座りがよいかもわからへん。でもそれでは余りにこの子が不憫やないか。と歴代方が言わはるのや。たまたまこの子の小さい時からわてが面倒見てたさかい、あんた何とかしたげて。とまあ言わはるのは簡単やけど、ほんまにどないしょ」
なるほど歴代妖狐界で、大問題になってる訳だ。
妖狐は必ずボンを見つけ出し、仕える。
初代妖狐が定めたこの誓いが崩れてしまった。
初代は飄々と言うだけ言って去ってしまった。残った二人はボケたのなんのと言いたい放題だったが、実は初代様、物凄〜く怒っていたのではないか。
「で、あんたはんはこの子をどうしたいんや?今朝の話は聞いてます。あんたが異世界のお人やと。歴代妖狐の世界では、すこしは異世界の事は知ってます。同族がいる事が多いさかいにな。多分イナリと呼ばれてるはずや」
ビンゴだ。
「俺の仮説を言います。俺は転生の役所のはからいで、この世界に来ました。」
「ああ、あの仕事が雑な所か。あれ役所の体をした怪しい人材派遣会社やで」
「そうなんですか?係員は転生先は、おそらくボンの体と分かっていたはずです。ただ、おれの異世界の記憶を消して送り込むのは約束違反なので、強引に生まれた赤子を俺が乗っ取った。申し訳ないが不幸な事故でした」
俺のイメージはゾフィとハヤタ隊員だ。
「いえいえ、その場合はボンの体には他所者は入れんはずや。絶対弾かれる。道理が合わんのや」
命を分け合う事も出来ないらしい。
「そもそもこの前世がはっきりしてる世界に、他所からの転生を認める事が無理なのや、あの会社の若造が名刺持って挨拶に来た時、わてらは断ったんや。無理やって。なのにこんな事しくさって。こんなん地上げと同じやで」
だから俺が第一号なのか。鉄砲玉扱いだな俺。
俺は済まない気持ちでいっぱいになった。
「何もメグルが悪い訳じゃない!」
ヨウコが口を開く。
「メグル?…朱雀還流か。ほう、面白いな。四神か。そんで、始まりに戻る…。あんた面白い名前してはるなあ。しゃあない。借りはあんまり作りたないけれど、天帝のおじさんに相談しますか」
なんか先先代は一人で納得している。
「いや、あんたが責任感じる話やハナからないんや。あの子、本物のボンはな、本来大きう育たん子やった。産声をあげる事もなかったはずや。そこへあんたがとびこんだので、天の理に瑕疵が生じてしもた。このヨウコはあの子が逝ったら、すぐに記憶を失くして、普通の娘として育つはずが、あんたをボンと認識してしもた」
全ては偶然のバグだった訳か。
「明日まで待って。対策を考えるさかい。あとさっきはキツイ事言って堪忍え。正味の話、命の助かる道も考えんとな」
いよいよ脱出計画が動き始めます。
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