第2章 その11 守護精霊たち
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『アイリス大好きよ! わたしのことわかる? 風の精霊シルルよ!』
ものすごく嬉しそうな金髪美人が笑顔で言う。
明るい黄緑色の瞳、健康的なふっくら血色のよい唇。
波打つ豪華な金髪が形の良いヒップを覆っている。
何より背が高くてスタイルがいい。
ウエストが細くて胸が大きいのだ。
身に纏っているのは柔らかそうな若葉色のドレス。たっぷりひだが寄っている布地は、足首に紐で結んだサンダルをはいた足先にまとわりつき、風にひるがえる。
小妖精の姿のときも身に纏う衣装は同じだけど、今度は大人の女性である。キュートで愛らしくてアイドルみたい。
『わたしは光の精霊イルミナよ。嬉しいわアイリスアイリス!』
どこから見てもすっかり大人になったイルミナが飛びついてきた。
イルミナは、色白でぱっちり開いた金色の目をしルビーみたいに透き通ったきれいな赤い髪をツインテールにして、お下げを長く垂らしていた。
ドレスは張りのある薄い布を、透明感のある柔らかい布に重ねたみたいに見える、ふんわりした形。スカート丈は膝頭を隠すくらいの長さ。
どちらかと言えばイルミナは、「きれいなお姉さん」という感じ。
きっと、エステリオ叔父さんが帰ってきて彼女たちを見たら、すっごく驚くわね。
急に大人になってるし!
『わたしも忘れないで。水の精霊のディーネですぅ』
ディーネは他の二人に比べるとちょっぴり幼い。
淡い水色の髪はふわっとした肩までのボブスタイル。
光沢のあるつやつやした生地の、ひざ丈のワンピースは、すとんとした裾の広がらない形で、清楚な雰囲気。このワンピースも薄い水色だ。
ちなみに言うのを忘れていたけど、エイリス女神さまは純白の絹のような布を、身体に軽く巻き付けたようなドレス姿でした。ほとんど美しい銀色の長い髪で覆われてしまっているけれど。
『見てみてアイリス! ディーネはね、こんなことができるのよ』
とたんに睡蓮の池から、勢いよく水が噴きあがった。細く高く、水でできた尖塔みたい。上の方は細かい霧状になって、小さな虹が浮かび上がる。
もちろん、我が家のお父さまが池に噴水を設置していた、なんてわけではないのです。
「うわあすごいわ! ディーネ」
あたしは感激して思わず拍手をしたのだけど、どうもそれがいけなかった。
『『なによ、なによ、そんなの! あたし達だっていろんなことできるんだから!』』
シルルとイルミナの敵愾心をあおってしまったみたいで、ふたりは両手を上げてポーズをとって、大がかりな呪文? を唱えようとしたのだ。
『『大いなる風よ!』光よ!』
「えっちょっと待って! それ危険なんじゃ……」
お父さまのご自慢の中庭が大惨事に!?
止めなくちゃ!
あたしの焦りを察したように、エイリス女神さまが、ふたりの前に立ってくれた。
『あなたたち、それぐらいにしておきなさい。せっかく精霊の姿を得たというのに。守るべき主を放って置いて、守護精霊どうしで勝負をしている場合ではないでしょう』
ぴしゃりと、雷を堕とされる。
『『『ごめんなさ~い』』』
三人の精霊たちは、すっかり おとなしくなって、身を縮めた。
※
『くすくすくす。怒られちゃった。せっかく大きくなれたのにね』
突然、あたしの背後から、声がした。
面白がっているような。
男の子。幼い子だ。
『『『あんた誰!!? 何者よ!!!』』』
三人の守護精霊たちの姿が、ふっと消えて、光より早く移動する。次の瞬間には、三人は声の主と、あたしの間に立ちはだかっていた。
その子は、まだ幼かった。
三歳児であるあたしよりは大きいけど。
『やだなぁ、お姉さんたち。ぼくも、お姉さんたちと同じだよ。桁外れに強い力を感じたから来たんだ。仲間に入れてよ。ぼくはね……』
暗い赤色の目だった。
年齢は六歳くらいかな。
栗色の巻き毛がくるくる額にかかって、いたずらを思いついた子供みたい。
『ジオっていうんだ』
『そなたは』
女神さまの表情が険しくなる。
『ぼくは敵じゃないよ』
ジオは、笑った。小さな子供の顔をして。
新顔、登場です。




