第九十五話「弟よ!兄ちゃん資源ゴミなんだってさー!」
こんばんは、作者です。
さて、オシオキタイムです(笑)
扉を抜ける。
水鏡みたいな壁があった。
鏡にはさっきの女の後ろ姿が写っていた。
街の中を歩いている。
まだ向こうの世界と繋がってるみたいだ。
やれやれだな。
クロノスは街中をスタスタと進んでいた。
ピチピチしたお尻が左右に揺れている。
うーん、なかなかのスタイル。
クロノスかー、女だったっけ?
随分前にすれ違ったみたいなくらいしか知らないな。
さて、行くか。
俺は水鏡に飛び込んだ。
濡れたりはしなかった。
ブニョンとした感触だった。
ゼリーみたいだな。
ゆっくり水鏡の中を歩いて抜けた。
ピアスを付け直しつつ、女の背後の空中に出現した。
女、もといクロノスは立ち止まって地図を見ていた。キョロキョロと街並みを確認していた。
ふふ!隙あり!
ふわりと着地した俺は、そのまま両手を合わせて人差し指を突き出した。
そう!七年殺しの秘孔だ!
カエルみたいな体勢のままダッシュした俺は、思いっきりクロノスにカンチョーを決めた!
完璧にヒットした。
お前は既に死んでいる!
「ぐがっ!あ、あ、」
クロノスは爪先立ちになり、声にならない叫び声をあげた。
そのまま崩れ落ちて、お尻を押さえてのたうち回っている。
ざまあみろ!
「はあはあ、な、何者!って、お前は!?ど、どうして!?確かに飛ばしたはず!!」
クロノスがお尻をさすりつつ振り向いて愕然としていた。
「てめー!俺様を異次元に飛ばすとは、いい度胸じゃないか」
俺はニタニタしながら近寄って、クロノスの頭に手を置いた。
クロノスはまだカンチョーから回復していないようで、膝を崩して座り込んでいる。
もう一つの秘孔を追加してやろう。
クロノスは、何をされるかは分からなかったようだが、涙目になった。
「ひ、い、いや、やだー」
グリグリグリグリグリグリグリグリ!
「きゃー」
頭グリグリの刑が執行された。
「ひーん!痛いー!」
クロノスは頭とお尻を押さえながら撃沈した。
うけけ!
しばらくしてやっと立ち上がった。
お尻のパンツを引っ張ったり頭を押さえたりして、半ベソだった。
こうやって見るとやっぱり美人だな。
「クロノスだな」
「え?私が誰だか分かるの?どうやってあそこから戻って、、というか、だ、誰?あなた誰?」
「オズ、、もといリュウホウ様だ!」
「リュウホウ、、様?リュウホウ様って、あの精霊界の資源ゴミ、、」
「あ?」
「い、異端児の?」
「そうだ!」
「こんな所で何してるの?」
「故あって家出中だ。お前こそ何してる?どうしてあの時計にあそこまで執着する?」
「家出って!?あ、時計?あれ私のだもん」
「そ、そうなの?それは悪かったな。けど、飛ばす事無いだろう?」
「だって、私の姿見られちゃったから」
あー、あれか。
壁紙みたいなやつね。
「あの時計が動き出したから、様子を見に来たの」
「動き出した?壊れてるんじゃないの?」
「違うわ。というか誰にも言わない?」
「言わない。俺がここにいる事を黙っているなら」
「いいわ。あなたがここにいる事も偶然じゃない気がするから」
クロノスが言うには、あれはいわゆる終末時計らしい。
「普段は普通に動いているはずなの。けど、最近逆回転を始めたの。誰かが現世にちょっかいを出してる、、あ、これ秘密よ!出してるみたいで、それが悪い方向に動き出したから、あの時計が逆回転してるのよ」
「お、俺のせいか?」
「うーん、多分違うわ。精霊さん達はあるがままの存在だから。もっと、上か下の人達よ」
上か下か。
「お前らか神か、サタンのオッサンとこの仕業か?」
「多分、、、。でもあのオジサンはそんな事興味無いわよねー?」
同意見だな。
サタンのオッサンは、一般的に知られているような、悪い奴じゃない。
まあ、悪い奴ではあるが(苦笑)
ギャングの大親分という感じなんだわ。
分別はあるほうだ。
「どちらにしても、ちょっと調べなきゃ。私はしばらく、この世界をうろついてみるわ。状況が分からないと主神にも報告出来ないし」
「そうか」
んー。
帝国の事かなー。
でも、人間が滅んでも神にはあまり関係無いしなー。ん?
気がつくと、クロノスが見つめて来ていた。
「ねえ、家出して来たって言ってたけど、具体的にはここで何して暮らしてるの?」
「え?冒険屋、、、の傍ら、勇者の引率」
言いながら苦笑してしまった。
我ながら妙な事をしているもんだ。
「嘘ー?何でそんな人助けみたいな事を、、、あなたって、他人に興味が無いって聞いたけど?」
失礼だな。
事実だけど。
「まあな、、最近は違うのさ、、何でか知らんが」
「ふふふ。そっかぁ。前に会ったよね?」
「会ったな。喋って無いけど」
「そうね。あの時と比べると随分印象が変わったわね」
「え?そ、そう?」
「あの時は、ずーっと睨みつけられてたから」
クロノスは苦々しい笑いになった。
えー!そうだっけ?
まあ神は嫌いだからな。
「よ、よく覚えて無い」
「うふふ。まあいいわ。冒険屋兼勇者の引率ねー」
クロノスは腑に落ちなさそうにしていたが、笑っていた。
あ、そうだ。
「な、なあ、俺の召喚獣にならないか?」
「えー!?何?新手のプロポーズ?」
「違うわ!!」
俺はモルペウスの事を説明した。
「へー、モルちゃんがねー、意外!あの人がそんな従順だなんて」
「まあ、半ば強制的にやったんだけどな」
「そうだー!この外道!鬼ー!邪神ー!」
黙れ!
ウキウキとジェスターを演じてたヤツに言われたく無いわ!
って、あれ?
今、普通に声が聞こえた?
クロノスの背後から、ロアだっけ?あの村で会った時の少年姿のモルペウスが歩いて来た。
「あら、モルちゃん。久しぶり!」
「お、おう。久しぶりだなクロノス」
それからモルペウスはクロノスに事の顛末と近況、今日の事などを語り始めた。
やたら誇張して(苦笑)
ボコボコにされたとか。
強制的に働かされているとか。
あ、ほぼ事実だな。
だんだんクロノスの顔が引きつって来た。
「いいか。この人には逆らうなよ!どうなっても知らないからな。下手したら犯さるぞ!さっきもお前の尻を見ながらニタニタと」
モルペウス、死にたいのか?
「あ、い、いえ」
モルペウスは裏声になって焦っていた。
クロノスが胸とお尻を押さえて後ずさりをした。
いやいや。
「犯さないから!」
「ほ、ほんとに?、、ですか?」
「今更敬語にならなくていいし!」
「良かった!」
クロノスはニパッと笑った。
やべー、素敵な笑顔。
いい女だなー。
「と、という訳で、どうだ?」
「うーん」
クロノスは考えている。
モルペウスが助け舟を出した。
「なあ、俺も下僕から始まったが、最近は楽しくてな。さっきだって久しぶりにウハウハできたんだ」
「そ、そうね。ナイトメアになったって言ってたわね」
「そうだ。それに下僕は多いほ、、ゴホンゴホン、この人はなかなか面白いお方だ。毎日飽きないぞ?」
「うーん、わ、わかった!いいわよ!けど、私も色々と活動したいから、分体でいい?結構役に立つのよー」
クロノスは腹を決めてくれたようだ。
やったー!
美人の召喚獣ー!
というか原始から存在し、神の中でもトップクラスの実力を持つ神を召喚獣に出来ちゃったよ!
「う、うん。いいよ」
「オッケー!じゃあこれはめといて!」
クロノスは手の上にシルバーの、オ○ガに似た腕時計を作り出した。
カッコいいー!
「何これ?」
「私の分体、普段は時計の姿をしてるけど、じゃあねー、呼んでみて!」
「え?おーいクロノス!」
『はーい!』
時計が光に変わって、人影が現れた。
クロノスが二人に増えた。おー!壮観!
『わかった?』
二人のクロノスが話しかけて来た。
ハモってるー!
やがてもう一人のクロノスは時計に戻った。
俺は貰った腕時計をはめた。
見た目より軽いんだなー。
高そう!
売ったらいくらになるかなー!
「ち、ちょっと止めてよね!」
聞こえるんだ。
「聞こえるわよー、聞かれたく無かったら、ベゼルの横にあるスイッチを押しておいて!」
そうか。
スイッチを押した。
いやらしい事を聞かれたくないからね(苦笑)
色々といじくってみた。
ほー、ほー、ダイバーズウォッチみたいだなー。
これは回転式のベゼルだよなー。
「ちょ、、どこ触って、、い、、やん」
え?
目の前のクロノスが真っ赤な顔でモジモジしていた。
あれ?
「ち、ちょっと!そこお尻!やだー!スケベ!」
「身体なんかい!」
「リンクしてるんだから!優しくしてね!」
優しくシテ?
シテ?
「よく分からないけど、今すごくエッチな事考えてない?」
流石に鋭いな。
「流石エロ殿下!」
「黙れモルペウス!起きながらにして悪夢を見たいのか?」
モルペウスは口を両手で塞いだ。
「あはは。息ぴったりね」
クロノスが呆れ半分に笑っていた。
「あ、ねえリュウホウ」
「こらオズ様と呼べ」
すかさずモルペウスが言う。
うん。悪くない。
「クロノスはリュウホウでいいや」
「えー!?では私」
「お前はダメ!」
「な、何故!」
「何故でもダメ!」
これも心境の変化かな。
たまには本名で呼ばれるのも悪くない。
「あ、でねリュウホウ。あんまり聞きたく無いけど、どうやって扉を開けたの?」
「あ、あー、すまん」
俺は苦笑いしつつ、足で前蹴りの仕草をした。
「えー!?ひどぃー」
「ごめんなさい」
「じいじには何にもしてないよね?」
じいじ?
あのじいさんの事かな?
「ああ。驚かした以外は何も」
「良かった!というか、私の方こそごめんなさい」
クロノスはすんなり頭を下げた。
うん。なかなか。
「けど、お尻は痛かったなー!」
「ごめんなさい」
俺も素直に頭を下げた。
「今度は優しくしてね。別にお尻でもいいわよ」
クロノスはウインクをしながらニヤリと笑った。
ぬ!
うへへ。
って、変態か!
「あーあ、シルフィーちゃんや、レイナちゃんだけじゃ飽きたらず、神まで食うんですか?しかもそっち!マニアックー!」
モルペウスがここぞとばかりに茶々を入れてくる。
「沈めるぞ!」
モルペウスはサッと明後日の方を向いた。
「え?え?今、レイナちゃんって言った?神製魔法使う子?」
クロノスが驚きつつ、尋ねて来た。
「え?そ、そうだけど、知ってるの?」
「うん。アテナっちの加護を受けた子よー。チャラいけど、聡明で気だての優しい美人さんでしょう?」
ぶっ!マジか?
「アテナって、あのツンデレの美少女か?」
「そうよ。あの子のお母さんがね、元々加護を受けてたんだけど、引き継いだみたいよ。あ、これも秘密ね!」
レイナのお母さんか。
話に聞く限りじゃ、アテナと合いそうだな。
え?俺?
アテナには昔会ったけど、汚い物を見るような目で見られたよ(汗)
「アテナの加護ね。レイナがねー」
「うふふ。いっぱい彼女がいていいわね」
クロノスがニヤニヤした。
「いっぱいじゃねーわ!一人だけー!」
「うふふ」
クロノスは全然聞いて無かった。
モルペウスーお前なー!
「い、いやー、自然って美しい。おや渡り鳥かね?」
モルペウスは汗を垂らしながら、必死に飛んでいる鳥を数えていた。
クロノスはそんな俺達を楽しそうに見つめていたが、やがて口を開いた。
「そっかそっか。あなたがこの世界にいる理由。少し分かったわ。もしかしたら、この世界の行く末もリュウホウ次第なのかもねー」
「え?俺次第?」
「何で、家出先をこの世界にしたの?」
「え?あ、ああー、何となく、、かな」
「そうなんだー。偶然なんてないのよー!というか似た者親子ねー」
「親子?」
「リュウホウとお父さんとお母さん」
「親父と母親がどうした?」
「この世界にいたら、そのうち分かるわよきっと。それとも、今、私の口から聞きたい?」
「い、いや、いい。うん、、、いいや」
よく分からなかったが、今は何となく聞きたく無かった。
偶然なんて無い、、か。
それに親父と母親ねー。
この世界と関係あるようだ、、、何で?
ま、まあいいや。
とりあえず話はついたな。
時計を見ると、15時過ぎだった。
確か夕方まで予選をやってるんだっけ?
まだ夕方には時間があるな。
自分の時計は外した。
ぶっちゃけクロノスの時計の方が素敵だ。
その後は三人でアイリッシュバーみたいな所へ行った。
お昼食べて無かったからね。
お腹空いていたのさ。
流石に少年のままだとマズいので、モルペウスはオッサンの姿になった。
ピザと手羽先風のペッパーチキンと、ボルシチみたいな煮込み料理を食べながら黒ビールで乾杯した。
どれも格別の味だった。
モルペウスとクロノスは珍しそうに食べていたが、満足したようだ。
「でね!私を破るからー!イラッとして飛ばしちゃったのー!」
「こっちはゲームを持ちかけているのに、このクソ野郎様、あ、失礼、はそれを全部無視して、俺をフルボッコにしてきたんだぞー!誓約書まで書かされたんだ!」
「いやー、ジェスターは良かった!あれはなかなかに、面白かった。ちょっと見直したぞー!」
クロノスと会った時の話。
モルペウスと会った時の話。
今日の闘技場でのモルペウスの話。
爆笑しつつ、色んな話で盛り上がった。
こいつらは人間じゃない。
もちろん俺もだ。
けど、こうやって、何の因果か現世に集った。
俺の正体も知っている。
不思議な親近感があった。
ふふ。神は嫌いだったのによー。
夕方近くになって店を出た。
「じゃあね、リュウホウ。気をつけてね。時計に話しかけたらいつでも会えるからね!」
「では殿下。これにて失礼します。本戦においても、よろしければ召喚して下さい!お待ちしています!あー、楽しみだ!」
クロノスとモルペウスはやたらウキウキしていた。
気持ちは分かる。
俺もこの世界へ来てからは、見るもの全てが興味深く、楽しい。
「分かった!じゃあまたねー!」
「はーい。またねー」
「ではまた!」
夕暮れに染まる街で、手を振り別れる三人。
原始から存在する崇高な、時の神。神達の中ではどちらかというと陰寄りな、夢幻の神。そして、俺、精霊王モドキ。
街行く人には分からないだろうが、相当変な組み合わせだ。
まあいいや!
また旅のお供が増えた。
リュウエイ、見てるか?兄ちゃん、神の友達が出来たかもしれないよー!
読んで頂きまして、ありがとうございました。
クロノスは面白いですねー。
クロノスと話をしている時のモルペウスは、それらしく見えます、か?(苦笑)
オズの両親についての話、アテナの話、色々出ました。
それは後々書きます。
何はともあれ、友達出来て良かったね資源ゴミ!(笑)




