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第八十九話「夜明けのコーヒーは苦過ぎる」

こんばんは、作者です。


危うくあきらめる所でしたが、なんとか書けました。


さて、事件は解決しましたが、帰れません(笑)

保安官達がやって来てから二時間程経ったか。

空が白み始めた。


俺とワイアルはまだ現場にいた。

辺りは段々保安官が増えて来た。

というより騒然としていた。

どうやらコンテナの中身がとんでもない代物だったようだ。

最初は捜査班が中身を改めていたが、次第に捜査の手が集まり、現在は大騒ぎになっていた。

その騒ぎ以降、保安官達が一気に増えた。

パト馬が飛び交っている。

港湾は完全に封鎖されていた。

フェンスの周りに、一定間隔で保安官が立っていた。


俺とワイアルは事情聴取を受けるらしく、帰してもらえなかった。

仮設のテントに座らされていた。

今も側には怖い顔をした保安官達が俺達を監視している。

これじゃまるで犯人じゃないかー!

お茶くらい出しやがれ!

それにしても、どうなった?


「モズ。どういう事だ?」


ワイアルが不安そうに話しかけて来た。

ゴツいが背の低い身体をさらに小さくして椅子に座っていた。


「さあ、、、」


分かりません。


しばらくすると、ちょっと豪華な制服の保安官がやって来た。

お偉いさんかな?

俺と同じ歳くらいかな。


「すまんな。事態が事態なものでな。モズとワイアルとかいったか?君達を疑っている訳では無いんだが。捜査の責任者が来るまでは帰す訳にはいかない」


「コンテナの中身は何?」


「それは教えられない。中身が何か知っているのか?」


知らんわ!

取り調べかよ。


「君達は何者だ?」


「ガンナーだ。昨日の祭りの余興でここにやって来た、と言わなかったか?」


「ふーん。で、何者だ?」


「だーかーらー!」


押し問答を続けつつ、時間は過ぎて行く。

お腹が空いたなー。


らちが開かなくなって来た頃、保安官の一人がお偉いさんの所へ走って来た。


「隊長。あの方が来られました」


「おお!そうか!ここへお呼びしろ」


誰が来たんだろう?


「誰が来たの?」


「今に分かる。知っている事があれば吐いてもらうぞ」


お偉いさんは、制服の襟やボタンを正しながらジロリと俺達を睨んだ。

無いってば!

ワイアルはガクブルしていた。

オッサン!しっかりしろよ(苦笑)


やがて遠くからぞろぞろと保安官を引き連れて捜査の責任者とやらがやって来た。

先頭にいる大柄な男が責任者だろう。

すれ違う保安官達が最敬礼をしていた。

責任者の男が近くなり、顔が見えた。


あ、、、。


「ビル!」


俺とワイアルがハモった。

え?

隣にいるワイアルを見た。

彼も信じられないという顔をして見返して来た。


「知り合いなのか!?」


今度は俺とワイアルとお偉いさんがハモった。

どういう事?

三人が顔を見合わせていると、ビルがテントに到着した。

彼は座っている俺達を見て驚いた顔になったが、やがて安心したような、呆れたような笑いになった。


「ふふ、わはは。不審者を倒したヤツがいると聞いたが。やれやれ、誰かと思えばお前らか」


「長官!わざわざご足労をお掛けします。そ、その、お知り合いで?」


お偉いさんは敬礼しつつ、チラチラと俺達を横目で見ながら、ビルにおずおずと尋ねた。


「ケイン隊長。ご苦労。知り合いだ。この若いのは俺の客人のモズだ」


「えー!?」


ケイン隊長とワイアルがハモった。

まじまじと俺を見て来た。


「そして、この珍妙なオッサンは、ワイアル。本名はワイアル・アープ。旧友だ。ケイン隊長、君でも名前くらいは知っているだろう?保安官の訓練所の教科書に載っていただろうに。伝説の元保安官だ」


「えー!?」


今度はケイン隊長と俺がハモった。

今日は驚いてばかりだな。

伝説の元保安官?

この役立たずのオッサンが?

今度は俺がまじまじとワイアルを見る羽目になる。

伝説の元保安官とやらは苦笑していた。心からの苦笑に見えた。

思わずワイアルに話しかけた。


「ワイアル!マジか!ただのオッサンじゃないとは思ったけど」


「オッサンとは失礼な。私はまだ38歳だぞ!」


そ、そうなんだ。

老けて見えるな。


「モズ、こいつはこう見えて昔は凄腕の保安官だったのさ。俺の信頼する部下の一人だった。博物館にもこいつの話が展示されているはずだが、読まなかったか?10人の強盗を一人で始末した保安官の話」


あー、何かそんなの書いてあったなー。

伝説のガンマンのコーナーだっけ?

名前まで読まなかったけど、まさかワイアルがねー。


「遠い昔の話だな。今では銃も撃てなくなった、しがないガンナーさ」


ワイアルが寂しげにぼそりと呟いた。

ビルが彼に話しかけた。


「まあそう言うな。人生色々あるさ。そうだ、いつも息子が世話になっている。ありがとうワイアル」


「はは。あんたに似て奔放な息子で困る」


返すワイアルの顔は楽しい事を思い出したような笑顔になった。


息子?


「息子?」


俺とケイン隊長が同時に言葉を発した。


「ああ。相変わらずちゃんと自己紹介してないのかアイツは」


「エースはな。エース・ベイツが本名だ。まあ親父が偉大過ぎるからな。あまり言いたく無いんだろう」


「それはお前も同じだろうに。ワイアル・アープと名乗っていれば、こんな所で拘束されずに済んだだろうに」


「まあな。人それぞれ、言いたく無い話もある」


俺とケイン隊長は口をあんぐりと開いて顔を見合わせていた。


「俺に似て堅苦しいのが苦手な息子でな。保安官にはならずにガンナーになると言い出してな。ならばとコイツに預けたのさ。ま、正解だったようだ。親バカかもしれんが、なかなかのガンナーに成長した」


なかなかと言うより、曲撃ちを見る限りは、かなりの腕だぞ。


「ああ。エースは鍛え甲斐があったからな。もう少し成長したら、名実共にエースにして、私は引退しようと思っている」


ワイアルがそう言って遠い目になった。

ビルはじっとワイアルを見ながら口を開いた。


「お前、、、。一線から身を引くのか?」


「身を引くも何も、私はあの時ガンマンとしては終わったのさ」


ビルは返す言葉が見つからないらしい。

ワイアルの過去に何があったのか?


「さあ、カビの生えた話は終わりだ。ビル、そんな事を言うために来たわけじゃないだろう?」


軽い調子を装いつつ、ワイアルが風向きを変えた。

ビルは物思いから解き放たれたように顔をあげた。


「あ、ああ。そうだったな。さて、隊長。少し外してくれるか?」


「は!分かりました」


ケイン隊長はビシッと敬礼をすると、俺とワイアルに謝辞を告げ、保安官達と共にその場を離れた。

少しして、サンドイッチとコーヒーを持って来てくれ、また下がった。

ふー、やっと一息つけるな。

ワイアルと俺はモシャモシャとサンドイッチをパクついた。

ビルは煙草をふかしながらそれを眺めていた。

さてと、、、。

と、コーヒーを飲み干したワイアルが口火を切った。


「ビル、で、どういう事だ?それにモズ?君は?」


「ああ。説明しよう」


ビルが口を開いた。

ビルは銃と麻薬の密輸の事、俺がテッサからやって来た助っ人の要である事をワイアルに話した。

ビルが信用して打ち明ける人物だ。

ワイアルは信頼出来るんだろう。


「そうだったのか。道理でジャックを撃って試験に合格する実力、先ほどの不審者達との戦いでのあの強さ、そういう訳か」


「すまない。信用して無い訳じゃなかったんだが」


「気にするな。私が君でも、まだ真実は話さないだろう。それより、我々のチームを選んでくれて嬉しいよ」


「ああ。何かの縁だと思ったからな。実際縁がこんなに深いとは思わなかったがな」


ワイアルと話しつつ、思わず苦笑がもれた。

ビルの息子と古い友人がいるチームに入っちゃったんだからな。


「オズ、お前の体質には恐れ入るよ。こんな所でこんなヤツと事件に巻き込まれているとはな」


「こんなヤツとは失礼な!」


「わはは。すまん!」


ワイアルとビルは親しげに軽口を叩いていた。

まあな、シット・マグネットの本領発揮だよなー。


「モズ、いやオズか」


「ああ、他人がいない場所ならオズでいい」


「わかった。君の探している銃撃犯の手がかりだが、大会に出てみたらどうだ?」


ワイアルから捜査に関しての提案があった。


「それは妙案だな」


ビルが頷く。


大会って何?


「大会?」


「あと一週間ほどでアミマイの東にある街でガンナーの大会が開かれるのさ。一対一での決闘さ。今年一番大きな大会だ。全国からガンナーが集まって来る。犯人は銃の腕に自信のあるやつだ。恐らくは出場してくるだろう」


決闘?

物騒だな。


「なるほどな。それなら情報が手に入るかもしれないな。けど、決闘とか、自信無いけど?」


「大丈夫だ。政府公認の大会だから、治療魔法のスペシャリストがついているし、相手を殺したら失格だからな」


ビルが事も無げに言った。

な、なるほど。

死ななくても撃たれるのは嫌だなー。


「ウチのチームも私以外は全員出るぞ」


えー!?


「そ、そうか。なら俺も出るか」


「決まりだな」


大会に出る事になってしまったよ。

結局目立つ羽目になるんだよなー。


「あ、忘れいたが、どうしてビルがわざわざ?」


「ああ、実はコンテナの中身がな」


コンテナの中身はハリウッドジャムの精製に使われる原液だった。

そう帝国製のあれだ。


「帝国から運ばれて来たのか?」


「その辺はよくわからない。コンテナ自体は昨日ベネーリアから来た船より下ろされた物らしいが、荷物のリストより下ろされたコンテナのほうが多い。リストに載っていないコンテナがあれなんだろう」


ベネーリア経由って事なのか。

詳しくはこれから調査するらしい。


「なあ、ここで荷揚げして、どこに運ぶつもりだったんだろう?」


「それに関してもこれから生きている犯人を締め上げる予定だ。ちなみに目星はついている」


ビルが確信げに笑った。


「え?」


「マックとアンジーのお手柄だ。一昨夜、マック達が情報を掴んで来てくれた。彼は見かけによらずなかなか切れ者だぞ」


そ、そうなのか。

マック、やるじゃないか!

いいなー、アンジーとコンビとか。

まあ、勇者チームのブレーンだからな。

軍のお偉いさんだったっけ?

それくらいやってもらわないとな。


「みんなはどうしてる?」


「ああ。元気に頑張っているぞ。マックとアンジーは夜の街で情報を探っているし。アークとトッドは昨日の昼に、誘拐事件を未遂に終わらせる活躍をしたんだぞ!」


「へー!」


アークとトッドもやるじゃないか!

俺もやらないとな!


「よし。話は終わりだ。麻薬の件はこちらサイドに任せてくれ。オズは銃の方を頼む。まずは銃撃犯を探してくれ。ワイアル、巻き込んですまない。きな臭いのは好まないだろうが、オズを頼む」


「わかった」


「わかった。ビル、今度奢れよ」


「はっはっは。そういえば、ただ酒を飲める店を開拓したんだ。今度行こう」


「何?本当か?そりゃいい、お供しよう」


ワイアルとビルは楽しそうだ。

ただ酒を飲める店か。

十中八九ミッドナイトの店だろうな。

可哀想に、人間にたかられる悪魔とか聞いたことないぞ。


《神を下僕にする精霊も聞いたことありませんがねっ!》


だまれモルペウス!

久しぶりじゃないか。


《ご無沙汰しています、特に用事は無かったのですが、一言だけツッコミたくて、では失礼します、クソ野郎様。何かのついでに死ねばいいのに》


モルペウス、、、お前こそクタバレ!

アイツはもっとこき使ってやろう。


ようやく解放された俺とワイアルは馬車で宿屋まで送ってもらった。


その間、極上の質の睡眠をモルペウスにリクエストした。

短時間で効果のある眠りを提供しやがれ!

モルペウスは「ひいぃ」とか言っていたが、宿屋に着いて目覚める頃には頭がすっきりしていた。


やるじゃないかモルペウス!

毎日頼む!


《む、無理です!神を何だと思ってらっしゃるんですか!》


あ?口答えか?

永遠の眠りにつきたいのかテメー!


《ひいぃ》


神の情けない悲鳴が朝の港町にこだました。


読んで頂きまして、ありがとうございました。


ビルがやって来ました。


ワイアルとエース、ビルの関係。


ワイアルの過去。


オチヨさんじゃありませんが、人生イロイロですねー。

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