第五十七話「女子力?中佐?アークの本領?」
こんばんは、作者です。
なんだか一気にポイント増えました。
ありがとうございます。感激です。
今日も旅路の途中です。
グランディアを出た俺達は昼食を取りつつ、国境の街、リリエンに向かった。
今日中にリリエンに到着しなくてはならない。
本来の目的地はもっと遠くだからね。
昼食は馬車の中で食べた。
国営ホテルのお弁当だ(笑)
カイロスが手配してくれたようだ。
根回しいいなー。
昨日までの雨が嘘のようないい天気だった。
アークは荷台で筋トレをしていた。
マックは御者台にいる。
見たこと、聞いたことを色々ノートに書きながら運転していた。
何しているのか聞いたら。
「こう見えて、一応軍人だからね。他国を堂々とスパイできるからねー」
だとさ(笑)
レイナとトッドは肩を寄せ合って寝ていた。
レイナが最初に寝たんだ。
トッドは肩に手を回そうかやめようか迷いに迷っていたが、そのうち寝てしまった。
アークと喧嘩する理由がわかる気がした(笑)
アークとレイナは付き合ってるようではないみたいだけどね。
ま、色々あらーな。
アンジー?
アンジーはねえ、俺の肩に頭を預けて寝息をたてていた。
レイナ曰わく、こんな風にみんなの前で寝るなんて珍しいらしい。
そうなんだ。
アンジー、俺を信頼してくれてるんだろうか?
なんか嬉しかった。
アンジーは何故か香水みたいないい香りがした。
高貴な中にも可愛らしさがある、いい匂いだった。
耳にピアスが揺れている。ちっちゃいチェーンの先端に、天使の羽が生えたハートがキラキラ光っていた。かわいらしいな。
あれ?
こんなのしてたっけ?
「ふふ。気づいた?」
前に座っているレイナが起きた。
トッドに頭を預けたまま、小声で話しかけてきた。
「アンジーはね、今、女子力を磨く修行中なの」
「はあ?」
「お父さんに怒られたんだって?」
??
レイナ曰わく、アンジーとレイナは、宿屋とかでは二人部屋が多いらしい。
女の子だからね。
だから割と普通に仲がいい。
確かにな。レイナ本人の陽性の性格もあるんだろうが、彼女はアンジーに物怖じしないし、アンジーもレイナを疎ましく思ってる様子も無い。
レイナ曰わく、アンジーがこないだ、夜に部屋で二人きりになった時、いきなり改まって、
「頼みがある」
と言って来たらしい。
「びっくりしたのよ。アンジーが誰かに頼み事とかするの初めてだったから」
まあ、そうだろうな(苦笑)
口を開けば、戦士たる者!人の助けなど借りぬ!とか言いそうだからな。
レイナはニーって笑いながら続ける、さっきまで寝てたからか、気だるそうだ、それが妙に色っぽい。
「でね、どうしたの?って聞いたの、そしたらねー」
「じ、実は先日父に怒られてな。私はあまりに飾りっ気が無さ過ぎる、とな。何でも父曰わく、私は勇者として必要な、ジョシ力というステータスが、圧倒的に未熟なんだそうだ。それは、体力や魔力と並んで、重要なステータスなんだそうだ。私自身は、そんなものが必要だとは思わないが、父があまりの剣幕だったもので、、、」
「超ウケるでしょ?もうさあー、笑いこらえるの大変だったんだからー、アンジーったら、真顔で言うのよ」
そらそうだろう。
腹痛い(笑)
アンジーが寝てなきゃ、笑い転げるとこだ。
ま、まあレグルスの気持ちも分かる。
親として、娘の行く末が心配なんだろう。
特に恋愛とか結婚とか、そっち方面が。
しっかし、なんつー言いくるめ方をするんだ、あのじじい。
というか、レグルス。グッジョブ!
「でね」
アンジーはこう続けたらしい。
「しかし、いきなりそんな事を言われても、私には、何をどうすればいいのやら、皆目見当もつかない。母もこの世にはおらぬし。そこで、思い切ってレイナに相談してみようと思ってな。レイナはいつも、男共に、可愛いとか、センスがいいとか、ジョシ力たけー、とか言われているからな。な、なんとか私を一人前に鍛えてもらえないだろうか?仲間として、同じ女子として、このとおりだ、頼む」
「ベッドの上で土下座したのよ。あのアンジーが。それに仲間って言ってくれて嬉しかったし。アンジーが可愛くなるのも見たいし。あ、モズも見たいでしょ?」
「ま、まあな」
確かに。ノーマルでこれだけ綺麗なアンジーだ。
どう化けるのか?
「でしょ?ピアスと香水は私が選んだの。【ステファニーローズ】って高級ブランドのなのよー!」
確かにカワイイし、いい匂いだ。
アンジーのセンスで買えるはずがないと思ったら、そういうカラクリなんだ。
「今は、お化粧の練習中なんだけど、まだダメダメだから、もうちょっと待っててね、あ、ちなみに、この話、みんなには内緒よ!モズだから話したんだからねーうふふー」
レイナは俺とアンジーを交互に見つつ笑った。
何か、激しく勘違いしてないか?
「じゃあね、あたしは寝るー、おやすみーうふふー」
レイナは俺の返事も待たずに目を閉じた。
いやはや(苦笑)
それにしても、サラサーの件以来、随分レイナが話しかけてくれる事が多くなった。
ま、距離感が近くなるのはいいことだ。
ふと、隣のアンジーを見た。よく寝ている。
安らかな寝顔だった。
はは、寝ている顔は、カワイイ普通の女の子だな。
途中マックとアークが運転を交代した。
マックは居眠りしているアンジーに驚きつつも、微笑んでいた。
こいつらにも色々な人間模様があるんだなー。
てか、相変わらず俺、サブキャラだな。
そんな事を思いつつ、旅路は続いた。
途中でアンジーが起きた。
《す、すいません。居眠りするなど不覚です》
気にするな。
《オズ殿の強さを聞いていましたので、今までは私がしっかりしていないとと思い、気を張り詰めいたもので》
そうか。
いいさ、俺が起きているから、アンジーは寝てなさい。
《わ、わかりました》
アンジーは赤い顔で、もぞもぞと動いていたけど、また俺の肩で寝ちゃった。
昼は役に立たないのは、内緒にしておこう(苦笑)
そうこうしているうちに、地図上では最後の小山を越えた。
あと少しだ。
だんだん夕方になって来た。
走り続けだなー。
今は17時過ぎだった。
と、何か不穏な空気を察知した。
アンジーも起きた。
「気づいたか?」
「はい」
トッドとレイナを起こさないように、御者台へ行った。
マックがいる。
「マック?」
「あ、ああ。モズとアンジーか。どうした?」
「なんかいるぞ」
「え?、、、。ん?あ、ああ。確かに、前方に、なんかいるな。まいったな、俺も鈍ったもんだ。現場を離れて長かったからな、御者の俺が最初に気づかないといけないのに、すまんな」
マックは恥ずかしそうに頭をかいた。
正式にはマクナイト中佐だっけ?
お偉いさんだわな。
机に座ってるほうが長いんだろうな。
その時だ。
かなり前方から、魔力の気配がした。
戦闘か?
魔法と、あとは、、、なんだろう、邪悪な力を感じる。
悪魔のそれじゃない。もっと小さかった。
「急ごう」
俺はマックに声をかけた。馬車がスピードをあげた。
アーク達も、なんだなんだ?とやって来た。
「何かよからぬモノがいる。気づいたのはモズとアンジーだ」
マックが説明した。
現場が見えてきた。
辺りはかなり暗くなって来ている。
晩秋の夕暮れは早い。
よく見えないが、時折魔法らしき火の手が上がっている。
どうやら馬車が何かの群れに囲まれているようだ。
そして、それは徐々に鮮明に見えるようになった。
「キャッ!」
レイナが悲鳴を上げた。
そう、商人か旅人と思わしき馬車が、無数の人間に、いや人間だったモノに囲まれていた。
ボロボロの衣服。
生気の無い目。
ただれた皮膚と、ただよう死臭。
馬車はゾンビのような何かに襲われていた。
「ゾ、ゾンビか?」
俺が誰にともなく聞く。
「いや、グールだな」
グール?
「妙に統率がとれている。ゾンビと違って、死体に悪霊がとりついたものがグールだ」
と、マック。
ゾンビとの違いがよくわからないよ(苦笑)
「リビングデッドか?」
「まあ、そんなとこだ」
「構わん、バラバラにすれば済む事だ」
アンジーが事も無げに言う。
アンジー、せっかくさっき、ちょっと上がった女子力が下がったよ。
《な!?ど、ど、どうしてそれを!?というか、ではどんな反応をしたら?》
レイナみたいに言うんだよ。
《え?えー!?》
「き、きゃあ」
アンジーの悲鳴に全員が固まった。
今更遅いよ(苦笑)
《ごめんなさい》
カワイイなーお前は。
《な!?い、今ダメ出ししたばかりではないですか?もう、よく分かりません》
大丈夫だ。
違う意味で女子力は付いて来てるから。
《あ、貴男がそう仰るのなら、、、》
アンジーはちょっと安心したみたいだ。
やがて、呑気な空気を吹き飛ばすように、馬車が、襲われている馬車の後方に着いた。
「くそっ、数が多くて近づけないな、少し削るか」
マックが言う。
確かに、馬車の後方にもワラワラとグール達がいた。
って削る?
「どうやって?」
って、あれ?
聞いたの俺だけ?
他のみんなはウンウンって納得顔だ。
何この仲間外れ感。
「確かに、回りくどいのはともかく、お前の技なら適任だな」
アンジーが言った。
こらー!アンジー!
《す、すいません。とりあえずご覧下さい》
「よし。やる!」
マックは御者台に座ったまま、魔法を詠唱した。
マックの前方に魔法陣が浮かびあがる。
青く輝く魔法陣だ。
今更だが、この世界での魔法陣は3Dのように光る文字で空中に出現する。
マックの前には、縦置きされた丸い魔法陣が出来ていた。
昼のサラサーのはレイナの頭の上に、傘みたいになっていた。
ちなみに採掘場でのカイロスは規格外らしい。
あんなの見たこと無いと、後にニールが言っていた。そう、機械式時計の中みたいに、魔法陣が幾重にも重なって展開されてたんだよ。
魔法陣は基本的に、主に力を借りる精霊の色をしてるらしいよ。
人にも精霊の属性があって、水の得意な人、風が得意な人、それぞれいるらしい。
だいたいは一人1つの得意属性なんだとさ。
え?カイロス?
あれは規格外だってば(笑)
全属性が得意みたいだ。
だからエアコンとか開発出来るんだね。
マックの前には青色に輝く魔法陣。
水が得意なのか。
「よっと!」
マックの掛け声で、魔法陣の前に、運動会の玉転がしくらいの大きさの水球が出た。
マックは満足そうな顔で、腰の鉄棒みたいなのを取り出した。
「ブレイクショット!」
マックは水球を鉄棒をビリヤードのキューのように持って突いた。
バチーン。
水球は破裂では無く、いくつもの球に分裂し。
グールの元へ飛んで行った。
すげー!
「ウガ?」
グールが水球に気づいたが、水球は凄いスピードでグールに当たった。
やったー!
バイン!
あ、あれ?
グールに当たった水球は、特に何もなかったかのように跳ね返り、グールのすぐ前で空中停止した。
「ウガ?」
ウガ?俺も言いたい。
「な、何にも起こらないじゃん!」
「待て待て、これからだ」
余裕のマック。
《先ほども言いましたが、無意味に演出が長いのです、もう少し辛抱してください。お、お兄ちゃん》
アンジー
空気読め!(苦笑)
「ではでは」
マックがまた何か詠唱した。
すぐに真っ赤な魔法陣が出現した。
あ、赤、だと!?
さっき説明した通り、得意属性は一人に1つ。
二つ使える、ダブルと言われる人すら、希少な人らしい。
マックはダブルなのか。
しかも、火と水?
ダブルの中でも希少なのが、相反する能力を合わせ持った人物だ。
例えば、代表的なのが、光と闇。次は火と水だった。
マックー!とぼけた顔して、やるじゃないかー。
「マック、すごいな!」
マックは得意げに答えた。
「はは。バレンシアの爆弾小僧の名は伊達じゃないんだぜ!」
小僧って!
それに爆弾小僧って。
あれか?ダイビングベッドバットとかやるんかー?
マックは、今度はバレーボール大の火球を作り上げ、
「それではご覧あれ。ナインボール。キャロムショット!」
鉄棒で突いた。
火球が一番近くの水球に飛んで行く。
水球に当たった瞬間。
ドーン!
水球が爆発した。
グールは、悲鳴を上げる間もなく、木っ端みじんになった。
火球はその勢いか?違う方向へ飛んで行った。
またも。
「ボーン!」
爆発音に合わせて、マックが声を上げ、音を真似た。
まるでビリヤードだった。
ギーン、ボーン!
ギーン、ボーン!
「ウガガー」
ボーン!
それは繰り返され、あっという間に馬車後方のグールが消し飛んだ。
ナインボールって!
九発以上あったぞ!
《我慢してください。ちなみにマクナイト中佐は、本物のビリヤードの方はからっきし駄目です、というかルールすらよく分かってないようでして》
イライラする(笑)
気持ちがわかるよアンジー。
《光栄です》
馬車は、襲われている馬車のすぐ後ろに到着した。
馬車というより、ワゴン車みたいだった。
席がいくつも見える。
中には数人の人たちがいた。
「い、今のはあなた方ですか?ありがとうございます。た、助けて下さい!いきなり襲われて!護衛の方も頑張ってくれてますが、数が多くて、護衛が一人やられました」
何かの制服を着た男性が、必死に俺たちに訴えかけて来た。
「どうする?リーダー?」
マックがアークを顎でしゃくる。
「ど、どうするって、どうすりゃいいんだー、うわー、た、大変だー!だ、誰かー助けてー!」
アークは泣きそうな顔をしていた。
おいおい(笑)
スパーン!
レイナがアークの頭をはたいた。
「助けてー!じゃないわよ!あたし達がやるんでしょ!ほらほら、泣いてないで、早く剣抜きなさいよ!」
「うう、グスン」
アークは泣く泣く剣を抜いた。
本当に勇者かお前?
だが。
「よし!我々が助太刀しよう!」
剣を掲げ、キリッと引き締まった顔のアークが宣言した。
鼻水は止まっていた。
アーク?って、はあ?
《前にレイナが言いませんでしたか?剣を握るとまともになると》
アンジーが話しかけて来た。
あー、何か言ってた気がする。
まともってこういう事かよ!
二重人格みたいじゃねーか!
《すいません》
あ、いや、アンジーが謝らなくても、、、。
「よし!トッド、アンジェリーナ、僕と一緒に来い。敵の殲滅だ!レイナは怪我人がいないか見てくれ。いたら治療を頼む。マックはレイナと馬車の護衛。モズ!、、、モズは邪魔にならないところにいてくれ!」
「おう!」
「よし!」
「はーい!」
「まかせとけ!」
「グサッ」
トッド、アンジー、レイナ、マックの順だ。
最後のは、俺のプライドに矢が刺さった音だ。
いーよいーよ。
どーせどーせ。
足手まといですよーだ。
《で、では行って来ます》
はーい。アンジー、頑張ってねー、役立たずなお兄ちゃんの分もねー。
あーあ、タバコでも吸ってよーっと。
すっかりいじけた俺は、馬車をカッコ良く飛び出して行くみんなを横目にタバコに火を付けた。
これじゃあ、いつかの遊び人宣言みたいじゃないかー!
風牙、俺、お留守番だってよ。
弱いと邪魔になるんだってさ。
お前の出番も無いね。
フミィー。
俺の指で、指輪の風牙が気の毒そうに答えた。
読んで頂きまして、ありがとうございました。
アンジーは確変中なんでしょうか?
これから、どうなるんでしょう。
アークはただのアホではありませんでした(笑)
そして、マックはイライラさせてくれますね。
オズは早速戦力外だそうです(笑)
次回ご期待下さい。




