2-1話 次の目的地
もはやモンスターが支配する世界――我が物顔で跳梁跋扈する盗賊団を、行きがかりに蹴散らしながら旅する自称〝ただの人間〟ことアインが、巨大に過ぎる棺桶を担ぎつつ上機嫌で呟く。
「フフフ……トゥーナが仲間になってくれてから、食糧の心配をしなくて良くなったのは、本当に助かるな。ありがとうな、トゥーナ」
「フフーンッ、もっと崇め奉りなさいっ♪ ……まあ一緒に旅してみて、旅人って自称が冗談としか思えない、旅のド素人だって良く理解できたけど……少しは旅に慣れなさいよ、旅人を名乗るのも失礼なレベルよ現状」
「フッ、そんなことはないさ……こうして街から街、国から国へと旅をしている以上、俺たちは間違いなく旅人だ」
「街の外をほっつき歩いてりゃ旅人ってモンでもないのよ。アンタらアタシがいなかったら間違いなく、また行き倒れてたからね。ホント、もっと感謝しなさいよアタシに。このメンバーの命綱、完全にアタシが握ってんだからね」
「ああ、充分に理解しているとも。……ただ、まあ、何というか」
ピンクブロンドが麗しい魔女娘トゥーナが、得意満面……ではなく早々に真面目顔に切り替え、結構ガチめに注意を促す。
一方で、基本的に歯に布を着せず物を言うアインにしては珍しく、少しばかり躊躇いがちに口を開いた。
「その、ハロウィン・タウンを出立してから、十日以上にもなるが……毎日三食、カボチャの……パイとかケーキとかばかりが献立なのは、もう少し、こう……いや食糧事情としては本当に助かるのだが、バリエーションというか、だな……?」
「はー? もー、ワガママね、分かったわよ……じゃあ今日はシチューやステーキにしたげるわ、もちろんカボチャのね! 肉厚なカボチャの身をじっくり焼いて特製パンプキンソースをからめると、絶品の甘さになるのよ~。どう、嬉しいでしょー?」
「わあい。わァ、ァ……ど、どうも、ありがとうございマス……トゥーナの料理の腕前は秀逸なので、本当に嬉しいデス……」
「フッフーン、まあ当然ね~♪ てか変な口調ね、いくら嬉しいからって、そんな畏まらなくてもいいのよ? おーいアイーン?」
アインの言いたいことは伝わらなかったようだが、実際トゥーナがいなければ成り立たないまである旅の一行なので、文句も言えない。
が、〝そろそろカボチャ以外も……〟というアインの言葉に出来ない思いが届いたのか――棺桶の頂点に座る美貌のメイド・ロゼが、歩く震動に揺らされつつ声を紡いだ。
「マスター・アイン、トゥーナ様。次の目的地が、目視できました」
「「!!」」
ロゼの報告に、アインとトゥーナが同時に反応しつつ、改めて対話する。
「ロゼ、ホント? うわ~……アタシ、ハロウィン・タウン以外の街に行くのって初めてなのよねえ。あ、今から行くのって国だっけ? ていうかアインの先導が正しくって一安心だわ、そこだけは旅人らしさの最低限よね……で、目的地はどんなとこなの?」
「まあ知識量にだけは自信があるからな。さて、次の場所は、国……もちろんモンスターの支配する場所だが、この辺りでは少し異色だな」
淡々として見えるアインだが、巨大な棺桶を背負いながらも、その足取りは軽くなっている。
そんな彼が口にした、次の目的地の名は――
「元は東洋の島国にて〝妖怪〟と呼ばれていた、モンスター。
その中でも〝大妖〟と恐れ畏怖されていた女王が治める国。
猫の妖怪、即ち猫又が支配する猫のための国――猫又国だ」




