第67話 闇の勇者、見参①
「久しぶりじゃな~! 火の玉サボテンのテキーラをもってきたぞい!」
転移してきたのは、三人のドワーフだった。
半袖の上にコートを着ている。
「ああ、ワタリの郷のみなか。驚かせてくれたわ」
バルガンは斧をおろし、ため息をついた。
ワタリの郷から転移してきたドワーフたちは、コーネルの郷のドワーフたちと違って日焼けしている。
表情も、陽気で明るい。
武器をしまうルクスたちに、ワタリの郷のドワーフは手を振った。
「ほぉ~珍しいのぉ。コーネルの郷に人間くさいメンツがおるとは」
「あの地球の小僧の件はどうにかなったのか?」
「わしはタルボじゃ、ワタリの郷の代表じゃ。いやーしかしここはいつも寒いのう」
コーネルの郷にきた当初は嫌な顔をされたが、ワタリの郷の面々は好意的だった。
バルガンが渋い顔をする。
「同じドワーフじゃが、こいつらは灼熱の大地に住むワタリの郷のドワーフじゃ。幸い、まだあのシュラには知られていなくてのう。おまえさんらも、地球ではワタリの郷のことは言ってくれるなよ」
「言いませんよぉ~。あんなやつ。こっちも迷惑してるんです」
ルクスはふくれっ面をし、ケニーもうんうんと頷く。
調査員の稲葉は、半妖の孤児院施設が飲み込まれた事件のあとも、何件もついてきた。
一週間じっくり張り付き、実は内緒でとりつけていたという盗聴器も回収していった。
結果として、人間に害をなす言動はしていないこと。
ルクスが助けた人間の子と仲良くしていること。
事件現場での救助の仕方。
城石深玲からの証言。
それらのたくさんが残業ダイスキ部の無実をつかみとり、匿名の書き込みは開示請求された。
名誉棄損で訴えることになったのは、シュラの腰ぎんちゃくの一人だった。
周到なシュラは自分のパソコンで書きまず、側近のパソコンを使っていたようだった。
パソコンを使われた子分は見捨てられたようで、やったのは自分ではないとしながらも慰謝料を払って落ち着いた。
ユーナいわく「何本あるか分からないけど、シュラの子分をもぎ取ることに成功した」とのことだ。
「おぬしらも、大変そうじゃのぅ……まま、せっかくワタリの郷でしか作れない火の玉テキーラがきたところじゃ。うちの郷の氷小麦酒と交換しつついっぱいやるかの」
「いいのう、早く交換して飲むか!」
その音は、にぎやかな笑い声に紛れて聞こえなかった。
ただ、その殺気は全員の背筋を凍らせる。
「シュラだ! 皆のもの装備しろ!! そして、お前たちは逃げろ!!」
ワタリの郷のドワーフたちは、すぐさま転移した。
「もちこたえろ」
そう言い残したからには、ワタリの郷のメンバーを武装して戻ってくる予定なのだろう。
バルガンの顔が苦々しくなった。
ワタリの郷を知られたら、シュラの魔の手がそこまで伸びる可能性がある。
「ルクス、おまえさんらもじゃ、ここで戦う必要はないぞ」
「いえいえ、焚きつけたのは俺でもありますし……」
「そこの半妖! ホームページで見たぞ、ヴァンパイアハーフだな! そっちはハーフエルフ! そこの女はドラゴニュートハーフ! どいつもこいつも、このオレを怒らせたこと、万死に当たるからなぁ! 今日こそ皆殺しにしてやる!」
魔弓をいっぱいに引きつつ、ケニーがため息をついた。
「しまったなあ。スマホはアイテムボックスの中だ。せめて録画して、この音声だけでも拾えばなぁ」
「ケニー先輩、かしこい!!」
「もっとも、相手にスマホごと壊されるかもしれませんですが……」
絶対的不利な状況の中、ケニーもアリアも余裕がある。
背後には、武器を装備したドワーフたちが揃っていて数では勝っているのだが。
「いま、私がシュラの弱点と所持スキルを全て看破して――」
「絶界領域!」
シュラが、アリアを見ながら憎々し気に技を叫んだ。
アリアが、瞳孔の開いた目を何度もしばたたかせる。
「なにも見えない……? そんなまさか、ドラゴンアイが効かない……!?」
「フン、たかがドラゴニュートハーフに見せるものか! 影よ、行け!」
シュラに付き従うジャイアントオークキング、デスナイト、ゴーレムキングが襲い掛かってきた。
ドワーフたちがすぐさま斧で、影に立ち向かう。
シュラの前では、魔法が無効化される。
ドワーフたちにも魔法があるが、今は斧だのみだ。
「あの中では、ゴーレムキングが一番厄介です。物理攻撃はほぼ通りませんです!」
「半妖どもには、オレが直々に一撃いれてやる。二撃目には死んでるだろうがな」
シュラが剣を抜いた。
そのオーラからは死の匂いがする。
ルクスの体中が、危機探知でひくひくと肌が反応した。
鬼哭丸を構えたルクスに、シュラがあざ笑う。
――ここでは死ねない。死んだらユミエラは、どうなる。
冷たい空気の中に、殺気が光るように張りつめていった。




