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気弱なヴァンパイアハーフは多分バトルを頑張りたい〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います  作者: 相木ふゆ彦
第五章 ちりもつもれば鬼になる

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第102話 カナリア①

 近衛騎士のセバスティアンを見送ったルクスたちは、部屋を貸してくれた武器屋にお礼を言ってカナリアの家に向かっていた。

 

 ケニーがいくらか包もうとしたが、武器屋のおっさんはセバスティアンのファンだといって受け取らなかった。

 王に張り付いている近衛騎士のファンというのも不思議だが、あの切れ者でかつ曲者のセバスティアンには色んな逸話がありそうだ。

 

「カナリア、セバスティアンさんが言ったみたいに頼れる親族とか、ご近所さんはいる?」

 

「いないわけじゃないけど……あたしはおとうさんを家で待ちたい」

 

 平民街を四人でとことこと歩いていくと、カナリアを見て目じりを抑える女性などが目についた。

 衛兵隊には伏せられていても、近所の人間には帰ってこない父親のことは知れ渡っているようだ。

 

 ――だったら、動けばいいのに。

 

 カナリアからは、それなりに匂う。

 風呂を貸すとか、食事を差し入れるとか、そういうことがあればカナリアだって肉泥棒なんかしなかっただろう。

 

 カナリアの家につくと、高さはあるものの狭い家だった。

 カンテラを出し、家のあちこちを照らす。

 

 食器や寝具から、親ひとり子ひとりなのがうかがえる。

 アリアはお風呂を沸かし、ケニーとルクスは家の大掃除を行った。

 

 少ない服は、全部着た様子があり、ケニーは全部それを洗ってルクスは服と下着を買いに走る。

 ユミエラの世話を見ていた分、ルクスのほうが恥じらいもなくサイズも分かったので三日分ほどの服を揃えて戻った。

 

 カナリアを洗っているアリアに、その服を差し入れてからルクスとケニーは小休憩を挟んだ。

 

「ルクスくんは、お城に泊まりな? ルイノール陛下待ってるよ」

 

「でも、アリアちゃんとケニー先輩を置いてけないし……」

 

「この家で大人三人は寝れないよ。無理無理。ルクスくんが一番かさばってるんだから」

 

 190センチを超えるルクスは、身を縮めた。

 それを言われると、たしかにここには他にスペースはない。 

 

「――シュラの仕業だと思ってる?」

 

「はい、かなり」

 

 それぞれ、アイテムボックスからドリンクを出してケニーとルクスは床に座る。

 ぴかぴかに磨いたばかりの床は、わずかに湿っていた。

 

「万が一、シュラがネクロマンサーの力でカナリアちゃんのお父さんを従えてたら……それは生きてない」

 

「シュラがまったく関係なくて、ただ何か事情があって隠れている可能性もありますけど。衛兵が血痕残して、娘を置いて失踪する理由は――セバスティアンさんなら分かるかもしれないですけど、セバスティアンさんはもう生きてる可能性を捨ててるんですよね……」

 

 ルクスはカフェオレで甘く染まった息を吐く。

 風呂場から、アリアとカナリアがはしゃいでいる声を聞きながらケニーはため息をはく。

 

「ルクスくんは、それでもカナリアちゃんとお父さん探しするんでしょ?」

 

「毎日べったりは無理ですけどね。ユミエラも元気になってきてるとはいえ、前回はかなり留守番させちゃいましたから。事務所でも、働かないとだし」

 

「九月九日まで、行ったり来たりか……解決すればいいんだろうけど」

 

 考え込んだケニーに、ルクスはアイテムボックスから幾つかの種類の生肉を差し出した。

 もちろん、カナリア用だ。

 

 ケニーとアリアは数日分の食糧は持ってきている。

 ケニーは、その肉をしまいこむと長い金髪をかきあげた。

 

「僕とアリアちゃんは、ヴェンデーノの谷でレベルあげをするつもりだ。シュラが相手だった場合、今の状態じゃ手助けもなにも出来ないからね。二人がかりでまず、一体のドラゴンを倒せるようにならないと」

 

「それなら、ヒュームの谷もおすすめですよ。レッサーファイヤドラゴンがうようよしてて」

 

「じゃあ、ヒュームの谷からかな。ルクスくんのお荷物になりたくないしね」

 

「お荷物だなんて、そんな……」

 

 ルクスの中で、二人とそんなに力の差を感じたことはなかった。

 こつこつと、時にデーモンモードになりつつも進んでいたらいつの間にかホワイトドラゴンなどを倒せるようになっていた。

 

 手柄の多くは、魔剣ドルトウィンのおかげだと思っている。

 

「ルクスくんが服を買いにいっているあいだに、近所の人が顔を出したけど『あの純白のコートの人はあのドラゴンスレーヤーか』って聞きに来たよ」

 

 ルクスは、ドラゴンスレーヤー呼びより、ゴシップがなければ子供がひとり暮らししていることを見に来ないのか、と思った。

 地球とは種族も生活環境も違うが、どうしても冷ややかに感じてしまう。

 

「そうですか」

 

「シュラは、転移石作りにエルフも捕らえているだろ? もしあちこちでドラゴンスレーヤーとしてルクスくんが噂になっているなら、最終目的地のここがバレてもおかしくない、だろう?」

 

 ルクスは、ケニーから強い嫌悪を感じた。

 事務所を荒らされたとか、グランディアを乱したこと以上に、ケニーはハーフエルフなのだ。

 母がエルフなのだから、特に怒っていて当たり前だ。

 

「とにかくも、いろんな警戒は必要ですね。明日からは二手に分かれましょう」

 

 ルクスの赤い瞳に、ケニーの碧眼が強く光る。

 これ以上、伸ばしににはしていられない。

 

 カナリアの父を探しながら、やることはやらねばならない。

 最後の実を取ってこの地を離れるだけにはいかないのだ。

セバスティアンは、伯爵家の三男です。

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