第104話 ダンジョン配信 セツナ戦 ⑦
——お前は暗黒鏡を壊さなくてはならないにゃ!!
黒猫の声がした。
突然、悲鳴が聞こえる。その悲鳴が途絶えると闇の中に少年が溶けているようであった。、
暗黒鏡が少年を別の場所に連れて行こうとしているようであった。
しかし、そこに金槌坊の意志が紛れ込んでしまっていたらしい。
目を覚ますと、少年は真っ暗な闇を歩いているようであった。
暗黒鏡の望みとは別の場所に辿り着いていた。
そこは夜のようである。
ずっと、少年は廃村を歩いていた。
真夜中の静けさ、幼い頃、同じような道を歩いていた気がする。砕けたコンクリートの上をどうにか歩いていた。上空には、カラスが群れをなし、ガーガーと鳴きながら飛び回り、少年を睨みつけているようだった。黒猫と一緒に少年は歩いていた。
山の上に向かうと、朽ち果てた旅館のような建物が見えてきていた。
少年は旅館に向かう長い石畳の道を歩いていく。
カツンカツン
カツンカツン
石を叩く音が聞こえてくる。
カツンカツン
カツンカツン
そちらに視線を向けると、石を叩いている真っ黒い塊が立っていた。
金槌坊である。
突然、作業している手を止めると、金槌坊は少年の方に視線を向けていた。
ただ、少年は金槌坊を忘れていた。
それなのに、少年の目からは涙が流れていた。
金槌坊の声がした。
「おや、主様ではないですか!! さあさあ、こちらにいらしてください……」
そろりそろり、金槌坊が旅館の奥を歩いていた。
少年は金槌坊に付いていく。
旅館の裏側を進んでいった。
すると、小さなお社のような建物があり、その屋根には真っ赤な文字が書かれていた。
雨風で風化しているため、文字を認識することはできなかった。
金槌坊がお社の前で立ち止まっていた。
床の板を外すと、奥の階段を指さしていた。
「さあ、主様、ここに入ってください……」
金槌坊が言った。
階段を下りていく。そこは妖力で満ちていた。普通の人間には入ることができないだろう。隠されたような場所である。意図的に、外部から拒絶された場所なのかもしれない。
階段を降りると、ろうそくが中を照らしていた。
その光を頼りに先へと進んでいく。
やがて、黒い石が置かれているのを見つけた。
忌まわしい気配が漂い、すぐに、人非ざるものが作った石だと気が付いていた。
「主様、黒猫からこの石を壊せと言われているんですよね? どうか、主様の意志を示してください…」
金槌坊の声がした。
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
そちらに視線を向ける。
そこには、沼田君の持っていたカメラがあり、少年の姿を映していた。
視聴者たちからコメントが書き込まれていく。
少年の頭に語り掛けてきていた。
〈その石を壊してはダメだ!!〉
〈そうだよ!!〉
〈どうして、そんなことをするんだよ…〉
〈君は幸せになれますよ…〉
〈ああ、これを壊したら世界が終わってしまうんです…〉
〈幸せに過ごそうよ…〉
視聴者の声が、少年の頭に語りかけてきていた。
少年は不安そうに周囲を見渡した。
こんな場所にいたくない。できることなら、少年はこの場所から逃げ出したいと思っていた。
しかし、それすらできなかった。
——この石を壊すにゃ!! そうすれば元の世界に戻ることができるにゃ!!
黒猫が言う。
しかし、その言葉は少年に届いていなかった。
少年はうずくまっていた。
怖い…怖い…
怖い…怖い…
怖い…怖い…
カラスが異様な声で鳴きだし、森に住むたくさんの虫たちがさざめき出していた。
少年は子供の時のことを思い出していた。彼があやかしと話していたため、大人たちは彼をおかしな存在だと見なしていた。
その記憶から逃れてきたが、暗黒鏡により、少年の魂は追いつめられようとしていた。
その時、笑い声が聞こえてきた。
そちらに視線を向けてみた。どうやら、金槌坊が会話をしているらしい。
彼らは少年の誕生日を祝うつもりのようであった。
その時、少年は自分の誕生日が近いことを思い出していた。
そして、少年は自分がダンジョンを作っていたのかを理解していた。
孤独だったせい。
ただ、友達を欲していた。
段々、少年は意識を取り戻そうとしていた。
少年の目の前の光景が開け、燃え盛るセツナの姿が現れていた。
セツナの姿が金槌坊に変わる。
少年は何かに気が付いたらしい。
ハンマーを手に取ると、それを次第に高く振り上げることにした。
そして、全力を込めて力強く振り下ろした。
鏡が砕ける音がした。
手にある暗黒鏡がひび割れていた。
目覚めたように、少年は元の場所に戻ってきていた。
暗黒鏡の声が聞こえてきてくる。
『なんてことだ…。どうして砕こうとするのだ…。許せぬ…。だがな、これで終わらせるわけにはいかない…』
暗黒鏡の声が聞こえると、その途端、暗い闇の力がセツナを覆いつくしていた。
朱雀の炎は消えていく…。
気が付くと、セツナは大きな影の存在になっていた…。
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