第102話 ダンジョン配信 セツナ戦 ⑤
少年は、あやかしの魂の過去の記憶に触れていたらしい。
その時、あやかしの魂は懐かしい記憶を思い出していた。そして、それが少年に覗かれていることに気が付いていた。
突然、あやかしの魂が少年に語りかけてきた。
——少年、お前、オレの心に触れていたな…。許さぬぞ!!
あやかしの魂の声がする。
ただ、あやかしの魂が困惑していた。
どうやら、純粋だった頃の自分を見られたかのようで、恥ずかしさに顔を真っ赤にしているようであった。
きっと、そのせいだろう。
あやかしの魂は戸惑っているようだった。ただ、少年の魂に、何かを伝えようとしていた。
——少年、ずっと、黙っていようかと思っていたのだが、やはり、お前には伝えておかなくてはならないようだ。いや、知る必要があるだろう。オレは暗黒鏡を破壊し、全てを終わらせなくてはならないと思っている…
あやかしの魂は、燃え盛るセツナの手から暗黒鏡を奪っていた。
その鏡をじっと見つめていた。
——少年、暗黒鏡を壊すのを手伝ってくれないか?
少年が問いかける。
「それは、あの女性のためですか?」
——はて、女性とは?
「草原にいた、奇麗な女性です…」
——それを見たのだな?
「そうです……」
——まあ、そうだな…。見たのか…。なるほど、あー、そうか、なるほどな…。あー、くそっ、そんなことを言わなくちゃならないんだ…!!!
「え、どうしたんですか?」
——い、いや、何でもない…。昔のことを思い出してしまっただけだ…。ただ、そんなこともなければ、お前に声をかけることもなかっただろうしな…。きっと、暗黒鏡のせいだろう。お前も金槌坊を助けたいのだろ? その手伝いをしてやろう…
「あの女性に恋をしていたんですね?」
——そ、そうだ…。まあ、おかしい話だと思うだろ? それは否定はしない。ただ、自分の魂が戻るまで、オレは自分が何者であったのか、それすら覚えていなかった。魂が一つになったとき、突然、この世界に戻ってきた気がした……
「あの時ですか?」
——その通りだ…
そう言うと、突然、あやかしの魂の声が聞こえなくなっていた。
暗闇だけが覆いつくしていく。
「どうしたんですか?」
——うん? 何か、おかしい……。いや、暗黒鏡が、オレの力を押さえつけようとしているようだ。いや、違う。少年、お前の魂を押さえつけようとしているみたいだ。お前とオレは1つのい魂を共有している。だからこそ、お前の魂を壊そうとしているようだ…。暗黒鏡の力に耐えなくてはならない。そうしなければ、暗黒鏡に負けてしまうことだろう……
あやかしの魂の声が途切れる。
すると、少年は突然深い闇の中へと落ちていった。
何か異変が起ころうとしていた。
少年は、自分の中に別の魂が溶け込んでしまったような感覚に襲われた。
◇ ◇ ◇
周囲には誰もいない。声も届かない。
ただ、深い闇の中を落ちていくようであり、少年はずっと眠り続けていた。