第16話 寄宿舎
「フランツィスカ上級騎士だ。分隊長殿の遣いとして来た」
やって来たのは女騎士だった。まあうちの部隊は女子ばっかだからな。
年頃は10代後半から20代前半くらい。くっ殺が似合いそうな凛々しい感じの騎士だな。
「峰岸 深雪だ。一応この集まりのリーダーのような役職を任されている」
「ああ。分隊長殿から聞いている。これから寄宿舎に向かう。ついてこい」
なんか強引だな。そして少し友好的ではない、敵対心を感じるぞ。
「…ま、いいか。お前ら、2列縦隊でついてこい。エミリアはその他の皆様をつれて俺達の後ろを歩いてくれ」
「その他っておい」
「まあ、そんな時間経ってないし。まだ覚えられないでしょ」
そんなこんなでフランツィスカと言う女騎士についていく。やはり監視を申し付けられているのか時々探るような視線を向けてくる。本人は気づかないようにやっているつもりのようだが見る者が見ればよくわかる。まだまだ青いな。
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フランツィスカ視点
何故私がこんなことを。
分隊長殿に呼ばれ、新な任務として仰せつかったのは寄宿舎への案内と余所者の監視、それとそれを偽装する為のリーダー格の世話。
何故私が。そんな風に思ったが尊敬する分隊長殿のご命令だ。完遂せねばなるまい。
それにしても…。
「うーん。羊羮にするかジャーキーにするか…」
こんなガキが分隊長殿より遥かに格上だと?
いや、分隊長殿本人が仰ったのだ。ならば、そう言う事なんだろう。
しかし。
「うん、間をとって氷砂糖にしよう」
「いやいやどこの間をとったん?それ」
配下と思しき女と談笑するガキ。少し観察するが体運びはまるで素人。分隊長殿は何故このガキをあそこまでかっているのだ?
そんなことを考えているうちに寄宿舎に到着した。今日からしばらくそこのガキどもと一緒に暮らすことを考えると気が重くなる。
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寄宿舎についた。寄宿舎は例に漏れず石作りで2階建てのそこそこ大きい建物が3棟並べて作ってあった。
「第3棟を好きに使ってくれと分隊長殿は言ってた。指揮官クラスの部屋はまた別だが他は部屋の作りは一緒だ。1階の右端が指揮官クラスの部屋だ」
「了解した。佐久間、部屋割りは任す。俺はその辺を見て回って来る」
「了解です。護衛として槇原を回します」
「と言う訳で来たで、隊長殿ー」
「ん。では行くか」
「おー」
「あ、そうだ。佐久間」
「なんですか?」
「実はな――」
「――なるほど。了解しました」
「よろしくな」
佐久間にもう1つ指示を出したあと、槇原を連れ、寄宿舎周辺を見て回る。寄宿舎は街の一番東側にあり、寄宿舎の西側にはそこそこの大きさの運動場がある。見ると何人かの騎士が剣を振るったり、弓を射ったり、変わったところでは魔法を撃ったりしている。
「なあなあ、隊長殿ー」
「どうした?」
少し坂になっているところから運動場を眺めていると、槇原が横に並んで小さな声で喋りかけてきた。
「なんであの騎士ついてきてるん?」
「ああ、恐らくじゃなくても監視なんだろうな」
そう、佐久間達から離れた辺りからフランツィスカが後ろをついてきている。隠れて尾行とかではなく2メートル程後ろを堂々とだ。恐らく世話をしながらそれに紛れて監視しろとでも言われてるんだろう。
時おりこっちを見てくる騎士達を無視しつつ、運動場を眺め続ける。時おり「なんで子供が?」とか聞こえるが気にしない。気にしないったら気にしない。
「どう思う?」
「練度はそう申し分ない思う。まあ火器類を所持してへんからうちらとまともに撃ちあったら軍配はこっちにあがるやろな。それと白兵戦の腕前なら一部を除いて向こうに部がある。そんな感じかなー?」
「ま、そんなことだな」
一通り眺め、運動場を離れる。武器庫に食糧庫、厩舎も揃っているなかなか優秀な駐屯地だな。
その後、佐久間達と合流し、部屋割りを発表。護衛をかねてまた槇原と一緒に行動することになった。




