毒の牙は本能の牙
「なにここ……」
央利は家族旅行で行ったホテルと大きく姿形が違うのに驚いた。
謎の小窓があるだけで、暗い室内。ボーイもいなければ、華もない。
ホテルと言うものを知らない竜清や瀬良太でさえ戸惑いを覚えている。
子供の声が聞こえたので幻聴だろうと受付の男が小窓から外を覗くと、本当に子供が三人いてあり得ない事に眠気とだるさが吹き飛んだ。
しかし、すぐにいたずらか冒険ごっこの延長で来たんだろうと思った。
ホテルに入るのはRPGごっこかも知れない。
追い出そうと玄関まで出てくる。
「あっ、オイラ知ってるぞ、あれ、ホテルのボーイって言うんだぜ!」
瀬良太がまるで珍しい動物を見るかのように言った。
「ボク達どこの子? ここは子供が来る場所じゃないんだよ」
「嘘だ、ホテルって書いてるじゃないか!」
休みたい竜清は噛みつくような形相である。
央利はこのまま追い出されればお金の節約になると考え、何も言わなかった。
「ホテルって……」
ラブホテルだよ、と男は心で叫んだ。
しかし、異様な三人組である。
一人は裸。もう一人は真冬のごとく厚着。額に汗が垂れている所を見ると無理して着ているのが伺える。
それにしてもこの裸だ! 男はとても興奮してきた。
少年愛者のこの男。ラブホテルに勤めているのは、男女の営みに全く興味がないからこそである。
「どこから来たの?」
央利が精神感応すれば、この男の毒の牙を見抜くことが出来たのだが、今は超能力の類は封印している。そして、この男のぎらついた目を怪しいと思うほど、央利達は人間というものを知らなかった。
「山の上からだよ!」
瀬良太が元気よく答えると、男は不吉な噂のある山からかと驚いた。
あの山には身寄りのない子供達を集めて、何やら怪しい実験をしていると言う。
子供をさらわれるからとにかく子供を近寄らせないようにしているし、大人でもうかつに行くなと言われている。
実際には超能力者の遺伝子を掛け合わせて人工的に命を誕生させているのだが、身寄りがないのは間違いない。
男は実際に手を出しても問題ない存在かどうかをそれとなく探る。
「もしかして黙ってここに来ちゃったの?」
そうであって欲しいと願いのこもった質問。
男は三人の顔を見比べ、どれが美味しそうなのか、大人しく言う事を聞きそうかを観察していた。
瀬良太の裸が興奮のきっかけになりはしたものの、それ自体が既に美味しい部分を半分見せてしまっていて、ときめきに欠ける。
竜清が何故厚着をしているのか脱がして確かめたいが、クソガキだなと思う。大人しく従いはしないだろう。暴力で屈服させて従順にしてしまうのはさぞや面白いだろうな、とは思う。
央利の方は大人しそうだが、警戒しているのかあまりこちらを見ない。今はいいが後腐れがあるかも知れない。
「うん、ナイショなんだ。ユニバースジャーニーごっこでね!」
見るからに頭の悪そうな瀬良太の言動に、こいつだったら大丈夫そうだな、と男は思った。
「じゃあ、泊まるところ、ないんじゃない?」
同情するように男は言う。
「そうなんだ。だからこのホテルに来たんだ」
なるほど話が読めた。要するに世間知らずの三人と言う訳だ。
このバカそうな裸だけじゃない、厚着も大人しそうなのも全部いただけるかも知れない。
千載一遇のチャンス。男は胸躍り、凄まじい行動力を見せた。
「子供だけじゃ泊まれないんだよ。どこのホテルも同じだよ」
「お金はあるんだ」
竜清は食い下がるが、男は優しく制した。
「ウチに泊めてあげるよ。お金も使わないし、お腹空いたろう、ごはんも食べさせてあげるよ」
この時点で怪しまないといけないのだが、央利は節約できると喜び、瀬良太はいい人がいて良かったと思い、竜清は堅い地面に眠らずに済みそうだとホッとした。
「少し待っててね」
男はラブホテルの支配人の下へ行き、親戚の子供が自分を追ってこんな所に来てしまった、家に連れて帰るから今日は上がらせて欲しいと言った。
子供が来たと言うサボる原因にしては嘘くさすぎると支配人はちらりと受付を覗くと、確かに子供が三人。
支配人は男に帰っていいと言った。
男の車に三人は乗った。
もう逃げられない危機的な状況だが、三人は呑気なものだ。
ドライブの歌を竜清は歌った。
歌が上手いのと、選曲が子供向けの歌番組で男の子供時代に聞いたことのある歌だったので、男は竜清をかわいいと思った。
「兄ちゃんは晴彦って言うんだ」
「オイラ瀬良太!」
「ぼく、央利…、です」
竜清は歌ってる。
「歌ってるのは竜清って言うんだ」
「あの子は歌が好きなの?」
晴彦が聞くと、瀬良太は笑った。
「いっつも歌ってるよ」
お世話になるなら竜清の歌う癖はそれとなく言っておく必要があった。
歌が終わると寝息が聞こえた。竜清はすっかり眠りこけてしまったようだ。
「あ、寝ちゃってる。竜清眠たがってたもんね」
釣られるように央利も眠る。明日のためにと言うのもあった。
晴彦と瀬良太は雑談を始めた。
瀬良太はヒーローの話をするが、晴彦が懐かしいと思うような番組ばかりで不思議に思ったが、瀬良太の警戒心をゼロにして事をたやすく運ぼうと瀬良太を愉快にする事ばかりを考えた。
晴彦の家まで着くと、竜清と央利は起こされた。
「こんなものしかないけど」
カップラーメンだった。だけど三人は珍しい食べ物に興奮して楽しく食べた。
出来上がる三分間の間、竜清はごはんの歌を歌った。カップラーメンだったので、ラーメンの歌だ。
晴彦は少し妙に思ったが、そんな事より三人と一緒に風呂に入ることを考えていた。
これなら自然に裸が見れる。しかし一人暮らしの風呂は狭い。
食事が済むと、竜清と央利が眠そうにする。
「ほら、布団に入りなよ」
万年床に晴彦は竜清と央利を案内した。
竜清は朦朧としていて、いつもの自分のベッドに入るように重装備を外した。
晴彦はギョッとした。不細工なぬいぐるみのようなその縫い目!
これを隠すためには、こんな厚着もするな、と晴彦は納得すると、手込めリストから竜清を外した。
晴彦は脱ぎ散らかした竜清の重装備をたたんでおいてやると、薄汚れた瀬良太の体を見て言った。
「瀬良太も眠い? でも、その汚い体じゃお布団には入れてあげられないなぁ」
これは下心なしに本心だ。瀬良太の体はヒーローごっこで転げ回ったせいで、薄く土や泥が付いている。ズボンも汚い。
「お風呂を沸かしてあげるから一緒に入ろうか」
「うんっ!」
瀬良太は一緒にお風呂と言うのに楽しさを予感して、明るくうなずいた。
お風呂が沸く時間が焦れったい。もう夜も更けてきて、瀬良太が寝てしまってもおかしくはないのだ。
今やってしまうかとも考えたが、それでは事が早すぎる。
体を舐めたいのだ。土が付いていては楽しめない。
瀬良太を寝させないようにと、瀬良太にビデオやゲームを勧める。
しかし、下山の疲れもあってか瀬良太はうとうととしてきた。
晴彦は風呂の湯加減を見る。少しぬるい。
ここで晴彦は閃いた。居間にはどうせ二人が寝ている。なら、この風呂場で事を済ませてしまえばいいのではないかと。
風呂場から呼んでも良かったが、二人を起こさないようにと晴彦は瀬良太をわざわざ呼びに行った。
「お風呂沸いたよ。眠いだろうけど、土付いてるから布団に入れてあげられないから、がんばろ」
「うん……」
瀬良太の服を脱がしてやる。ズボンは汚いので明日洗濯してやろう。
替えのパンツは……、それがあるのだ。この家に。男児用水着とブリーフが。
瀬良太のパンツをするりと下ろす。なんの抵抗もしない。
夢にまで見た光景はなんとあっさりしたものだろう。
「おぉ……」
瀬良太はまだ起きているのに、感嘆の声を上げてしまった。
「おー」
瀬良太は何故晴彦が感嘆の声を上げたのかまるで理解できなかったが、何かの遊びかと思って、とりあえずマネっこをした。
困ったことに晴彦のペニスは怒張した。
いや、困ることなどあるものか。これからする事を手短に説明するにはこの方が好都合だ。
『それなぁに?』と興味を持ってくれれば、これ以上自然に教えられる事もない。
しかし瀬良太は眠そうで、風呂に入らなければ寝てはいけないので、さっさと済まそうと風呂場へと行ってしまった。
晴彦も慌てて追うと、瀬良太の頭を洗ってやる。
夢のような光景だ。子供の小さな頭を、柔らかい髪の毛を今、自分のもののように扱って、洗ってやっているのだ。
次は体だ。ナイロンタオルはあるが、石けんを直接手につけて洗ってやる。この体を味わうのはナイロンタオルなどではない。
目にはいるからと顔は後回しにして、体を洗う。
腕から脇、脇腹からお腹。晴彦のペニスはぐんぐん怒張していく。
体を洗うのなんて面倒だと、晴彦は鬱積した欲望を発散させる事だけを考え始めた。
暴れても二、三発殴れば大人しくなるだろう。
目は血走り、心臓は激しく踊る。もう理性などいつでも捨てられる。
「明日しようよぉ」
だが、そんな晴彦に都合の悪い事を瀬良太は言った。眠たげな声は、悩ましげな声に聞こえた。
今我慢しろと言うのか。このいきり立ったものを押さえ込めと言うのか……!
しかし、もしかするとこの三人は浮浪児で、旅から旅へと転々として、その中で自分の体を売ると言う事を知っているのではなかろうか……?
でなければ、なぜラブホテルなどに来るのだろうか。
男の誘い方を知っているのではなかろうか。
もしかすると三人が相手してくれるのじゃないだろうか……?
晴彦に閃いた願望希望。
「三人でしてくれるの……?」
「うん」
瀬良太は驚く程ハッキリと言った。
もちろん瀬良太は今こうしている事を性行為だなどとは思っていない。
お風呂に四人で入る。そしてこのくすぐりごっこをやるのだ。
そんな認識。しかし、晴彦は大いなる勘違いをした。願望がそうさせたのだ。




