第1話 憂鬱な終業チャイム
キ~ン、コ~ン、カ~ン。
終業の鐘が鳴り、老教諭が「今日はここまで」と言い捨て、せっせと教室を後する。
「ねぇ、次はどこのダンジョンに行く?」
「あの糞オークめっ! ぜってぇ、ぶっ殺してやんぜ!」
「お願い! パーティに入って! マック奢るから! ね! ね!」
同級生が群れなし、次々と教室を飛びだしていく
(また、この時間がきた)
彼らを見送りながら、ぼく――御珠春空の口から漏れるのは、ただただ重いため息。
「帰りたい……」
しかし、帰れない。単位が不味い。
今週中にゴブリン十匹、オーク五匹を討伐しないと、今学期の単位はない、と意地悪な担任教師に断言されたのは、今からちょうど一週間前のこと。今日がその期日だった。
この一週間がんばった。
結果が、ゴブリン三匹に、オークが一匹……。
ちなみにオークの一匹は、瀕死の個体に運良くトドメをさせた、というものだ。
ぼくの実力ではオークと真っ当にやり合っては勝ち目はない。
(――誰かっ!)
パーティを組んでくれる奇特な誰かは……もちろん、いない。
「……はぁ」
ため息にため息を重ね、体重以上に重い体で立ち上がる。
目的の教習用ダンジョンまでは徒歩五分の距離。
たった五分の距離がただただ恨めしく思う今日この頃のぼくだった。
(――それでもっ!)
呪詛のように内心でそう呟く。
次のレベルアップでは能力値が爆上がりするかもしれない。
例え、ちょびっとしか上がらなくても……それでも能力値の条件さえ満たせば、「初級冒険者」から「剣士」や「戦士」にジョブチェンジできるかもしれない。
ジョブチェンジさえできれば、能力値にボーナスがつき、様々な役に立つスキルを覚えることが出来る。そしたら、誰も「無能オーク」なんて呼ばなくなるかもしれない。
「……やるしかない!」
何一つ確かなことはない。ただの妄想、はたまた見果てぬ夢か。
こんなぼくでも高校に入学した当初は誰からももてはやされたものだ。
身長185センチ、体重138キロ。
ずんぐりとした相撲レスラーのような体型で、俊敏性にこそ難はあるものの、戦闘を生業とする冒険者にとっては「恵体」と言っても過言ではない。
教諭からは未来のS級冒険者と期待されていたし、同級生からはうらやましがられ、何から何まで当てにされて、ゴブリンとの死闘を制したときは全員が狂喜乱舞した。
しかし、今はもう昔の話だ。
高校二年生となった現在、誰ともパーティを組んで貰えない。
ぼっちで、ソロだ。
とはいえ、ぼくが何か問題を起こしたとか、そういう話ではない。
――レベルが、上がらないのだ。
筋力同様、魔力は使えば使うほど強靱となり、それを数値化したものを「レベル」と呼ぶのだが、ぼくのレベルはびっくりするくらい上がらなかった。
普通の子が「5」上がる間に、ぼくは「1」上がるか、上がらないくらい。
おかげで、ぼくの「我が世の春」はたった一年で終わった。
ぼくはレベルが上がらないからいつまで経っても能力値はほぼ初期値。
一方、同級生はぐんぐんと強くなっていく。
当然の結果として、たった一年でほとんどの同級生に抜かれまくった。
……まあそれでもぼくを当てにしてくれる同級生はまだいた。
体格だけは立派だったからね、いるだけで何もしなくても魔物の注意を引けたし、盾を持てば一応は壁として役立った。
そこで付いたあだ名が「お助けオーク」。
某有名シミュレーションゲームで、序盤からいるパラディンが色々と助けてくれることから「お助けパラディン」と呼ばれるのだが、それにあやかったあだ名だ。
しかし、一年生の三学期になると、それもおぼつかなくなった。
壁役をしようにも魔物の攻撃はどんどん熾烈になるし、荷物持ちをがんばろうにも元々の鈍足が文字通りにパーティの足を引っ張る。
――無能オーク。
いつの間にか、そう呼ばれ、誰もパーティに入れてくれなくなった
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