リクルート
「いらっしゃいませ!勇者リクルートセンターへ…」
おぉ、やっとまともに歓迎してくれる人がいた。
「ハァ…ようこそ。用件は?」
とか思ってた時期が僕にもありました。なんだよホント。俺勇者だろ?
「いや、用件っつーか王様が行けって言うから…」
「あぁ、やっぱり百人目がこれかよ…」
小声にしても聞こえてんぞ、おい。
「あなた、名前は?」
「あぁ、ヒデオです」
「普通の名前ですね」
「何か悪いの!?」
「勇者ならもっとカッコいい名前とかないんですか?ファミリーネームは?」
「えっと、高橋」
「論外ですね」
「高橋に謝れよお前!!なんで高橋ダメなの!?」
「うるさい人ですね、だって高橋っていっぱいいるじゃないですか。じゃあヒデオ高橋さん」
「いや!高橋ヒデオ!間違ってないけど!」
ここの人間はどうしてこう手厳しいんだろう。俺は来たばかりで右も左もわからないと言うのに。
「どうせ何も知らないんですよね?」
「まぁ…知らないけど」
「…無能が。簡単に説明するので」
「今無能っつったろ!!お前無能っつったろ!!」
「黙って聞いてください。うるさいです」
「はぁ…」
「まず、この世界の現状についてざっくり説明しますんで、相槌も打たないでください」
「あ、はい」
「まずはこの世界の歴史から学んでもらいます。今から何百年か忘れましたがどえらい前です」
適当だなおい!!
「大昔から、魔王は存在しました。それで、魔王を倒すために勇者が現れました。お互いにいい感じに強さが拮抗していたんで、いい感じに勇者が勝って次の世代へ。みたいな感じだったんです」
いい加減な表現多いな…
「それからなんやかんやで、第六十六代魔王が滅茶苦茶強かったんですよね、ホントに」
なんやかんやって何!?
「それで、まぁ誰も勝てなかったんですよ。この時、かの有名な名言『いや、チートとかマジ萎えるわ』というものが生まれました」
ホントに勇者かそいつ!?
「そこで、当時の国王は異世界から勇者を召喚、地球の日本から来たというその勇者は、見事魔王を討伐しましたとさ、めでたしめでたし」
昔話みたいに閉めた!?
「まだ続きます。時は流れ第百代魔王がまたとんでもないチートでして。過去の全九十九の魔王復活させるし、勇者寝返らせるし、もう最悪でした、ホントに」
「困り果てた国王は、諦めずに一日一回の召喚チャンスに賭けて、毎日召喚しました」
一日一回って結構条件緩くね?
「まぁそんな訳で、今日が記念すべき百人目だったのに」
「いや!俺が悪いの!?」
「なんでもっとカッコよくないんですか。なんで最近の勇者は皆デブだったり、メガネだったり、出っ歯だったりするんですか?」
「いや、まぁ俺もメガネだし…」
「二百回の勇者に賭ける賭けるしかないか…」
「メガネってだけで!?」
「そもそも、なんでスウェットなんですか。装備は?」
「あぁ、もらったけど」
「早く着替えてくださいよ」
「今!?」
「ほら、早く早く」
「はぁ…」
仕方なく上半身を裸に。
「何いきなり脱いでるんですか、気持ち悪い」
「着替えてって言ったよな!?」
「服脱がないで着替えてくださいよ」
「どういうことだそれ!?」
結局、スウェットの上から着た訳だが。
「これさぁ、ホントに勇者の服なのか?なんかいかにも村人って感じなんだが…」
「よ、よく似合ってると思いますよ…ふふっ…くっ…」
「笑ってんじゃん!!」
「い、いえ。武器は…そうだ、まだ武器を見ておりません」
「お、おぉ。これが…」
確かに国王から受け取った道具には立派な鞘に納められた剣がある。
「伝説の剣か!」
スパァンと音がするほど、勢いをつけて剣を振り抜いた。
カランと音を立てて落ちる鞘。
やけに軽いな…
「え?っく…ふふっ…」
「割り箸…だと…!?」
「さて!装備も整いましたし、早速冒険の始まりですよ!」
「え!?いや、これ装備って呼べないだろ!?割り箸だぞ!?つーかあんた随分嬉しそうだなおい!」
「あんた、ではなく。私は鈴木って名前がありますよ。それでは早速行ってらっしゃい!」
「お前鈴木って高橋より多いじゃねぇか!!つーかこんな装備で大丈夫な訳…」
「大丈夫です、問題ありません!ほらワープ!」




