プロローグ
三次元ってのは、どうしようもなくクソだと思う。
大学受験には失敗するし、彼女は出来ないし。
なんだかんだで、俺は立派な引きこもりでニートという超ハイスペックな訳だ。
適度にネトゲをし、適度に動画を見て、適度にアダルトサイトを見て、適度にケルベロス速報を眺めるだけ。
我ながら、本当に情けないとは思う。まぁ、思うだけだが。
そんな訳で、今日もいつも通りケルベロス速報を眺めていた。
「特に面白そうなのは…ねぇな」
こうなると、また暇である。エロサイトでも見ようかとページをスクロールすると。
「来たれ、勇者!」
とだけ書かれている広告を見つけた。なんだこれ?初めてみたな。
好奇心とは不思議なもので、深く考えずに俺はすぐクリックしてしまった訳である。
その瞬間、俺の視界は暗闇に包まれた。
三秒くらい経ったか?視界が戻る。
すると、周りの景色がとんでもないことになっていた。
絢爛豪華、とか言うのだろうか。なんかとにかく贅沢感が半端じゃないのである。
「おぉ!そなたが…」
頭を上げると、20代後半ぐらいのイケメンがこれまた贅沢感のある服装で。
「勇者か…ハァ」
何故か溜め息をつかれた。一体何がなんだか。気がついたら自分の部屋じゃないし、勇者とか言われてるし、溜め息つかれるし。まるで意味がわからん。
「あのー…ここはどこですか?」
恐る恐る訪ねてみた。いきなり知らない場所とか、マジ怖いわ。つーかこいつ誰だよ。
「ここはベレシクル。そしてわしが国王じゃ」
外見に合わないジジィ口調で話す自称国王。
「さて、ようこそ勇者よー心底歓迎しておるぞー」
超棒読みで言われた。俺としてはいっそ、何も言われない方がマシだ。
「は、はぁ。どうも」
「よし、大臣。ちょっと来い」
「ただいま参ります」
大臣と呼ばれた小太りの男が走る。にしても…大臣に国王に勇者って、RPGじゃあるまいし…
そうか!これは夢だ!最近寝不足だったし、あの広告のせいでこんな夢を見てるんだな!
「…それにしても、これが本当に百人目の勇者なのか?」
「むぅ…確かになんとも頼りないですな」
目の前でひそひそと話しているつもりだろうが、二人とも声がデカイ。全部筒抜け。
「勇者よ!そなたの名前はなんと申すのじゃ?」
「えっと、ヒデオですけど…」
「勇者ヒデオよ!そなたには第百代魔王を討伐してもらいたい!」
「魔王…ですか?」
「という訳で、旅立つための装備と道具を用意した!」
おぉ、RPGっぽいな。確かにスウェットで冒険する方が無茶ではある。
「ありがとうございます、王様」
「さぁ、早速勇者リクルートセンターに向かうのじゃ!」
「え?」
「ここを真っ直ぐ進んで、出たら右じゃ。看板があるからわかるはずだ…はずじゃ」
やっぱり口調作ってんだな。素が出てたよ王様…
「はぁ、行ってきます」
かくして俺の肩書きは、引きこもりニートから勇者へとジョブチェンジしたのである。




