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On the run is

この魔法少女たち、危険につき……

「俺の部下は訳あり魔法少女3人!~傷心の女子を慰めたらハーレムに!?~1」

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CVFGWMFZ

 日が暮れた。


 潮風によって運ばれる生臭さは、止むことがない。


 内側にエネルギーシールドを張っていた女子2人は、むくりと起き上がる。

 真っ暗な部屋には、閉めているカーテンを通しての月光。


 港町のプロスルイスはそれなりの都市であるのに、外から聞こえてくる声や物音は少ない。


 空賀(くが)エカチェリーナは外出できる服装のまま、近くに置いていたリュックを背負い、半長靴のように頑丈な靴を履いた。


 開けたままのアタッシュケースの中をいじると、赤いデジタル表示が動き出す。


 小声で、自分のパートナーに催促する。


「急いでね?」

「……分かっているわよ!」


 支鞍(しくら)千波(ちなみ)も、すぐに外出できる格好だ。


 暗闇でも慣れた様子で、同じような靴を履いた。


 いっぽう、エカチェリーナは呟く。


「5人以上……。窓からにしよう」


「次から、チェーン店がない場所には行かないわ!」


 涙目の千波も、両足で立って、トントンと軽くジャンプ。


 下から押し寄せてきた足音は、どんどん近づいてくる。


 魔法で身体強化をした2人のうち、エカチェリーナは閉めている窓のほうを見た。


 ドン! ドンドンドンドン!!


 すぐに蹴破るつもりだったのか、戸惑ったあとに連打。


 薄いドア越しに、訛りの強い英語による罵倒が続く。


 エカチェリーナは魔法による空気の壁を形成して、ただ加速させた。


 いつ倒壊してもおかしくないホテルの外壁ごと、吹っ飛んだ。


 凄まじい音と土煙、さらに瓦礫の散弾が、向かいを襲った。


「Go!」

「……あー、もう!」


 走り幅跳びのように走り出した2人は、一瞬でトップスピードに達して、床を蹴る。


 放物線を描いた末に、向かいの屋上へ着地して、そのまま走り続ける。



 ◇



 ようやくドアを蹴り破った連中は、一斉になだれ込む。


 けれど、さっきのホテルを揺るがす振動や音で、外へ逃げたことは把握済み。


 街に住んでいる魚面の奴らは、なくなった外壁から外を見たまま、ギリリと悔しがる。


『知っていた?』

『どうせ、街から逃げられん! すでに配置済みだ!』


『あのバス運転手……。余計なことを喋ったな?』

『今は、どうでもいい!』

『裏切るつもりなら、昼に逃がしていたさ! 放っておけ』


 一通り言ったことで、ようやく落ち着いた魚人間たち。


『ともかく……。あいつらの荷物を調べるぞ?』

『スーツケースは、どちらも置き去りか』

『さすがに、持っていく余裕はないだろう?』


 魚人間の1匹が、動いている赤いデジタルに気づいた。


『おい! これは――』


 次の瞬間に、ホテルにできたばかりの穴を埋め尽くすほどの炎が噴き出した。


 海鮮バーベキューだ。

 お好きなだけ、どうぞ!


 アタッシュケースに仕込まれた爆弾だ。


 みづはがバス運転手に運ばせたアタッシュケースが、さっそく役に立ったのだ。


 若いときの実の母親に、どれだけ物騒な代物を持たせたんだ?



 ◇



 空賀エカチェリーナと支鞍千波は、待ち構えていた奴らを避けながら、脱出しようとするも――


 車のライトが横に並んで、ずっと照らしている。


 そのスキマを縫おうにも、小銃を持った奴らが立っていた。


「ダメだ! 鉄道の廃線のほうは、テクニカルまでいる!」

「あいつら、紛争でもする気?」


 テクニカルとは、オープンの荷台に重機関銃を設置した車だ。

 民間用を改造することが多く、なぜか日本車が多い印象。


 即席とはいえ、その有効性は正規軍を足止めしつつ、被害を出せるほど……。


 いくら異能者でも、ズラリと並んだテクニカルや小銃には勝てない。


「どうするの? 私たちが乗ったバスの道路を行く?」

「……そちらは、もっと危険だろう」


 エカチェリーナは、アタッシュケースに入っていたタブレットにより、1つの個所を指さした。


「私たちは、海の魔法師(マギクス)だ! 奴らがその情報を知る前に、海上から脱出する。ただし、ストレートに行くわけにはいかないから……」


 考えつつ、もう使われていない採掘場の跡地を示した。


「ここを突破して、人がいない沿岸からボートか何かで脱出しよう! 上手くいけば、歩いてプロスルイスの外だ」


 その作戦に穴がないか? を思案していた千波は、腕を組んだまま。


「いいと思うわ……。天然の洞窟があるのね? 海蝕か」


「人が入れるかは不明だが、強引に突破するしかないだろう? 魔力が尽きるのが先か、それとも、無事に朝日を拝めるか」


 エカチェリーナは、反対がないことから動き出した。


 千波が続く。


 日が昇った時点で脱出できなければ、詰み。

 チャンスは、今晩だけ!


 その海蝕洞窟こそ、ディゴン秘密教団の本拠地だが……。


 女子2人には、知る由もない。


 包囲している奴らも、そちらは手薄。

 あくまで、外へ逃げられるルートを潰しているだけ。


 最初に魚雷を撃たれた巨大サメ、未来の娘が乗っている潜水艦、置物になっている巨大ボール、そして魚面の邪神教団……。


 分かっているのは、失った荷物の買い直しで出費があることだけ。


 現代の魔法は、果たして魔術に対抗できるのか!?

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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