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【完結】大学生になった重遠は全盛期!~未来の娘と紡ぐ室矢家の伝説~  作者: 初雪空
第五章 政治がクラウドソーシング化する時代
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逃亡犯のような引っ越し歴

女子だけの剣術大会と、水着が似合う南国の海!

どちらも、命を落とすほどに刺激的!?

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 お目当ての車に近づくも、その近くに警官が2人いた。


 どうやら、路駐で違反切符のようだ。


「すみません!」


 歩きながら叫べば、年配の警官が振り返った。


「……これの運転手? 放置駐車違反だから――」

「警視庁の室矢(むろや)です! 特命で動いています」


 片手で上下に開いた警察手帳をかかげたら、彼はギョッとした。


 食い入るように上の写真を見た後で、慌てて敬礼する。


「し、失礼しました! 原田(はらだ)、やめろ!! これは捜査車両だ!」

「……えっ? ちょっ、ちょちょっ!」


 フロントガラスに黄色いステッカーを貼ろうとする警官は、よっぽど集中していたらしく、その寸前で決めていた両手を止める。


 年輩の警官が声にならない叫びを上げる中で、ギリギリの停止。


 気まずい雰囲気だが、待っている暇はない。


「急いでいるので……」

「はい! 聞いております! 引き留めしてしまい、大変申し訳ございません! 原田!」


 呆けていた警官も、慌てて敬礼する。


「失礼しました!」

「……御二人とも、ご苦労さまです。俺たちは行っても?」


 ブンブンと首を縦に振った年輩の男は、頭を深く下げた。


「はい、お気をつけて!」


 俺の後ろに立っている天ヶ瀬(あまがせ)(うらら)が、ポツリと呟く。


「ステッカー……」

「い、いえいえ! 次に使えばいいので!」


 使える放置駐車を急いで見つけるのか……。


 息を吐いた俺が、締めくくる。


「特命ゆえ、こちらの名前を出したくありません。そういうことで……」

「承知いたしました!」


 周囲の注目を浴びながら、俺は運転席に、女子2人は後部座席の左右から乗り込んだ。


 警官コンビが、交通誘導を始めた。


「カペラ? この2人に悪いから、すぐに出してくれ」


 可愛い女子の声が、スマホから流れた。


『どこへ向かうの?』


「ひとまず、下の道路で流してくれ」

『りょー!』


 ウィンカーを点滅させて、黒い高級車は走り出した。


 四方のガラスを通しての景色が、どんどん変わっていく。


 俺はスマホをダッシュボードのホルダーに差し込みつつ、命じる。


仲四氏(なかよし)真琴(まこと)の金の流れと、現住所は?」


『国内と海外に証券口座があって、主にそこ! 現住所は……新築タワマンの一室だけど。都内での引っ越しの履歴がすごい!』


「どれぐらいだ?」


『ざっと、20以上! それも、この数年で!』


 後ろで、女子2人が呆れた気配。


 未来の娘である天ヶ瀬まりんは、言い捨てる。


「怪しい……という次元ではありませんわね? 今のうちに、私たちの呼び方を決めておくべきでは?」


「そうだな! 俺と(うらら)とカペラは、名前で呼び合っている。お前は?」


「室矢さん、天ヶ瀬さん、カペラさんとお呼びします! わたくしのことは、『まりん』と呼び捨てで」


 ビクッとした天ヶ瀬麗が、恐る恐る、確認する。


「えっと……。名字か、さん付けのほうが――」

「どうか、まりんとお呼びください」


 上品に言われて、借りてきた猫のように、ハイと答える麗。


(自分の未来の母親から、よそよそしい呼ばれ方は、嫌だよな……)


 そう思いつつ、指示を出す。


「じゃあ、まりんと呼ぶぞ? 今日だけで、住所の履歴を追いかける! 都内に限定するが、ほぼマラソンになるだろう」


 眉をひそめた『まりん』が、バックミラーに映った。


「時間が足りないのでは?」

「壁抜けする! 警察の監視チームに教えるために、スマホの位置情報は俺だけオープンにするから」


 ゲートによる瞬間移動をしないのは、そのためだ。


 納得した『まりん』が、隣に座っている麗を見た。


「それでいいですか? 天ヶ瀬さん……」


「う、うん!」


 コクコクと頷く麗が、可愛い。


「今から、俺のスマホは位置情報をオープンにする! ……室矢です。今から都内にある仲四氏の住所を古いほうから追います。スマホの位置情報で、そちらへの途中経過としますので」


『警視庁のサポートチームです。仲四氏の足取りを追うこと、了解しました! スマホの位置情報、現在は……3号線の六本木駅を通りすぎたぐらいで?』


「はい! 電話は、これで切ります」


『ご用がありましたら、いつでもどうぞ! 失礼します』



 ◇



 俺を先頭に、ギシギシと鳴る床を踏みしめつつ、木造の階段を上る。


 角から覗けば、人の気配はなく、薄暗い内廊下だけ。

 左右には、引き戸が規則正しく並ぶ。


 ズボンの前にあるグリップを意識しつつ、とある引き戸に両手をかける。


 ガタガタと音がしながらも、出入りする空間ができた。


 鍵すら、かかっていない。


 昼でも暗い場所に入ってみれば――


「何もないな……」


 遅れて、女子2人も、ハンカチで口を押さえつつの入室。


「何もありませんわ……」

「本当に、人が住んでいたの?」


『少なくとも、住民票の履歴ではね?』


 スマホのスピーカーで、カペラの声がした。


(一番古い場所で、これか……)


 今となっては廃墟だが、それでもショボい構造。


 管理人どころか、他の住人すらいない。

 それも、見ただけで分かる。


「警察が匙を投げるはずだ……。コンテナハウスのほうが、立派だな?」

『現住所のタワマンを除いて、詳細が分かったよ!』


 全員で俺のスマホをのぞき込めば、残り19ぐらいの物件リスト。


「取り壊された四畳半、都内にある戦中からの木造……」


「現存しないか、悪だくみをする場所ではありませんね?」

「お金をばら撒くわりに、自分はとんでもない場所に住んでいたの?」


 首をひねっている女子2人を追い立てて、車に乗り込んだ。


「カペラ! 今のタワマンに向かってくれ!」

『りょ~』


 ダミーか、心を病んでいたのか、それとも、自分が狙われる心当たりがあったのか……。


 今の住所であれば、何らかの手掛かりを得られるだろう。


 他は、時間のムダだ。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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