命は大事だから、ちねぇええええっ!
澪は、ついに室矢家と会った!
いっぽう、誰にも知られないままで進んでいく、日本滅亡!?
同時進行する状況に、ついていけるか?
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呆れ果てた笹西新太ことハイドネウスは、吹き飛んだ倉庫跡で日光に照らされつつ、髪をかき上げた。
低いイケボで、語り出す。
「そのギアは、君の最高傑作である瞬く星々じゃないか……。今のボクは、神話時代とは違うのだけどね? 高次元で望んだ未来を選べるチートを持ち出してくるとは、本当に大人げない」
「うるさいです!」
白い騎士となったカレストゥーナは、すかさず突っ込んだ。
ため息をついたハイドネウスが、さらに指摘する。
「だいたい、神話時代にも君は守護者と称して、若い男を囲っていたじゃないか」
「うるさぁあああああいっ!」
知的でお淑やかな美女が、絶叫した。
わりと子供っぽい性格だな? と思う、ギャラリーの槇島睦月。
ハイドネウスが、ついに逆鱗に触れる。
「聞いたよ? 自分の寝室でテオフィルを露骨に誘ったが、断られたそうじゃないか! そんな言動だから――」
睦月は、その時にバチンッと、何かがキレる音を聞いた気がした。
案の定、カレストゥーナが小さく震えながら、笑い出す。
ほぼ同時に、片手に長い槍も出現する。
「フ、フフフ……。あなたと一緒にテオフィルが消えてから、時間だけはあったんですよ? だから、これを作ったんです」
黄金色のような輝きを放つ槍を立てたカレストゥーナは、説明する。
「これはね? あなたへの対策として、1万年以上もかけて作り上げたんですよ♪ どうせ殺せないから、どんどん遠くへ飛んでいくように」
「君にそこまで想われていたとは、光栄だが……。遠慮させてくれないか?」
ハイドネウスは、引きつった顔。
動物病院の待合室にいるペットと同じだ。
いっぽう、カレストゥーナは満面の笑みだ。
目だけ笑っていないけど。
「自動次元跳躍槍……。そんなに別世界へ飛ぶのが好きなら、その願いをかなえて差し上げます」
「頼むから、人の話を聞いてくれ」
諦めたハイドネウスの抵抗は、カレストゥーナの投擲モーションにさえぎられた。
「他の女に譲って順番を待つのなら、構いません。テオフィルは、モテますからね? しかし、男にとられたら、もう立ち直れません!」
それが本音か、と思う、睦月ちゃん。
カレストゥーナは、やり投げの選手のように投げつつ、叫ぶ。
「あなたであろうと、命は大切なもの! ゆえに、この神造武器で追放します! 死ねぇええええええっ!!」
せめて、その発言の中では矛盾しないで。
心の中で突っ込んだ睦月は、奥襟をつかんでいる西永和一を地面に引き倒しつつ、自身もうつ伏せに……。
表現できない音と光が荒れ狂い、空間が歪み、破裂する音が響く。
やがて、バチバチと感電しているような音と、一部に歪みが残った空間が残った。
顔を上げたら、カレストゥーナと目が合った。
「ああ、うん……。要するに、神格みたいなもの? ちょっとスケールが大きいけど」
「……そうです」
カレストゥーナの返事に、睦月は息を吐いた。
「よく分からないけど、その姿が本当で、カレナの姿になっているのは事情があるんでしょ? いいよ、黙っておく! この世界では、僕たちのデータリンクもないし」
「感謝します……」
そして、唖然としたままの和一を見る。
「あなたには、ご迷惑をおかけしました」
「……い、いえ」
何を言おう? と悩んでいる和一に、カレストゥーナが告げる。
「室矢重遠は、私が助けます……。ここの警察に絡まれても面倒なので、私たちはこのまま元の世界に帰ります。迷惑ついでに、願いがあれば聞きますが?」
いきなりのことで、混乱する和一。
「だったら、俺も一緒に……」
連れて行ってくれ、と続けようとした後で、言葉を切った。
気になっている二条冴は、そちらの世界の未来にいるのだ。
そもそも、上流階級にいる彼女に、俺が身一つで行ったところで……。
住んでいる世界が違う。
それを痛感した和一は、深呼吸をした。
「いえ、何でもありません……。お気をつけて」
「重遠達が世話になったこと、あなたのゲーム会社が潰れたことの清算で、1つアドバイスをします! プライドを捨てて、小波三奈に頭を下げてみては? どうするにせよ、相談できるのは彼女だけのはず」
「なぜ……。いえ、ありがとうございます」
和一が顔を上げたときに、カレストゥーナたちの姿はなかった。
じりじりと照り付ける日差しの中で、慌てて立ち去りつつ、途中の自販機でジュースを買っての一気飲み。
冷えすぎた液体と、炭酸が下りていく。
「俺も……。せめて、高校を卒業した資格はとらないと!」
二条さんとは、二度と会えない。
それを実感しつつ、あのレベルの女子とも縁がないだろうと覚悟した。
社会のレールを外れたことで、苦労することも。
「だけど、二条さんに『お元気で』と言われたものな……。今は、前に進まないと」
◇
未来に戻った二条冴は、母親の二条菫に抱きつかれたまま。
大泣きする菫に、困り果てていた。
「よかった゛あ゛~! 重遠さんに襲われず、貞操も無事で、本当によか゛っだー」
自分の父親が襲ってきそうな場面がなかった冴にしてみれば、オーバーそのもの。
離してくれない母親に、ふと思う。
(西永くん、大丈夫かな?)
未来の室矢カレナによれば、それなりに生きている、と投げやりな返事だった。
駆け落ちのように会う気はないため、この話は終わり。
だが、箱入り娘の冴にとって、初めての気になる男子だった。
それもまた、事実……。
過去作は、こちらです!
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