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ゲーム制作会社(倒産済み)へようこそ!

召喚儀式は終わった。

室矢重遠が気づかないうちに……。


そして、咲良マルグリットの姿もない。


5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!

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 二条(にじょう)(さえ)と一緒に、高級カフェから出た。

 その瞬間、クラッとする感覚。


(来たか……)


 大通りの歩道に出るはずが、会社の事務所のような屋内だ。

 事務デスクが並んだ列と、その上にあるパソコン。


 奥まった壁には、小さな四角に区切られた扉のない棚が壁づけ。

 その上に外の景色が見える窓も並ぶ。

 まだ明るく、昼と思われる。


 俺たちは、出入口であろうドアを背にしたまま、立ちすくむ。

 当然ながら、そこにいる人間が注目した。


 ぜんぜん怖くない私服の女が、こちらに近づいてくる。


「……どちらさんで?」


 思案していたら、隣の冴が慌て出す。


「え? え? ここ、どこですか!? 私たち、カフェから出てきたはずで――」

「およ? それ、PGU? ちょっと見せて!」


 PGUとは、ポータブル・ゲーム・ユニットの略だ。

 前世の俺が熱中していて、冴が持っている携帯ゲーム機のこと。


 棒立ちの冴は、反射的に持っていたPGUを渡した。


 両手で側面を支えた女は、慣れた手つきで、パチッとメインスイッチを動かす。


 立ち上がった画面を見て、1人で納得した。


「あー!【花月怪奇譚(かげつかいきたん)】のファンね……。確かに、ウチで作ったゲームだけどさ?」


 苦笑しながら、主電源を切ったPGUを戻してくる。


 視線を送れば、我に返った冴が慌てて受け取った。


 いっぽう、女子大生にも見える女は、指でほおをかく。


「お恥ずかしい話だけど……。ウチ、倒産しちゃってね? 今は、残務処理をしながら、終わった人から退職してんのよ! 放り出して逃げた人もいるけど」


「「え?」」


 未来の娘である冴と、声がハモった。


 息を吐いた女が、提案する。


「そういうわけで! 普段なら五月蠅い機密保持とかはないんだ! 時間あるんだったら、少し話を聞いてく?」



 ――5分後


「ここは賃貸で、資金繰りがイカれて追加融資も受けられない。で、社長が倒産を決めたわけ!」


 ゲームプランナーの小波(こなみ)三奈(みな)は、あっけらかんと告げた。

 若いと思ったら、まだ20代半ば。


 プランナーは企画立案から進行の管理で、ADアシスタント・ディレクターに近い。

 聞けば、業界として未経験の募集はなく、本人はグラフィッカー上がり。


 株式会社エーテルハートの事務所は、10人のデスクがあるかどうかの空間。

 使い古されたオフィス機器が鎮座する。


 給湯スペースでお茶を入れてくれた三奈は、愚痴を言う。


「大学時代のバイトから入って、そろそろ身の振り方を考える時期かな? と思っていたし。ちょうど良かったよ」


 見かねた冴が、叫ぶ。


「で、でも! 新卒で入った会社を辞めたら……」


 キョトンとした三奈は、次の瞬間に笑い出す。


「アハハハ! そっか、普通はそう思うよね? この業界にいると麻痺するよ、そういうの! 離合集散が当たり前だったから」


「えっと……。あ、あの、ごめんなさい!」


 片手を振った三奈は、すぐに応じる。


「いいよ、別に……。【花月怪奇譚】の携帯ゲーム機への移植で、ウチも勘違いしちゃったんだろう。元々、細々とやっていたエロゲ会社だったのにさ!」


 固まった冴が、おずおずと尋ねる。


「何を……作っていたんですか?」


 やめろ、冴!

 そこから先は、地獄だぞ!?


「お? 興味ある? うーん、データ入っていないかな?」


 嬉々とした三奈が、近くにある端末を立ち上げた。


『や、やめて! 誰か助けて!!』


 女のキャラが大量の触手につかまり、埋もれていく。


『や゛だ……』


 妙に描きこまれた触手の群れに、美少女が呑み込まれた。

 全てを塞がれた彼女は、逃げることも許されない。

 ウネウネと動く物体が占領していき、中から蹂躙され続ける。


 しかも、何を考えているのか、モザイクがない……。


 感慨深げに、三奈が頷いた。


「これ、グラフィックを完成させるのに苦労したんだ……。光沢の具合なんか、今見ても惚れ惚れする――」

 ドタンッ! パアンッ!


 倒れる音に、何かを叩く音。


 俺がそちらを見れば――


 目を丸くした冴が、床に倒れていた。


 2つ目は、柔道の受け身っぽく、片手で床を叩いた音のようだ。



 ――10分後


 即席のベッドを作っていたが、冴は上体を起こす。


「ご、ご心配をおかけしました」

「普通の女子高生が見たら、気分悪くなるよね? ごめん! 仕事で慣れてて、うっかり」


 平謝りの三奈。


 それに対して、冴は気持ちが悪いようだ。


「いえ、車酔いみたいな感じで……。もう大丈夫です」

「化粧直しに行く? 付き添ってあげるから」


 女2人は、出ていった。


 Hなのはいけないと思います! どころか、気分が悪くなった……。


 後で冴に聞いて、そのHイベントの女キャラに感情移入をしすぎた結果、まるで自分がされているように感じたと分かるが、それはまた別の話。


 1人で待っている間に、【花月怪奇譚】のクレジットを見る。


(小波三奈の名前もあるな……)


 カレナに近い存在が、このゲームを利用しようと(たくら)んだ。

 ならば、この会社で制作スタッフに混ざるのが自然。


 別の世界をなぞったのであれば、疑うべきは――


 ガチャッ


「お待たせ!」


 2人で戻ってきた三奈に、尋ねる。


「この【花月怪奇譚】のシナリオライターは、誰ですか?」

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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