相容れない存在
明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。
4巻目は、ついにバトルへ!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD2BFM7R
血だらけのワイシャツでスーツを着ている吉見は、壁に背を預けて座り込んだまま、顔を上げた。
肌を焼いたときの臭いが漂う住宅の中で、強面を歪ませる。
本人としては、笑ったつもりか。
「とりあえず、礼は言っておく……。おかげで助かった」
向き合ったまま片膝をついている梁愛花莉は、無言で片手を差し出した。
手の平を上に向けている。
「取り上げた銀の弾丸……セミオートマチックを返しなさい。さっきの連中は、すぐに戻ってきますわよ?」
そっぽを向いた吉見が、とぼける。
「あいにく、ここへ来るまでに落としちまってな……。すまん」
雰囲気を変えた愛花莉は、もう一度だけ、繰り返す。
「同じことを言いたくありません。シルバー・ブレットを返しなさい! お前のくだらない駆け引きのために使うのは、絶対に許しません!」
床に座り込んだままで、吉見がまっすぐに見つめ返した。
「それは、こっちのセリフだ……。お前がもっと早く俺たちに協力していれば、明大の自汰教授だけではなく、その研究室の学生も迷い込まずに済んだかもしれないんだぞ!?」
シルバー・ブレットという箒があれば、事件に魔法師が関係していた証拠となる。
巻き込まれた男子も、証人だ。
「梁あかり……。確か、そうだったな? 同じ名字でそのキャンパスに住んでいる学生の梁有亜にも、事情を聴かせてもらうさ」
「お母さんを巻き込むつもり……」
愛花莉が感情的になれば、自汰教授の研究室にいる男子、草道が割り込む。
「ちょっ! ちょっと待ってください! 今は、そんな場合じゃないでしょう!?」
ようやく自分のペースにできたタイミングとあって、吉見は心の中で罵倒した。
宥め役になるつもりだった女刑事、八代沙矢も、肩透かし。
ここで、とにかく情報を引き出したい刑事コンビと、自分が助かりたい大学生の温度差になった。
大きく息を吐いた吉見は、宣言する。
「この応急処置と、さっきの氷柱を見る限り、お前は魔法を使えるだろう? 銃を返す必要があるとは思えない。……今は非常時だ! 魔法の不正使用については擁護しよう。約束する」
恩着せがましく言われたことで、愛花莉は深呼吸。
笑顔を作り、言い返す。
「帰れるといいですわね? では、失礼」
「あ、愛花莉ちゃん! 少し待ってくれるかな?」
立ち止まった女子は、不機嫌そうに振り返った。
草道は刑事2人に向き直り、早口で言い切る。
「ここへ逃げてきた近藤は、どこですか? あなた達が追跡したと思いますが」
少し間があって、座り込んだままの吉見が答える。
「この住宅へ入ったところまでは、見たぞ? 俺たちも突入して、すぐに探したんだが」
「いなかったのよ、どこにも!」
沙矢が、結論を述べた。
彼らが話している間に、愛花莉は魔法によるサーチを終えた。
「その方は、もう別の場所へ移動しましたわね……。運が良ければ、自力で脱出するでしょう」
言っている本人が、その未来をまったく信じていない様子。
「一応、その痕跡を見ておきます?」
「あ、うん!」
草道は、慌てて返事をした。
スタスタと歩き出した、ブレザーの女子高生についていく。
「いったい、どこに――」
吉見の声が追いかけてきたが、無視する愛花莉。
1階から地下室に通じる階段。
その入口で、愛花莉は途中まで溜まっている泥水を眺めた。
「錯乱していたか、モンスターや特殊部隊に追われたか……。よりによって、こことは」
ただでさえ薄暗い室内で、地下室へのルート。
「暗いし泥水だから、全く中が見えない……。確かに、こんなところへ潜ろうとは思わないよ、普通!」
隣に立つ草道も、呆れている。
ふーっと息を吐き、仲間のことは諦めたようだ。
着衣水泳の難易度は、想像を絶する。
水の抵抗が大きすぎて、まともに泳げず。
さりとて、ウェットスーツなしの裸では、体温を失って終わり。
視界ゼロの水中は、洞窟のダイビングと同じ。
内部の構造も分からず、下手をすれば、海水と真水が混ざっていて浮力も変わる、死に一番近い場所。
「あの……。本当に、ここへ潜っていったの?」
見張りのつもりか、沙矢もいた。
愛花莉は、彼女も無視する。
当たり前だ。
1階を歩く2人は、最終確認をする。
「ここから移動しますわよ? 覚悟なさい」
「ああ……」
その時に、野太い声が響く。
「八代も、連れて行ってくれないか!?」
息を吐いた、愛花莉。
いっぽう、その八代沙矢は血相を変えて、吉見のところへ走っていった。
それを見届けた愛花莉は、草道に告げる。
「私から絶対に離れず、タイミングも合わせなさい! さもなければ、あなただけ別の場所に飛ばされますわよ?」
「わ、分かった!」
言いながらも、吉見を見捨てないと思しき沙矢の大声を聞いて、物言いたげだ。
喧嘩をしているような会話を耳にした愛花莉は、あっさりと告げる。
「あの女刑事も残りたいようですから、好きにさせますわ。あなたは?」
「一緒に行くよ、もちろん!」
2階に上がり、とある部屋のクローゼットを開けた先に踏み出せば――
そこは、引っ越しが終わった後のオフィスのような室内だった。
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




