まさに愛花莉の独壇場
明らかになった、召喚儀式の実行犯。
今日、ベル女で召喚された存在によって世界が終わる。
4巻目は、ついにバトルへ!
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次元振動研究室の草道は、梁愛花莉に話しかける。
「ここは、どこなんだい?」
「あなた方の研究を実現したゲート……。それによる、私たちの世界と重なっていた宇宙の1つ」
「マルチバース理論? しかし、本当にあったのか!」
呆れた愛花莉は、嬉しそうに叫んだ草道に突っ込む。
「お気楽ですわね? ご友人は心配にならないので?」
「近藤のこと? もちろん、心配だけどさ……。さっきの岡部を見た限り、ここに長くいるか、何らかの条件を満たすと化け物に変貌するんじゃ――」
理系らしく、考え始めた草道に、愛花莉が繰り返す。
「近藤さんについては?」
「……ああ、ごめん! 友人ではあるけど、同じ研究室だから嫌でも仲良くするしかないっていうか」
思わず本音を喋ったようで、気まずい雰囲気に。
それを見た愛花莉は、察する。
「合う合わないがあっても、選択の余地がない。それに、研究室が持っている就職の枠を取り合うライバルだし、このまま残れば、研究職の数えるほどの席を巡っての奪い合い、ですわね?」
「あ、うん……。そうだけど……。君、本当に女子高生? 少なくとも、その発想は理系だね」
拍子抜けした草道が言えば、愛花莉は提案する。
「理系ですわ! 最初の話に戻りますが、あなたの帰りたいという希望に沿って動きます」
「本当かい!? 助かるよ、ありがとう!」
大喜びの草道に、愛花莉が釘を刺す。
「私の指示に従うのはもちろんですが、保証はいたしかねますわ」
「ま、そうだろうね」
2人でトウモロコシ畑の土道を歩きつつ、草道は問いかける。
「聞いていいかな? どうして、自殺を?」
「……より正確に言えば、私はもうすぐ消滅します」
驚いて愛花莉を見るも、彼女は胸元に新しいペンダントを輝かせつつ、前を見たままで続ける。
「父親はともかく、母親があそこまでお花畑の住人とは……」
長く息を吐いた後で、言い捨てる。
「お父さんに我慢させるのも、どうかと思いますし」
最初に会ったときに話したように、複雑な家庭のようだ。
そう思った草道は、話題を変える。
「近藤と、それを追跡した刑事2人が行った方向だけど?」
「彼らは、敵ではありませんわ! 他国の特殊部隊と遭遇するよりは――」
タタタタ! パンパンッ!
乾いた発砲音が続いた。
立ち止まる2人。
愛花莉は魔法師としての魔法で、ソーナーのように瞬間的な探知。
アクティブソナーを思わせる感じだ。
「……あの白い住宅の中で、銃撃戦ですわね? 二種類の発砲音から、片方はどこかの特殊部隊で、残りは刑事2人のどちらか」
「行く場所を変える?」
首を横に振った愛花莉は、全く違う方向を見た。
「すでに狙われています……。行きますわよっ!」
身体強化をした愛花莉が、地面を削りつつ、草道の襟元をつかみ、そのまま加速。
入れ違いのように、キュアアアッと空気を裂き、ライフル弾……いや、対物ライフルの瓶を思わせる弾丸が回転しながら飛んでいく。
ドンッ!
先ほどまで、愛花莉が立っていた土道。
その近くが破裂した。
舞い上がった土が落ちる頃には、愛花莉は白い住宅へ近づいている。
ギャグ漫画のように引っ張られたままの草道が、叫ぶ。
「こ、この住宅にも、特殊部隊がいるんだろ!?」
「突発的な戦闘になった場合は、いったん退くのがセオリー! ほら?」
フォーメーションのまま、外に飛び出した特殊部隊のグループは、一瞬で出現した愛花莉に驚いた。
さらに、彼女を追いかけてきた、対物ライフルの連射も……。
その銃撃を押し付けるように、愛花莉は草道を片手で引っ張ったまま、屋内へ。
被弾したのか、苦痛の声を上げる男。
応戦する、他の男たち。
入った愛花莉が、内側からドアを蹴って閉めれば、銃撃音は遠ざかっていく。
「はい、ご苦労様……。せいぜい、潰し合ってくださいまし」
ようやく床に降り立った草道は、へたりこんだ。
「ハアハアッ……。ここは、安全なのかい?」
薄暗い室内は、やはり海外の間取りだ。
土足のままで歩き回るため、段差はない。
いっぽう、愛花莉は、肩をすくめる。
「たぶん……」
ダダダと走ってくる音に続き、靴底が床を滑り、服のすれる音。
「Don't move!(動くな!)」
両手でセミオートマチックを構えたのは――
「あなた達……」
女刑事の八代沙矢だ。
ドッと疲れた様子で、銃口を下げた。
「奴らは?」
「遠くへ行きました。じきに、再襲撃ですわ」
銃をホルスターに仕舞った沙矢は、さっきとは正反対の態度だ。
「あなた、回復の魔法を使えるかしら? 血を止めるだけでもいいわ! お願い!」
息を吐いた愛花莉は、結論だけ言う。
「さっきの銃撃戦で負傷した? 見せなさい! あと、次からは警告せずに撃ちなさい。特殊部隊が相手だと、死ぬわよ?」
壁を背にして座り込んでいたのは、沙矢とコンビを組んでいる男刑事、吉見だった。
低く呻いており、弱々しい感じだ。
近づいてきた面々を見て、自嘲する。
「お前か……。俺を笑いに来たのか?」
愛花莉は正面から吉見と向き合い、彼のワイシャツのボタンを外し、大きく開いた。
血が流れている小さな穴が、むき出しに。
「銃傷ですわね? 傷口を焼いて止血します」
「あなた、医師免許は!? 止血帯で縛ってちょうだい!」
ヒステリックに叫んだ沙矢に、声だけで返事。
「それだと、間に合いません……。とにかく止血する!」
「ぐうううっ!」
止める間もなく、吉見が大きく呻いた。
愛花莉が、今にも銃口を向けそうな沙矢を見た。
「全ての銃傷の表面に、海外の法執行機関で採用されている止血キットと同等の効果を及ぼしました。最低限の処置は、これで完了しましたわ」
息を荒げている吉見が、焼かれた穴を触りつつ、弱々しく言う。
「俺は大丈夫だ……。落ち着け、八代……」
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