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シューの「塩」魔法

 

「じゃあ、次。塩でやってみようか。ヘレナさん、お願いできますか?」

「少々お待ちください」

 

 ヘレナヘケトが塩を持って戻ってくると、守生は続けてドムトートにお願いする。ドムトートは小皿に盛られた塩の上でアメガワンドを回した。角度、速度ともに守生が教えた通りに行なう。

 

「じゃあ、先に何もしてない方を舐めて……」

「いやっす! 美味しいのだけ舐めたいっす!」


 アベルアヌビスの言葉に、一同が頷く。


「え……それだと実験にならないんだけど……」

「しゃあねェ、俺が代表して舐めるからァ」

「ドムさん、男前ーっ!」

「茶化すなってのォ」

 

 ドムトートが通常の塩を指に付けて舐め、顔を顰める。

 

「じゃあ、アメガした塩をどうぞ」

 

「なんか甘い!? 塩なのにーっ!」

「ほのかに甘い……うめェ。これだけでワインのアテになるなァ」

「苦味や雑味が消えたおかげで、なんとも上品なお味に……」

「あの、本当ですね……」

「うん、確かに美味しい! シュー様すごっ!」

「おいしー?」

 

 アリーアヌビスだけは首を傾げているが、味の違いだけは分かったようだった。

 

「シュー様!」

 

 ヘレナヘケトの目が爛々と輝いている。守生はたじろぎながらもどうしたのかと尋ねる。


「是非これを、量産していただけませんか!?」

「えーと、どれくらいですか?」


(王様の料理に出すくらいならできるかなぁ……)


「貴族や王族用の輸出品にすれば、すごいことになると思うのですがっ!」

「いや、無理です……。そこまで暇じゃありませんし」

「では奴隷にさせてはいかがでしょうか!」

 

 ヘレナヘケトが珍しく詰め寄って言った。ドムトートが興味を惹かれたようにヘレナヘケトを見る。


「いや、無理ですね。さっきはドムだから貸したんです。あれもヒーリング道具の一つなので、知らない人には貸せません」

「ではドムトートにやらせれば!」

「ちょっと待ってください。ドムは僕の護衛ですよ? 今でさえ水薬(ポーション)作りに時間を取られているのに」


「あの、シュー様。私たちがやりましょうか……?」

「ドムほど信頼はないかもだけど」

「ぼくもクルクルやるー!」

 

 お稽古トリオが名乗り出る。ドムトートと比較する発言に、守生は言葉に詰まった。ここで否定すると、レネーレネネトたちを否定することになってしまう。

 

「いや、あのですね。交易するにしても、僕がここにいる間しかできないことですよ? それに一本しかないアメガワンドを欲しいと言われても困りますし」

 

(王様も【黒曜の頭脳】もこういうの好きそうだし!)


「秘匿しますから!」

「シュー様!」


「ちょっと待ってください。ヘレナさんはともかく、レネーさんやウーナさんまでどうしたんですか?」

「その、それは……」

「だって私たち役立たずですから」

 

 きっぱりと言うレネーレネネトに、守生は驚いた。


「え、どうして? 誰かに言われた?」

「ドムは魔法がすごいし、賢者様の水薬を作ってますし」

 

 ドムトートが鼻の下を擦る。


「アベルはいつもシュー様に頼りにされてますし」

「えっ、いや……分からないことがあると、ついね」

 

 守生は思わず手で口元を覆った。アベルアヌビスはうれしそうに胸を張る。


「でも私たちは踊りや楽器を吹く暇もありませんし」

「うーん、今は氣道(チドー)優先だからねぇ。でもそっちで頑張ってくれてるだろ?」


「それはアベルもドムも同じですから」

「うーん」


 守生はしばらく考えて、承諾する。

 

「シュー様! ありがとう存じます」

「いくつか条件がありますよ、ヘレナさん」

「はい、いかようにも」


 作る場所はこの部屋であること、このことは誰にも言わないことなどを盛り込み、守生は契約書を作らせた。


(うーん、なんでこうなった? ドムの水魔法に対抗しようとしたせい? いや考えが足りなかった?)

 

 守生は国家レベルでの影響力に恐れをなしたが、ウーナウヌトとレネーレネネトは頑張った。

 少しの暇を見つけては、塩をゼロポイントにしていった。腕がひどい筋肉痛になるほどだったが、国王カールホルスはアメガ塩の繊細な味に満足し、近隣の都市国家への特別な贈り物として大いに役立てたのだった。

 

「どうして私に教えてくれないんですか!? 私を契約書で縛ってもいいんですよ?」

 

 カールホルスにしつこく聞かれたが、守生は頑として答えることはなかった。

 


 

 

 

「【稀有なる光】、あなたはまだ隠し玉を持ってたんですね! まったく、底が知れませんねぇ!」

「隠し玉……。まぁ、そうですね」

 

 賢者トリスタントートの言葉に、守生は頷く。


「塩の変容の道具は、みなさん全員に【DNAアクティベーション】をしても解呪できない時に使う予定の、とっておきです」

「な!? そうなんですか!? それは絶対に秘匿しないといけませんね!」

「ええ」

 

 守生が重々しく頷くと、トリスタントートは教えてほしいと言うことはなかった。


 

アメガワンドは料理やオーラ調整に使えてすごく便利なんですけど、一回は紛失するんですよね……。


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