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第460話 第2決戦・オトハ&オウランvsケーラ&メロッタ4

「オウラン」

「ああ」


 基礎的な身体能力に加え、五感や反射速度も劇的に上昇した今なら、いける。


「《生命略奪(エア・グリード)》」

「!?……かっ」

「ぐうっ……!?」


 超人化によって範囲が広がったオトハの空気操作が、2人の周囲の酸素を奪う。

 誰だって、いきなり空気を奪われれば硬直する。

 ほんの一瞬だが、今の僕ならその隙をつける。

 普段ならありえない速度、ありえない正確さをもって、8発の弾丸を別々の方向に撃ち込む。

 跳弾込みの全方位攻撃、ゴム弾3発で実弾5発。

 完璧な射線だ、容易に敵を殺し切るイメージが湧く!


「……《錬成(アルケミスト)・黄金の小盾》」


 瞬きの瞬間、強化された僕の視力が信じられないものを捉える。

 メロッタの魔法は、即座にまばゆい光を放つ5つの盾を生成。

 空中に、一見無造作に生み出された盾。だがその全ては、僕の弾丸の射線の間に置かれた。


「!?」


 5発の弾丸が直前で弾かれ、勢いを失いながら宙を舞う。

 しかも、ゴム弾の方も阻まれている。タコの触手のように伸ばされた砂鉄が、ギリギリで止めていた。実弾ほどの威力を持たないゴム弾じゃ、あの程度でも防がれるか。


「《慣性封印(イネルシール)》……ぷはっ!」

「げほっ……助かったよケーラ」


 ……マジか。


「嘘だろ!?」

「……想定以上に厄介ですわね、あれ」


 封印魔法で慣性を封じて緊急離脱。これはまだいい。

 範囲が広がったとはいえ、オトハの空気操作は半径10メートル程度が限界。離脱されるくらいは想定済みだ。

 問題はその前。砂鉄の全面展開は間に合わないと踏んだか、盾を生成するのはまだ分かる。

 弾道を見切るのもまだいい。金属魔術師であるメロッタなら、金属の通り道を予測くらいは出来るだろう。跳弾させた分、さっきよりも余裕があっただろうし。


 問題はあの盾だ。あの一瞬で、5箇所同時に展開しやがった。しかも予測軌道からほぼズレなく、さらにゴム弾を防ぐための部分的な砂鉄操作と並行して。


 これが、あのナユタすら認めた才能。

 ステアすら上回る、圧倒的に緻密な魔力操作!


「あれを突破しない限り、勝機はありませんわね」

「だな。どうしたもんか」


 オトハの毒で一気に溶解できるとはいえ、ケーラがいる限りそれも難しい。

 毒劇魔法は魔力を介して、魔力のないものを生み出す魔法。その性質上、ケーラの封印がほぼ無条件に効いてしまう。

 だから今は、ごく狭い範囲での毒の生成か、自分と僕へ効果を及ぼす薬に限定せざるを得なくなっている。マジで相性最悪だ。

 遠距離で毒をぶち当てるには、タイミングを見計らって超少量の液体を命中させるか、それとも……。


「《錬成(アルケミスト)・タングステン手裏剣》」


 頭を巡らせている間も、敵は待ってくれない。

 一瞬にして20以上生み出された金属製の飛び道具が、一挙に僕らを襲う。

 無論、耐性魔法で防御をしようとした時。


「違う、避けなさい!」

「!?」


 オトハの絶叫を受け、急遽身体能力に物を言わせて全力で後退。

 さっきまで僕が立っていた場所に、轟音と共に手裏剣が突き刺さる。


「ほう、よくかわしたな」


 ……どんな重さしてるんだ、あの手裏剣。

 当たっても耐性を付与しているから死にはしなかっただろうが、確実に大きなダメージは与えられていた。


「わっ、と……!」


 さらに、波のような砂鉄が僕らを飲み込もうとする。

 避けられない。仕方がない、奥の手を―――。


「こっち」

「ぐぇっ!?」

毒球殿(ポイズンドーム)


 僕の決断より早く、首根っこ掴んできて僕を引き寄せたオトハの毒バリアが、僕らを襲った砂鉄を溶解した。


「げほっ……ありがとう、助かった」

「馬鹿弟、頭使いなさいな。闇雲に守って殴って、それであの手練2人を倒せるわけないでしょう」


 砂鉄で相手の視界が覆われたことで封印できないと踏んで、溶解液で回りを包んで砂鉄を破壊。

 こういう時の頼もしさは、我が姉ながら凄まじい。


「まったく……生き残る、殺すという思考が先行しすぎですわ」

「わ、悪かったよ。でも、じゃあどうするんだ。お前はともかく、僕の強化はあと8分だぞ」

「だから頭を使えと言っているんです。よく見なさい」


 オトハに言われた通り、砂鉄が晴れてきた方向をじっと見つめる。

 ……んん?


「……えっと」

「はぁーー……まったく、これだからヘタレリア充は」

「ヘタレリア充!?」


 こいつの見下すような顔、めっちゃ腹立つな!


「じゃあなんだっていうんだよ」

「よく思い出しなさい。あの2人、戦い始めてから一度も離れてないんですわよ」

「へ?」


 そういえば、緊急脱出の時もこっちを攻めてる時も、ずっと至近距離にした。

 これが表すのは、つまり。


「オトハお前、まだ変になってるな?嫉妬もいい加減にしろ、今はそんな場あいっでええええええ!?」

「頭蓋かち割りますわよ愚弟!」

「今かち割れてないよな大丈夫だよなこれ!」

「そうじゃなくて!あの2人は、離れられない何らかの理由があるってことですわよ!!」


 ……え?ああ、そういうことか。

 てっきりまたカップルに憎悪をむき出しにし始めたのかと。


「離れられない理由って、考えられるとすると……」

「互いが互いを守るためか、封印魔法をメロッタにかけやすくするためか」


 もしくはもっと単純に。


「砂鉄に巻き込まないためじゃないか?」

「ああ、なるほど」


 メロッタがいくら緻密な魔力操作が可能とはいえ、僕らに有効打を与えるためには、ある程度大胆な攻撃が必要になる。

 そうなると、大量の砂鉄をぶつけることになる。1人なら特に構わないんだろうが。


「メロッタの魔力操作がどれほどのものかは分からないけど、流石に砂鉄1粒1粒をマニュアル操作してるわけじゃないだろ」

「実際、あちこちに砂鉄が落ちているのが証拠ですわね。細かい部分はどうしても散ってしまうんでしょう」

「でもその砂鉄、時間が経つと勝手にメロッタの近くに引き寄せられてたな」

「落ちた砂鉄が一定量を超えると、補完するためにまた集まり出すのでしょうね」

「じゃあ、その時仮に、攻撃に巻き込まれていくらか砂鉄を飲み込んだりするとどうなる」

「身体をぶち破るか、喉からクーリングオフされるか。いずれにしろ体内を掻き回されるのは避けられないはずですわ」

「だよな。そういう事故を防ぐために、万に1つも砂鉄が来ない自分の近くでケーラを守ってるんだろ」

「あとはシンプルに、妙に距離を持つと金属魔法の自由が効かなくなるのかもしれませんわね。金属魔法はその性質上、攻撃のほぼ全てが大規模な質量攻撃ですから」

「ああ、僕の耐性魔法が金属魔法と相性悪いのと同じ理屈だな。大規模な攻撃が来たら、いくら封印魔術師でも巻き込まれれば死ぬ可能性がある」

「あとは砂鉄攻撃って、多分自分にも効きますわよね」

「ああ、金属魔法の特性は金属の感知と判別のはずだ。自分で生み出した金属でも、操作を誤れば自傷するだろうな」

「てことは、それを防ぐために」

「あいつのごく近い範囲に砂鉄は展開されない。少なくとも瞬時にはな」


 まるで自問自答をしているかのような感覚。

 なんだ。分かっていたはずなのに、いつの間にか忘れてたんだな。


「ならやるべきは」

「そうですわね」


 僕らは双子だぞ。

 そこらのコンビネーションに負けるか。


「一瞬でもあの2人を引き離して」

「その隙に2対1で瞬殺ですわね」


 1対1に持ち込むのはなしだ。考えてみれば、僕らの最大のアドバンテージはこれだったじゃないか。

 ケーラかメロッタ、どちらかでもいい。最低でも戦闘不能に追いやれば、相性の4すくみもなにもない。


 さて、どう潰すかな。

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