第458話 第2決戦・オトハ&オウランvsケーラ&メロッタ2
「ナユタ先生〜、出来ましたわ」
「どれ。……うん、完璧だね。〈S-4〉は完成扱いでいいよ」
ナユタに師事し、あらゆる化学知識と製薬・製毒技術を習得したオトハが最後に着手したこと。
それは、ナユタが開発した毒や薬の再現だった。
「しかし……よく考えつきますわね、こんなえげつないの」
「はっはっは。君の大好きなご主人様にいつか盛ってやろうと色々試行錯誤したからね」
「……いくらナユタ先生でも、やったら殺しますわよ」
「やらないよ。久音に嫌われたくないし」
オトハの殺意をなんでもないように流し、試験管を振るナユタは、ふと気になった。
「最終決戦なんだけど、おそらく君とオウランは、メロッタとケーラを相手にすることになる」
「へ?はぁ。ナユタ先生がそう言うなら、多分間違いないのでしょうが」
「……それってさ」
「はい?」
「いや、なんでもないや。忘れて」
ナユタは、メロッタの強さを知っている。
自らの手足として動かしてきた希少魔術師、その中でも歴代3指に入る使い手。特異な才能と金属魔法の相性は、最適とすらナユタは思っていた。
だがそれでも、その状況に置かれた時のオトハの様子を予測し、思考すると―――。
(……大丈夫かあいつ)
***
「〈S-3〉調合」
ひとしきり叫び散らかした姉が次にとった行動は、その呟きだった。
「ちょっ、おま……S-3ってたしか……」
「《気状散布》!!」
慌てて自分に毒への完全耐性を付与、その直後、オトハの手のひらに生成された毒液球が爆ぜ、薄黄色の煙を撒き散らした。
「……!ケーラ!」
「《異物封印》」
敵に届く直前、封印魔法によって阻まれはしたが、この毒霧がある限りはその封印は解けない。封印魔法の手札は減らしておくに越したことはない。
分かっている、分かっているが!
「オトハお前、事前の相談とかないのか!あとちょっと遅れたら僕が死んでただろーが!」
「いっちいちうるさい男ですわね、解毒剤くらい生成出来ますわよ!」
「そういう問題じゃないだろバカ姉貴!!お前の八つ当たりに僕を巻き込むな!!」
しかし怒鳴られたはずのオトハはふっ、と小馬鹿にしたような殺意の湧く顔となり。
「言葉の誤用はよくありませんわよ愚か者。八つ当たりとは、怒りを無関係なものにぶつけることです。バリバリ関係しているお前には該当しませんわ」
「愚か者はお前だ、遊んでる場合じゃないんだよ!」
ああ、多分いないとは思うけど神様。
なんでうちの姉をこんなんに産み落としたのですか。
「……まあ憂さ晴らしはこの辺にしておいて」
「弟で!この大事な場面で!憂さ晴らしをすんな!」
「うるさいですわねぶっ殺しますわよこのリア充が」
……生きて帰ったら、ボタンは一体こいつと何の波長が合ったのかを教えてもらおう。
一方で、敵方はというと。
「無事かケーラ!」
「問題ありません。……が、自分が意識を失えばこの封印も解除され、2人仲良く毒に晒されます。守ってください」
「任せろ。指1本触れさせん」
……あっち、いいなぁ。
「………」
「おいオトハ、血の涙流してないで作戦考えろ。どうするんだ」
「オウラン」
「あ?」
「このS-3は、ナユタ先生が生み出した傑作の毒ガス。滞留力、吸収力共に既存の毒ガスとは一線を画し、1呼吸で臓器に深刻なダメージを与え、2〜3呼吸もすれば死にます」
「それは聞いたけど」
「そしてもう1つ、このガスにはとても素晴らしい力がありまして」
「へぇ。なんだよ」
「可燃性なんですわ」
「ほほぅ」
「ついでに、最初に飛ばした黒いヘドロ毒も、火を近づけるだけでボンッてなりますわよ」
「なるほどなるほど」
可燃性ね。
つまりあれだ、コンロとかのガスと同じってことか。
うんうん。
「おい、ちょっと待て、お前まさか」
「オウラン、守ってくれますわよね?」
「待て待て待て待て!!」
僕の静止もむなしく、手のひらサイズの液体を生み出したオトハは、それを地面に叩きつけ。
「ん?」
「えっ……」
「たーまやー」
直後、周囲全てが轟音と光に包まれた。
***
「ふー……スッキリしましたわ。やっぱりナユタ先生の知識は偉大ですわね」
「ぜはー……ぜはー……」
「ふふふふ……あははははははは!!ザマーミロですわ、リア充なんて全員爆発してしまえばいいんですわぁ!!あはははははは!!」
「お前……ほんと……いつかシバくからな……」
あと、そのリア充には弟と親友も入ってんのか?
爆発耐性を付与しなけりゃ2人ともバラバラだったぞ!
「げほっ……けど、もしかしてこれで終わったか?」
「んなわけありませんわ。どーせ」
オトハの推測通り、煙が晴れた場にはメロッタもケーラもいなかった。
代わりに、1つの大きな鈍色の球体が鎮座し、妙な存在感を放っている。
少し瞬きしていると、やがてその球体は縦に割れ、思い浮かべた通りの2人が出てきた。
「無茶をしてくれる。もう少しで大火傷だった」
「まったくです。顔に傷など負ったら……」
無傷……ではないか、若干間に合わずに爆風でダメージを負っている。だが軽傷か。
「先ほどから、未知の毒ばかり。……それはナユタ様からもたらされたものか?」
「ええ。先生の教えの賜物ですわ」
ナユタもナユタだ、こいつになんてもの教えてくれてる。
クロさんに怒ってもらおうかな。
「……ふっ」
「メロッタ」
「大丈夫だケーラ。もう私は迷わん」
……?
なんだ、メロッタの鎧が剥がれていって―――。
「あの御方への恩義はある。……だが、もう盲信などしない」
剣に、変わった。
明らかに鎧より小さい。相当な密度で練り上げられている。
さらに、彼女の周囲の地面から、黒い何かが噴水のように吹き上げてきた。
「砂鉄……」
「ナユタすらも認めた、超精密な魔力制御を可能とする特異体質、か」
砂鉄は金属を擦り合わせる音を何重にも流しながら、触手のようにウネウネと相手の周囲を巡り始めた。
「裏切った私を、それでも受け入れ、力をつけてくれた者たちのために、私は戦おう」
ケーラはメロッタを見つめて顔を赤らめ、だがそれでも両手で構えを取る。
メロッタは剣を正中線に沿って構えて、そこに砂鉄を纏わせた。
「ルクシア様の側近が1人、メロッタ。いざ尋常に、参る」
……あっち……いいなぁ……。
……あれ、どっちが主人公サイドだっけ。
『お知らせ』
次回更新〜4月中頃まで、もしかすると予告なく連載に穴が空く可能性がございます。ちょっと忙しくなりそうで……。
極力頑張りますが、空いてしまったら申し訳ない。




