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純白のSと共に  作者: Kanra
36stage群馬湯けむり公道レース
398/435

危険行為の敵を撃て、大山!

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


「よっはっ!」

 S660の拓洋は万座温泉を通過し、三叉路までのヒルクライム区間にいた。

 ここには連続ヘアピンが多数存在。

 第2いろは坂のように高速でクリアは出来る。

 それに加えて、変形溝走りも使用可能。

 そのため、レイブリックやARTAの姿が時折見える程にまで接近してしまっていた。

(追い付け追い付け!)

 と、拓洋は思いながら左コーナーを抜ける。

「さすがに使うかな。」

 ここでアクティブスポイラーを起動。

 ダウンフォースを増加させる。

 右コーナーでは立ち上がり重視の変形溝走り。

 一気に立ち上がると、レイブリックの後ろ姿を捉えた。 

 しかし、急な上り勾配。

 ここでパワーの差により、レイブリックが離れる。

(見えたって思っても離される。こればかりはなぁ。)

 と、拓洋は溜め息をつく。

 次の左で変形溝走り。

(分かっていても、離れていく相手を指咥えて見ていられっか!追いついてやる!)

 連続ヘアピンの最後のヘアピンであるこの左の立ち上がりで、もう一度、レイブリックの後ろ姿を捉える。

(この先、緩いコーナーの先にきついヘアピン。ブレーキングで詰められるだけ詰める。)

 そのヘアピンまでの間の緩いコーナーでも、溝走りを使用し、失速を最小限に抑える。

 そして、ヘアピン接近。

 レイブリックがブレーキングしたのを確認。

(まだ。まだ、今!)

 ガツンとブレーキを踏む。

 ABSが作動。

 そして、アクセルを踏みながらコーナーを抜け、一気に立ち上がる。

 レイブリックとの差が縮まる。

 しかし、また離れる。

「まぁ、離れるのは分かっているさ。」

 と、拓洋はつぶやく。

 

 愛衣が含まれる集団は殺生ゲートを通過。

 坂野は未だ、愛衣の後だった。

 大山神威は坂野の後に引いた。

 殺生ゲートの先、2連続のヘアピンがある。

 坂野は苛立っていた。

(クソが。無のクセして、すばしっこいんだよ。)

 歯軋りをする。

(こうなったらちょっとばかり、嫌な手を使わせてもらうよ。)

 と、坂野は思う。

 ヘアピン直前だった。

 坂野のカルソニックが、ブレーキングドリフトに入った愛衣にバンパープッシュをしたのだ。

「なっ!」

 愛衣はとっさに、クラッチを踏み込むが、そのまま、スピン。

(スピンさせるほど強く押していない!それでスピンするなんて、やはり雑魚だ。)

 と、坂野は思う。

 だが、大山神威はこれを見て怒った。

(ちっとばっかし接触じゃねえぞ。明らかにプッシングじゃねえか!)

 愛衣も360度一回転して立て直そうとしたが、路肩にリアタイヤが乗ってしまい停止。

「ふざけんなよなんだよあいつ!」

 マーシャルがイエローフラッグを提示。 

 ドローンもイエローランプ点灯。

 大山神威は無線でブースにいるメカニックと坂口正孝に「抗議してくれ!」と伝えた。

 そして、スピンして立て直し、再加速する愛衣を、ARTAとレイブリックが追い越す。


(イエローが解除された。減速していたんだが、もう大丈夫だろう。)

 と、拓洋は再加速。

 そして、目の前に、S2000GT1がいた。

(げっ!愛衣じゃねえかよ。何したんだ?)

 愛衣に無線交信。

「どうした?」

「坂野にプッシングされてスピン。あれでGTドライバーかよ!」

「いや、スーパーGTやDTMじゃ日常茶飯事だろ?」

「でも、スピンさせるような、悪質すぎるのは警告よ!自爆しようにも、したら順位落ちるだけで割に合わないから自爆はしないよ。」

「それで、怪我は?」

「無い。大山さんが抗議要請送った。」

「車は走れる?問題無い?」

「ピットインする。ゴメンね。」

 と、愛衣が謝罪した。

(謝るなよ俺に。)

 と思いながら、拓洋はハザードを焚いて答えた。


 愛衣は、天狗山レストハウスに設けられた仮設パドックに車を入れる。

 大林が駆け寄る。

「プッシングの際、左リアに異変を感じた。後、乗り上げた右リアも。」

「分かった。」

 ジャッキアップしてみる。

 アライメントの狂いは無い。

 だが、プッシングされた側のエアロパーツに傷があるのを確認。

「変えのパーツはある。突貫工事になるが、なんとか、明日までに組み上げてやる。」

「坂野には?」

「メインポストで黒白旗掲示による警告。」

「まあ、それが妥当でしょう。予選だったらグリッド降格にはなるけど。」

 愛衣は溜め息を付きながらも、即刻、損傷したエアロパーツの修理を手伝い始めた。


(ムカついた。ワザとやりやがったな。坂野。テメエみてえなカスには、負けねえからな!)

 九重拓洋はキレた。

 坂野大樹に仕返ししなれば、自分の気が治まらない。

「拓洋。坂野との差を考えろ。泥を塗り返すつもりだろうが、止めておけ。手の内を見せることになるぞ。」

 オープンチャットで会話する大山神威が言う。

 大山神威の少し前に、坂野が居る。

「敵は俺が取る。」

「加勢させてください。」

「追い付けねえだろ。お前には!」

「ちっ―!」

 大山神威の言う通りだ。

 実際、併走しているレイブリックNSXやARTA NSXでさえ、振りきれず、一回抜いてもまたすぐ抜き返されて差が開いては縮まるという状態だった。おまけに、先程の愛衣のスピンによるイエローフラッグで減速した後、愛衣と併走したため、レイブリックとARTAは先に行ってしまい、今は単独走行状態だ。

 GTマシン相手であるだけに、これでもとんでもない事態ではあるのだが、レイブリックとARTAに追い付けていない今の状態で、大山神威と坂野が居る集団に追い付くのは不可能だ。

「怒りは温泉で晴らせ!」

「ちっ!何も出来ない俺が情けねえ!」

「お前はしっかり走れ!それだけでも、愛衣の汚名を返上できる!」

「デブの汚名もですか?」

「何もしなければ、終わりだ!」

 大山神威は坂野のカルソニックGTRをロックオンしている。

 草津温泉の温泉街を抜けたところから、何度も何度もパッシングして挑発すると、坂野も苛立ちを抑えられなくなって、バトルモードに入った。

 大山と坂野は両者ともに、プラクティスながら本気のレースを始めていた。

(大山か。こっちからケンカ吹っ掛けたってのもあるが、まさか大山とケンカになるのは想定外。)

「おい!余計なことするなって言っただろう!?」

 と、星賀監督が怒鳴る。

「下手にケンカしたら、手の内見られるぞ!」

「分かってます。農産物直売所から、浅間・志賀・白根さわやか街道までの間だけ付き合います。後は、お望み通り、前に出します。」

 坂野は、国道292号と浅間・志賀・白根さわやか街道の交差点まで、バトルするが、その先は勝手にしろと決めた。

 農産物直売所前の右高速コーナーに入る。

 大山神威はインサイドを狙うが、そのラインを坂野はブロック。

(ブロックブロック。ブロック遊びか。レゴでもやってんのか?)

 大山神威は舌打ちした。

 だが、舌打ちした要因は別にある。

 コーナーのイン側に花壇があり、観客席が設けられていたため、ここでは変形溝走りが使えなかったからだ。

 次の左コーナーでは、大山がアウトサイドから仕掛ける。

(次の右は3車線ある。この左を立ち上がった勢いをそのままにクリアし、ストレートで一気に加速して、前に出てやる。)

 その、右コーナーに入る。

 坂野のカルソニックGTRのインサイドにNSXの鼻面を捩じ込む。 

 大山もまた、今回はHONDAからホワイトレーシングプロジェクトにスクラップ扱いで押し付けられた元GTマシンのNSXを操っている。

 言うならば、今、公道でスーパーGTマシン同士のバトルが繰り広げられているのだ。

(悪いな坂野。GTRは特に重いからし、プッシングアンダーすげえし、フロント廻りに色々なものゴチャゴチャ付けすぎだし。軽さを見れば、NSXに分がある。まあ、GTRも4WDだから、立ち上がりは速いんだが。)

 右コーナー立ち上がる時、坂野と大山はサイドバイサイド。

 そして、下りの高速左コーナー。

 大山神威はかなりの勢いで突っ込む。

 坂野大樹は横目で見る。

(バカめ!自滅すんのがオチだろうがよ!)

 坂野は鼻で笑った。だが、大山は違う。

 確実に手応えを感じていた。

(愛衣よ。坂野に泥を塗りたいって気持ちは分かる。が、泥を塗る塗り方ってのは―。)

 NSXでドリフトしている大山神威は、坂野のGTRの立ち上がるスペースを潰した。

(アウトサイドにはまだ余裕がある。行ける。このままアクセルオン!)

 NSXが一気に加速。

 カルソニックGTRはスペースを塞がれていたため、出遅れる。

(坂野。お前の乗り方は粗い。テクニックの使い分け、どんな状況でも平常心。拓洋の事を酷評していたが、俺に言わせれば、お前が言うな、坂野!)

 大山は坂野との差を開きにかかる。

 だが、坂野は引いてしまった。

(何だよ。勝負はお預けか?結構だよ。本戦でもう一発やるとしよう。)

 大山は鼻で笑った。


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