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エピソード20 恋の始まり


『四姉妹の恋愛学園日誌』をご覧いただき、ありがとうございます。


第四章「四女・ひまり編」も、いよいよ最終話となりました。


高校へ入学し、新しい友達や先生、そして優しい先輩・朝倉陽向との出会いを通して、少しずつ成長してきた春風ひまり。


笑顔いっぱいの日々の中で芽生えた、小さくて大切な想い。


今回は、そんなひまりが自分の本当の気持ちに気付くまでを描きます。


末っ子らしい素直さと優しさが詰まった物語を、最後まで楽しんでいただければ幸いです。


それでは、第四章最終話「エピソード20 恋の始まり」をご覧ください。



 文化祭が終わって数日。


 桜ヶ丘学園には、いつもの穏やかな日常が戻っていた。


 教室では授業が始まり、運動部の掛け声が校庭に響き、図書室では静かにページをめくる音が聞こえる。


 そんな変わらない毎日の中で、一つだけ変わったことがあった。


 春風ひまりは、校舎ですれ違うたびに、朝倉陽向の姿を探すようになっていた。


「……あ。」


 二階の渡り廊下。


 遠くで友人と話している陽向の姿が見える。


 それだけで自然と笑顔になってしまう。


「ひまり?」


 隣を歩く奈々が首をかしげる。


「どうしたの?」


「ううん、何でもない!」


 慌てて前を向くひまり。


 その様子を見た奈々は、少しだけ意味ありげに微笑んだ。



 昼休み。


 ひまりは購買でパンを買い、中庭のベンチへ向かう。


 すると、向こうから見覚えのある姿が歩いてきた。


「あ。」


「春風さん。」


「朝倉先輩!」


 偶然の再会だった。


「ここ、座ってもいい?」


「もちろんです!」


 二人は並んでベンチへ腰掛けた。


 爽やかな風が吹き抜け、木漏れ日が足元を照らしている。


「最近、高校生活には慣れた?」


 陽向が尋ねる。


「はい!」


「迷子になる回数も減りました。」


「それは良かった。」


 二人は笑い合った。



「そうだ。」


 陽向は鞄から一冊の文庫本を取り出した。


「これ。」


「僕が好きな小説なんだ。」


「もし良かったら読んでみる?」


 ひまりは目を輝かせる。


「いいんですか?」


「もちろん。」


「読み終わったら感想を聞かせて。」


 ひまりは大切そうに本を受け取った。


「ありがとうございます!」


「絶対読みます!」



 放課後。


 昇降口で靴を履き替えていると、美咲、葵、結衣の三人が待っていた。


「ひまり。」


 結衣が微笑む。


「今日は嬉しそうだね。」


「えっ?」


「そんなに分かる?」


 葵が笑う。


「すぐ分かる。」


「何かいいことあった?」


 ひまりは少し照れながら、本を取り出した。


「朝倉先輩が貸してくれたの。」


「読み終わったら感想を話そうって。」


 三人は顔を見合わせて微笑む。


 美咲が優しく言う。


「その本、大切に読もうね。」


「うん!」



 その夜。


 ひまりは自分の部屋で本を開いた。


 一ページ目を読む。


 二ページ目。


 三ページ目。


 物語はもちろん面白い。


 でも、それ以上に嬉しかった。


「朝倉先輩が読んだ本なんだ。」


 そう思うだけで、ページをめくるたびに胸が少しだけ温かくなる。



 翌日。


 昼休み。


 ひまりは陽向を見つけると、小さく手を振った。


 陽向も笑顔で手を振り返してくれる。


 それだけなのに、昨日より嬉しい。


 昨日より心が弾む。


 奈々がその様子を見て笑った。


「ひまり。」


「もう答えは出てるんじゃない?」


「答え?」


「うん。」


「その先輩のこと、好きなんでしょ?」


 ひまりは思わず立ち止まった。


「好き……。」


 その言葉を心の中で繰り返す。


 校舎で姿を探してしまう。


 会えると嬉しい。


 一緒に話すと楽しい。


 別れると、また会いたくなる。


 文化祭の日も。


 一緒に帰った夕焼けも。


 全部、大切な思い出になっている。


 ひまりは少しだけ空を見上げた。


「そっか……。」


 小さく微笑む。


「私……。」


「朝倉先輩のこと、好きなんだ。」


 その言葉は誰にも聞こえないくらい小さな声だった。


 けれど、それは確かな気持ちだった。



 放課後。


 校門の近くで偶然陽向と出会う。


「春風さん。」


「朝倉先輩!」


 二人は自然と笑顔になる。


「また会ったね。」


「はい!」


 ほんの少し話をして、それぞれ帰り道へ向かう。


 振り返ると、陽向もこちらを振り返っていた。


 目が合う。


 二人は照れながら手を振る。


 その一瞬だけで胸がいっぱいになる。



 春に始まった高校生活。


 友達との出会い。


 文化祭。


 そして、朝倉陽向とのたくさんの偶然。


 その一つひとつが、ひまりの心を少しずつ変えていった。


 初めて誰かを特別に思う気持ち。


 初めて知った胸の高鳴り。


 それは、小さな恋の始まりだった。


 こうして第四章「四女・ひまり編」は幕を閉じる。


 四姉妹それぞれが、それぞれの場所で大切な人と出会い、新しい一歩を踏み出した。


 そして次に始まるのは、四人の想いが交差する新たな季節。


 それぞれの恋が少しずつ動き始める、第五章「四姉妹編」。


 四姉妹の青春は、ここからさらに色鮮やかに輝き始めるのだった。



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第四章「四女・ひまり編」は、これにて完結となります。


新しい高校生活の始まりから、友達との出会い、文化祭、そして朝倉陽向との交流を通して、ひまりが初めて恋という気持ちに気付くまでを描いてきました。


四姉妹それぞれが違った形で出会いを経験し、それぞれの恋物語が少しずつ動き始めています。


そして、本編はいよいよ次の大きな物語――**第五章「四姉妹編」**へと進んでいきます。


……その前に、四姉妹の日常や学校生活、家族との時間、各章では描ききれなかったエピソードを収録した**閑話・番外編(全5本)**をお届けする予定です。


本編では見られない四姉妹の素顔や、笑いあり、心温まる出来事ありの物語を、ぜひ楽しみにお待ちください。


その後、いよいよ四姉妹それぞれの恋が交差し、大きく動き出す**第五章「四姉妹編」**が始まります。


もし本作を「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、ぜひブックマークや評価、ご感想をいただけると、とても励みになります。


皆さまからの応援が、『四姉妹の恋愛学園日誌』の未来を紡ぐ大きな力になります。


引き続き、『四姉妹の恋愛学園日誌』をよろしくお願いいたします。


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