↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花道闊歩 -異世界の光る球に転生した最弱生物は、死ぬ運命の女の子二人を絶対!老衰エンドに歩ませます!-  作者: ガリガリワン
第一幕 第一章 貧乏少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

第七話 毒あるものは大体死ぬほど美味い


「ケルエタさん、ユユジュをいっぱい取りましたけど、これどうやって毒抜くんですか?」


 ケルエタとフリィアは、ユユジュをたくさん手に入れ家に帰ってきた。カゴを地面に置いて早速、毒の除去作業を始めようとする彼女は、ケルエタに問う。


「じゃあ、家の中から包丁を取ってきてください」


「わかりました!」


 こちらの頼みを承諾して駆け出すフリィア。


(さてさて……ユユジュの毒は一滴舐めても致死率100%……処理方法をミスったらマジで終わりだ)


 フリィアの背中を見ながら、緊張感と不安を感じるケルエタ。絶対にミスできない仕事が迫ってきている。


「ふぅー……落ち着け俺、大丈夫だ」


 そんな独り言で自身を鼓舞し、少し待っているとフリィアが包丁を持ってきた。


「持ってきました!」


「それじゃあ、ユユジュを切り株の上に乗せてください」


 フリィアがいつも薪を割る際に使う切り株、そこに彼女はユユジュを一つ置いて、指示を待つ。


(毒の繊維、それが中心に大量に詰まってる……逆にそこさえ切り取れば食える果実だ)


「そしたら真っ二つに切っちゃってください」


 指示すれば彼女はユユジュを真っ二つに切る。


「切れたら、中心部分をここから……ここまで切ってください。大きめに切っちゃっていいですよ」


 ケルエタはユユジュに近づき、体で線を引くように切る場所を示すと、フリィアはその通りに切った。


「こうですか……?」


「……うん、うんうん。そうです完璧です」


(さて……これで毒はないはず。ユユジュは死ぬほど甘いおかげで、果汁と水でジュースになるから……早速作って飲んでみるか)


 ケルエタは処理が終わったユユジュを見つめながら、フリィアに次なる指示を出す。


「それじゃあ、果汁を舐めてみましょうか、何か容器とか持ってきてください」


「も、もう終わりなんですね! 持ってきます!」


(……てか待てよ。俺……どうやって飲むんだ?)


 ケルエタはここで気がついた。自身が異世界に来てから、一切食事も給水もしていないことに。


(え、そう言えば口ないし……詰んでる? 飯とか飲み物摂取できないってこと? 生きれるけど……そう言う楽しみとかないってこと?)


「うそーん……多分飲めないじゃん」


 新事実、それを受けてケルエタは落ち込む。自身は人間らしい楽しみを失ったと知って。そんな中、フリィアは容器を持ち、走って戻ってきた。


「これでいいですか?」


「えぇ……それで大丈夫です」


「ケルエタさん? 大丈夫……ですか?」


 フリィアが容器をユユジュの横に置き、心配そうに見つめてくる。


(い、いかん。普通に気を遣わせてしまった!)


「だ、大丈夫です! それより、早速絞りましょう!」


 彼女はこちらの声に安心し、ニコッと表情を柔らかくした。そして、処理が終わったユユジュを手に取り、容器の上で持ち上げた。


「搾っちゃっていいですか?」


「そのままガッツリいっちゃってください!」


 それを聞いたフリィアは、ユユジュを両手で思い切り握り始め、両方から力を加え続け果汁を容器に垂らし続ける。


「うお〜……え、えぇ?」


 ケルエタはフリィアを見ていると、ユユジュがどんどんティッシュを丸めるように、潰れていくのを目の当たりにする。七歳の女の子の握力なのだろうか。


「ふん〜っ……っふ!」


 ユユジュはトドメとして、フリィアの渾身の一撃を喰らい、その原型を保てずに小さな球となった。


「出来ました!」


 たっぷりと溜まる果汁。


「お……おお、すごい力ですね」


「えへへ……お父さん譲りって言われますから」


(遺伝にしても強すぎだろ。子供なの……?)


 若干引きながらもケルエタは容器に近づき、それを見ながらフリィアに話しかける。


「フリィアちゃん。私、多分飲めないんですよ。ので、怖いと思いますけど飲んでくれませんか?」


「いいですよ!」


 フリィアはそう言って容器に手をかけ、躊躇うことなく果汁を口に含んだ。


(えぇ!? えぇ……え? 躊躇とかないの?)


 ケルエタは彼女を見上げながらも、容器から手を離して切り株にそれを置くのを見て、少し不安になる。


「フ、フリィアちゃん……?」


「……ケルエタさん」


(な、なんだこの空気やばい……ミスった?)


 段々と不安が大きくなる中、フリィアはケルエタに顔を向けて言い放つ。


「すっっごく美味しいです!!」


「へ……」


 頬を赤らめながら、興奮したようにそう言うフリィア。その様子からして、毒は取れていたようだ。


「こんなの飲んだことないっ……美味しいです! 今まで生きてきた中で一番美味しいかも……」


「そ、そんなに?」


 彼女が「美味しい」と言う姿を見ていると、ケルエタも飲みたくなるが、口がないので無理である。


「これ! おばあちゃんに飲ませてきます!」


「は、はい……」


 しかし、ケルエタは確信していた。


(飲みたい……飲みたいが、あの反応だ。売れる。一本でも売れたら勝ち確……道は、はっきりと見えた)


 商品の販売。飲食業ではあったが、接客スキルは未だ健在。ケルエタは坂田であった頃を思い出し、このユユジュのジュースを売る。


「……ふふ」


 明るい未来が見えて微笑むケルエタ。

 久しぶりにだが、彼は思わず、笑みを溢した。



 * * *



 異世界転生十六日目。


「いらっしゃ〜い。世にも珍しいユユジュの飲み物だよ〜。一本銅貨二枚でどうだ〜い!」


 この日、ケルエタとフリィアは町の中心地で、ゲリラ的にだが商売を行っている。猛毒の果実を飲み物にした商品──


「お客さん来ませんね……」


「そりゃそうですよ。ここは耐えです」


 もちろん客足は多くない。

 しかし、ケルエタには策があった。


(異世界にだって、好奇心旺盛な奴はいる。そいつを境に一気に客足が増えるはずだ……味は確かだしな)


 この飲み物が持つ確かな旨味。人は食に貪欲である。どんな汚名でさえ、旨味があれば覆る。


 準備期間はたったの二日間。

 ──ケルエタに不安はない。


「辛抱です辛抱」


「……わかりました!」



 そうして、朝から昼まで店を出して購入者はゼロ人。フリィアは持ってきたお弁当を食べながら、椅子に座ってボーっと空を見上げていた。


(マズいな……売れなさすぎて目に見えて萎えてるぞ。だけどなぁ……ここは耐えるしかないんだよな)


 ケルエタは彼女を時折見ながらも、自身もため息を吐いて下を向く。


「あのーすみません」


「はい……?」


 ケルエタは顔を上げ、前を向く。


「店、やってます?」


 来客だ。


「……やってます!!」


 ケルエタは大きな声でそう言い──


「お客様!!」


 フリィアは嬉しそうに椅子から立ち上がる。


「あ、あーもしかして俺が一番手?」


「そうです!」


 高身長のナイスガイ、緑の髪と真緑の瞳が特徴的で、服装はキッチリとしたものだった。


(貴族じゃね……?)


 ケルエタはそんな思いを走らせながら、そのイケメンな青年に問う。


「お客さん。このユユジュの飲み物、安全性とか気になりますか?」


「あー気になるよ。なんならそれが聞きたかった」


 すると、彼の後ろからもう一人男がやってくる。


「おォイ! エルメットの兄貴なァニやってんだ?」


「あぁ、珍しい飲み物を買おうかなって」


(へ、変な奴来た)


 ケルエタはイケメンな青年が、エルメットという名を持つことを知り、横に出てきた男に少し驚く。その者の髪型はモヒカンで、サングラスというよりはゴーグルのような、真っ黒な物を掛けていた。身長はエルメットより高く見えた。


「ユユジュゥウ!? 死にますよ兄貴ィ! おォイテメェ! 殺す気かってんだヨォ〜!」


「いや……あ、あの、違くて」


 猫背ながら一々動作がうるさい男、エルメットと違って服装は蛮族に近い。彼のせいで商売が詰まり始める。



「ピドッド、少しうるさい」


 エルメットがモヒカンの男の頬を軽く叩けば、彼は慌てたように口を閉じて、一歩下がった。


「サーセン! エルメットの兄貴!」


 どうやらあの男はピドッドという名を持つようだ。


「すみません、それで安全性はどう証明するんです?」


 ケルエタはフリィアの方へと視線を向けると、彼女は瓶を持ってエルメットの横に行く。


「飲むので見ててください!」


「待て待て。俺が指定したので頼もうか」


(なるほどね。そっちの方がイカサマ出来ないか)


「? わかりました!」


 フリィアは瓶を机の上に置くと、エルメットが一つ瓶を取って腰を屈め、フリィアへとそれを渡す。


「それじゃ、見せてもらおうか」


 エルメットは姿勢を直し、フリィアを見つめる。


(……何も問題はない。いけるはずだ)


 そして次の瞬間、フリィアは瓶の蓋を抜いて口に飲み口をつけ、ゴクゴクと飲み始めた。


「おォイおォイ! 死んじまうってェ!」


 ピドッドはドン引きしているが、エルメットは視線を逸らさずにフリィアを見続けている。


「っく……んく……ぷはっ」


 一気飲みしたフリィアは、とても幸せそうな顔で、空の瓶を机の上に置いた。


「……ほう、本当に毒はないみたいだね」


「えェ!? んじゃあユユジュじゃないっすよォ!」


 エルメットはこちらを見ながら口を開く。


「ユユジュが飲める場所を僕は知っている……だからこれがユユジュである可能性も高い。もし、ユユジュなら絶品──」


 彼は机に近づいてきて、言う。


「一本、買うよ」


「……ありがとうございます!」


「やったっ……ありがとうございます!」


「兄貴マジかヨォッ!」



 販売初日、販売開始から五時間。


 一瓶の売り上げ──

 しかし、この一瓶が運命を変える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。