12話
ハードディスクは砕けない
魔力覚醒のとき、メトシェラではお祝いにぼたん鍋を食べるらしい。
何を言っているのか分からないが、風習とはそういうものだ。
ローズマリーを貸し切って、みんなでぼたん鍋を食べた。
美味しかった。
ローズマリーの近くに宿屋を借りているので、俺とマリアは片付けを失礼して店を出た。
「実際のところ」
マリアが切り出した。
「わたし、ヒーラーに向いてると思う?」
「向いてる気はする……けど、俺ヒーラーについて何もしらないからなぁ」
「なるほど」
なぜか納得される。
「どういう『なるほど』だ?」
「セトくんとラザロさんの方向性が似てるなって。
だからラザロさん、最後にセトくんを指名したんだね」
「ああ、俺は『なんでもいい』って言って、ラザロさんは『保留』って言ったんだったな。
似てるっちゃ似てるか」
ラザロが保留にした理由は、単純に、時期尚早だからだ。
マリアは水属性なのはほぼ確定的だが、ヒーリング魔法は苦手かもしれない。
ヒーリングを身に着けたとしても、『ヒーラーの立ち回り』が苦手かもしれない。
実は魔法より武器攻撃役に向いているかもしれない(これは無さそうだが)。
こういう無数の可能性は、彼女自身にもうちょっと経験を積ませてから少しずつ排除していくたぐいのものだと、ラザロは言ったのだ。
「似てるよ。
チーム事情より、わたしが何に向いてるかを考えてくれたんだ」
「そうかもな……、ていうかクランの連中、揃いも揃って迷惑な野次馬すぎ」
マリアはくすくすと笑った。
上機嫌そうなので、今なら聞けるかもしれない。
俺は尋ねてみた。
「あのさ、お前が『体弱い』って言ってたのって、どういうふうに悪いのか、聞いてもいい?
場合によっちゃ、武器とか振れないかもだし」
「あ、うん」
彼女はどこから話そうか考えるように、目線を宙にさまよわせた。
「……本当は胸、呼吸器なんだけどね。
わたしの感覚の中では、いつもノドが悪いような気がしてたな」
「呼吸器……、喘息とか?」
「よく知ってるね、そんな単語」
「日本的にはわりとある単語だけど」
改めて転生した際の翻訳がどうなっているのか気になってきたが、そういう場合でもない。
「喘息、それだよ。
激しい運動をすると決まってノドが苦しくなるの。
家族の仕事を手伝えなくて、申しわけなかったな……」
「そうか……」
同い年だということは前に話して知っていた。
つまり、16歳。
かたや適当な受験勉強がたたって高い私学に行かせてもらい、
かたや家族の仕事を病気で手伝えずに悔しがっていた。
「なんか……ごめんな!」
「なんで謝るの?」
「なんか謝らなきゃならない気がしたんだ」
「わたしは……、逆にセトくんにお礼がいいたいくらいだけどな。
一人ぼっちだったところを、友達になってくれたし。
いい感じの仲間も見つけてくれたし」
「クランに入れたのは実質お前がミルクで酔ったから」
「それは言わないで」




