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戦慄のアウディート  作者: 亥BAR
第七章 教師の野望
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教師の野望(5)

 今日の授業が終わり放課後、部活も終わりほとんどの生徒が帰るころ、獅蛇は職員室で自分の仕事に向き合っていた。


 なるべく立神を長い時間監視したいところではあるし、特に今は黒いアウディーターとの接触も試みたいがため、さっさと仕事を切り上げて帰りたいところではあった。だが、流石に仕事を放置するわけにはいかず、机に向かい、結局学校を出たのは夕方九時ごろ。


 日はとっくに沈み、暗がりの中、何度も吹く風が頬を叩いてくる。両手を一度こすり合わせると、とっとと自宅に向かって歩き始めた。


 学校に来た刑事の事は気になっているが、だからと言ってもどうしようもない。いくら気に止めても何も変わらないのではあれば、むしろこちらからわざわざ気にする必要もあるまい。それよりは、どうにかして黒いアウディーターとの接触をしたいと考えていた。


 取りあえず、今夜あたりにでもキマイラに化けて夜の空に紛れながら奴を探し出してみる以外の方法はないだろう。勿論、見つかる確率など限りなく低い。だが、何度も繰り返していればそのうち会える。


 色々試行を巡らしながら歩いているが、さっきから後ろが気になっていた。こんな時間だ、ほとんど人はいない。その中、後ろの年の差カップルが妙に怪しい。ソフト帽をかぶる男に茶髪のセミロングの女。顔は見られないようにしているのか二人とも深く帽子をかぶり俯いた状態でずっと歩いている。つけられていると言うのは被害妄想だろうか。


 ただ、自分の正体がキマイラである以上、油断できることはない。とりあえず角を右に曲がる。後ろのカップルも同じ角を右に曲がった。歩行スピードを変えながら再び角を右に。右、右。そして元の道へ。その間、カップルはずっと付きまとっていた。


 だが、カップルの男の方が女の方に耳打ちすると急に進路を変更。どうやら、こっちが気づいていると言う事に気づいたらしい。尾行を中止しようとしているのだろう。どうするか迷ったが、一つ深呼吸すると後ろに声をかけた。


「そこのお二人方、わたしに何かご用でも?」


 そう声を掛けると同時にぴたりと足を止めるカップル二人。そのうちの女の方がゆっくりこちらに顔を向け始めた。かなり小さい声ではあったが男が慌てて「このバカ、自ら顔を見せる奴があるか」と顔を無理やり元に戻す。そのまま暗がりに姿を消した。


 尾行されていたことはほぼ間違いないだろう。しかも、あの雰囲気。所詮素人の意見ではあるが心得があると見える。もし、こんな時間帯でも無ければ気づかなかっただろう。


 警察か? 学校に来た警察といい、尾行されていると言う事は少なからず怪しまれていると言う事だ。キマイラはたまた化物と関係する人物として捉えられているのだろうか。


 しかし、何故だ。なぜ、ここまでピンポイントで自分を狙う? いや、たまたまか。麻布田高校の生徒、教師広く尾行されており、そのうちの一つだと考えられない訳では無い。いや、尾行だぞ。そんな確率の低い可能性で尾行をするのか? 少なからず、警察は……、こちらの正体に近づき始めていると考えていいだろう。厄介極まりないな。


 マンションの前にたどり着くとそれと無く辺りを見渡し、怪しい人がいない事を確認すると自分の部屋に向かった。


 浅い眠りにはついたものの、夜中に目が覚めた。どうも気になって仕方がなかった。とにかく今日は動くべきではないと黒いアウディーターに事は放っておくとしてベッドに入ったが、どうも精神的に不安定で寝つきにくいみたいだ。


 ふと、気になって窓から外を見た。パッと見た感じ、人は誰一人としていない。今は付けられていないのだろうか。そして、立神の事を思い出した。


 昨日、あの隠れ家を離れた時に置いて行った食料の数からもうなくなった事を推測し、腰を上げ外に出られる服に着替える。見た感じ尾行はなさそうだし、なにより立神に飯だ、腹減ったなどで苛立たせるのも避けたいもの。マンションを出てもう一度、人が付いていない事を確かめると、コンビニへ。食料を買いそろえると隠れ家に向かう。


 隠れ家には、食い散らかした後にグースカいびきをかいて寝る立神。そんな呑気に寝ている姿を見て、たかが尾行に踊らされている自分がアホらしくなりかける。買った食料を立神の横に置き、外に出ると暗い夜に一つ輝く明るい月明かりが顔に当たった。


 せっかくだから、奴を探してみようとキマイラの姿となり、闇の夜空に飛び出した。

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