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戦慄のアウディート  作者: 亥BAR
第七章 教師の野望
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教師の野望(1)

 立月市、周りに人が寄り付きそうもない廃墟を隠れ家にしたキマイラエボリューターは壁にもたれかかりながら、ライオンエボリューターの行動を見ていた。


「ウガァァアアア!!」

「あんまり叫ばないでください。居場所を知られては厄介ですよ」


 思わずライオンの雄叫びに耳を塞ぎ、呟く。


「しかしよう……なんか無性に叫びたくなると言うか……」

「ま、ライオンですからね……仕方がないのでしょうけど、我慢してください。……どうもエボリューターになる事で生まれてしまう本能を制御する研究も必要らしいですね」


 ライオンを見ながらエボリューターとしても分析を行う中、ライオンは一つ息を大きくはき出すと力を抜くような動作をし始めた。それに伴い、がっちりした肉体の輪郭がグニャグニャと動き出し、アウディーターとは違う鈍い光を放ちながら姿を変えていく。やがて、輪郭がライオンと言う化物姿から一回り小さな、人間の姿が露わになる。


 その姿は脱獄犯、立神魁。キマイラ自身、犯罪者を研究対象者として選ぶことにやはり最初は戸惑っていた。何しろ、銀行強盗するような悪人に力を渡すことになるのだ。一歩間違えば奴は間違いなく、力は悪事に使用されるだろう。


 だが、同時に都合がいい人物であったのも違いない。まさか、本物のアウディーターが出ることになるとは想像もしていなかった分、そのアウディーターと相見え、復讐心を抱く立神はエボリューターの研究にいいチャンスだったのだ。


 今の所立神はただ、赤いアウディーターを倒す事に執念を燃やしている。その執念は確かに立神とエボリューターの力を活性化させ、戦闘面のデータも収集出来ている。


 アウディーターを倒すまで立神の目標は揺るがないだろうし、今は問題ない。問題はその後だ。奴を倒した後、目標をなくした立神は再び、犯罪者に戻りかねない。そうなれば用済みだ。力は平等にあるべきだが、悪を認める訳にはいかない。消すしかないだろう。


 そんなキマイラの考えなどまるで知らないだろう立神は首を左右に動かし、コキコキと骨の音を鳴らすとボロボロになっているソファに転がり込んだ。


「しっかしよ、あの黒い奴、赤いのに手をかしていたよな?」

「ええ、そうですね。彼らは手を組んだのでしょうか……」


 問題はもう一つあった。赤いアウディーターの他に、また別のアウディーターもいるのだ。黒い方は赤いのをまるで救援するような行動をとっている。これをどうとるべきか。


 ただ、奴らとの会話を聞く限り、あの二人の意見は大半がかみ合っていない、むしろ対極する仲であるはずだ。力無き者すべて倒そうとする黒い方に正義を名乗る赤い方。もしかすれば、仲間と言う黒い奴の執念が奴らを引き付けたのか? もし、赤い物の仲間を欲するようなタイプであるならば手を組む確率はあるが……どうだろうか。


 いや、違う。黒いのはかなりこちらの事に不快感を抱いている様子だった。だとすれば、赤い物に力を貸し共闘でこちらを潰しにかかろうと言う考えなのだろうか。


「おい、お前。黒い奴も邪魔してくるのだったら、同じように倒してしまっていいよな」


「……いえ。それは待って下さい」


「なに?」


「もし、彼らが共闘すると言うのであれば黒い方はわたしが足止めします。あなたの目的は赤いアウディーター、ただ一つに絞ってください」


 もし、ただ共通の敵と言うだけの仲であれば、いくらでも崩すチャンスはある。人類すべてが進化した世界にはアウディーターも必要。無意味に倒すのは避けるべきだ。


 むしろ、黒い方にはこちら側の者になってほしいと言うところもある。尤も彼には考えがこちらと対立していると思われている以上、そううまくいくとは思えないが。まずはもう一度、黒いアウディーターと会う必要がありそうだ。


「わたしは離れます。また遅れる訳にはいきませんからね。いいですか。くれぐれも」

「分かってるよ。ここから出ないし、お前の指示にされる時以外力は使わねえ。何度も言わなくていい!! この力をくれた恩ってもんもあるからな。それぐらいの指示は聞く」


「ふっ、ありがたいことです」


 取りあえず立神魁の管理に関しては問題ないみたいだ。勿論、信用出来る訳では無い。立神が食べる二、三食分の食事が残っているか確認すると、窓から見える外を見た。


 一気に体中の力を抜くと体に変化が訪れる。鈍い光と共に体格が変化していき、やがてキマイラの姿から人間の姿へと変わる……否、元の姿に戻る。


 着ているスーツを整え、チャーミングな笑顔を忘れていないか一度顔を作る。さらに髪を一度整えると廃墟を出て、街中そして自宅へと戻っていった。

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