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戦慄のアウディート  作者: 亥BAR
第三章 警察の驚愕
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警察の驚愕(4)

「クソッ、お前、本当に何なんだよ!?」


 そんな叫びと共に周りの空気が一瞬にして暑くなった。まるで空気が震えるような振動と共に熱がレッドを中心に広がっていくよう。一瞬にして目の前に広がったのは光。いや、炎だ。突き出された左手から火柱が立ち、一瞬でライオンに向かって豪炎と化し襲う。


 ライオンはすぐさま反応、跳躍し、一瞬で十数メートルも高いはるか上空に逃げ去る。


「逃がすと思うか!!」


 だが、レッドは叫び、今度は右手を上に突き出す。それに合わせ豪炎はライオンに向かってまるで龍のように昇りながら追っていく。その光景に圧倒されるしかなかった将平だったが、隣にいた先輩、百々宮はぼそっと呟く。


「右肩が治っている……、再生している……」


「へ? あ! そう言えば!」


 レッドは躊躇なく右手を上に突き上げていた。しかし、その肩にさっきまであった血が滴るほどの傷口はもうない。炎は空中にいるライオンをとらえ、今にも炎で包み込まんとしていた。


 その空気の熱が襲うが、眼を放すまいとライオンをひたすら目に捉えていたその時。


「消えた!?」


 そう叫んだのは、誰でもない向こうで炎を操っているレッドだった。直後、炎が空中に一気に凝縮。やがて火の粉となって空中にチリジリになっていくが、レッドが右手を一振りするとその火の粉は地面に落ちることなく消滅していく。しかし、ライオンはそこにはいなかった。


 確かに、消えていたのだ。空中で逃げ場がなく、炎に囲まれていたはずだ。本来ならば焼き焦げたライオンがそこにいてしかるべきだが、影も形もない。


 慌てて百々宮の方に目を移すが百々宮もまた信じられないと言った目でもう既に何も存在しない空中を見据えていた。しかし、口がかすかに動いているのが分かる。


「消えた……? ライオンが……、消え……たの……か?」


 その百々宮は何かを悟ったような雰囲気だった。ただ圧倒的な光景になすがままになったわけではなさそう。尤も、こちらは何一つわかりやしない。レッドも何が起こったのか分かっていないらしく、同じようにまた空中をぼーっと見据えているだけ。


 だが、束の間。レッドは腰を落とすと翼を広げ出す。まさに空に舞おうとする時だった。


「待ちなさい!」


「と、百々宮先輩!?」


 百々宮が翼を広げるレッドに向かって拳銃を突きつけた。機動隊など無視して前に一歩出てレッドの前で堂々と構えている。それに対しレッドはそのまま膠着したように停止。しかし翼を折りたたむとギロリと赤い目でこちらの方を睨み付けて来た。


 流石の百々宮も少し怖気づいたのか一歩後ろに下がるが拳銃を構えたまま。機動隊も相手の出方によっては発砲も必要と備えているが、レッドはゆっくり手を挙げはじめた。


「俺は警察に危害を加えるつもりはいっさいありません。申し訳ないですが、銃を下ろしてはもらえませんか?」


 両手を天に掲げるレッド。まさにそれは抵抗しないと言う意思表示だったのだ。機動隊が少しざわめき、将平もどうすべきかと戸惑いかけたが百々宮はそれを一蹴した。


「銃が効かない事は既に承知しています。その鱗のような皮膚は弾丸を通さない。ならば、何十もの銃口があなたに向くこの状況であったとしてあなたの方が有利なのでは?」


 レッドはそれに対し面食らったかのような顔をしたが、直ぐに含み笑いをこぼす。


「確かに……、一理ある……な」


 そう言うとレッドは上げた両手をゆっくり下ろし始めた。それに反応した機動隊が緩めかけていた警戒を再び上げる。ただ、その中でも一歩前に出たまま後ろに下がろうとしない百々宮の事がどうも気が気でない。

 何度か百々宮に「戻りましょう」のジェスチャーをかますが一瞥されるだけでそのまま油断なく拳銃をレッドに向かって構え続けている。

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