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13:冬季の北方にて

更新再開しますた。

 多難な日々から月日が経ち、十四回目の冬を迎えたトマ以下「北討義勇会」

茶会のメンバー+1は全央帝国北方に来ていた。


 というのも冬になると帝都空曠クァンクォ大華龍ダーファロン

北の寒気の影響が強いため、ほぼ毎冬が豪雪となる。

なので冬の到来と共に雪が強まる前に学院は「冬休み」となるのだ。


「にっへっへ…! 外はやっぱ寒いなぁ?」

「………」


 現在トマ達は大瘤鹿という体長二丈(約6m)ある動物が引く鹿車で

北方諸侯の領地へと向かう雪道を揺られていた。


「おいイェルムンナー? アラフミヤンガ侯爵領まであとどんくらいだ?」

「………」


 ちなみに何故か同行してきやがった美銀星メイユィンシンが先日やらかしてくれやがった

先日の熱烈接吻ベロチューからの嫁宣言という大空襲じみた話は公になっていない。

まぁ彼女の同道の理由から大体は分かる事ではあるが。


「………」

「………」

「………」

「………」

「てかお前ら凍ってんのか? 微動だにしなさすぎてアタシ退屈なんだが」

「………無茶を言わないでください殿下」


 仕方なく反応したトマ以外の面子の反応は無言という共通項以外は

中々に様々である。

 ハノークは未だに現実感が無いせいか視線が遠泳中だし、イェルムンナは

メイユィンシンが何者か承知でしかも帰郷なので下手を打ちたくないし、

エアメルドゥクは己と父の立場とトマの弟としての変な意地が拮抗してるし、

ブレないエンリルエリシュは相手が皇帝の娘だろうが知ったことじゃないと

思い切り憮然とした顔でメイユィンシンを睨んでいるし、

この間血の涙まで流したライラはライラで「隙が…いや…暗剣は今じゃない…」

等とブツブツ不穏なことを口走っているのだ。

 ちなみにエンリルエリシュとライラはトマの両脇を固めているので

いろんな意味でトマは七面倒くせぇと辟易している。


「だってさートマ? さっきから雪ばっかで眠くなりそうなんだぜ?

暇なら何か面白い話とかしてくれねぇとアタシ退屈すぎてお前と

この間よりも蜜月な事いかがわしいことしたくなっちゃうじゃん」

「そういう言葉は何卒慎なにとぞつつしんでいただけませんか殿下」


 今両腕がもげそうな位の力が篭ってるんだよ…! と言いたいトマである。


「じゃあ何か面白い話してくれよー?」

「殿下にとって面白い話が僕のする面白い話に符合するかわかりませんが」

「黙ってるよりマシだから何でもいいぜ? なんだったらアタシが穿いてる

今日の下g」

「勘弁してください殿下」


 エンリルエリシュがこれ見よがしに歯軋りしてんだよ…! と言いたいトマ。


> > >


 仕方が無いのでトマは自分の前世むかしの戦いの話を何処で読んだ

物語だったとかそんな理由にしてこちらの世界の尺度に合わせて話し出す。


「にはっw 星落としとかww 山の岩の雨なら分かるけど天の星とかwww」

「殿下、物語なので真に受けないで下さい。ともかくその死の王は…」


 ふと周りを見ればエアメルドゥク、エンリルエリシュにライラの三人は

何かを察したか目を輝かせてこちらを見つめ、ハノークはハノークで

「岩の雨か…鍛錬すれば、あるいは…」とか真面目に考察を始めているし、

イェルムンナも「応用できそうですね~」とニコニコしている。


「お嬢様、皆様! そろそろ侯爵領に入りますぞ~?」


 キリのいい所で丁度よく御者がこちらに声を掛けてきたのは行幸だった。


「おっ? どれどれ……にっへっへ…! 間違いねえ、あの包家パオは確かに!」


 ここでのパオとはいわゆる焼売シューマイや饅頭の事ではなく、そのような形に見える

北方特製の組立式天幕型住居のことである。我先に鹿車のほろから顔を出した

メイユィンシンの視線の先には、雪原に点在するパオの集落であった。


「おお…これが北方のむらなのですか兄上?!」

「ホントにパオにそっくりですねお兄様!」

「ふむ…(北方は帝都よりも豪雪地帯だと聞く…であれば、帝国の

瓦屋根では雪であっという間に潰れてしまう…だからこその組立式か)」


 トマの知る積雪など気にも留めない上位文明に遠く及ばない低位文明が

一般的と思われるこの世界の北国での素朴だが高い実用性があるだろう

生活の知恵に少し感心するトマ。


「そろそろ降りる準備もしませんとね~」

「うむ…おっと、土産は無事であっただろうか…?」


 目的地が近いと知り、イェルムンナやハノークは慣れた手つきで

降車の準備を始めているのでそれにならうことにしたトマ。


> > >


 白い吐息を吐きながら鹿車から降り立つトマたち。


「ここが北方…アラフミヤンガ侯爵領…」


 先ほど通り過ぎた邑に比べれば、間違いなく立ち並ぶ家々の数が段違いだ。

普通より尖った様な張り方をした天幕型家屋は積雪対策の賜物といえよう。


「はい~。ここがアラフミヤンガ侯爵領主都:ペリメニスタンです~。

改めましてようこそ我が故郷へ~」


 トマに故郷を紹介できて嬉しそうなイェルムンナである。


「ぺりめにすたん? なんだかパオの一種みたいな名前です?」

「北方の地名は帝国では聞かない呼び方が多いですね兄上?」

「あら~エニちゃん良い勘してるわね~? ペリメニスタンは白王国カリタールシ語で

“餃子の国”って言うそうですよ~?」

「ぎょ、餃子…?」

「ふむ、言い得て妙だな」

「毎冬ごとに都の様相は都度都度変えざるを得ませんからね~。

包みなおすって意味でそのまま餃子ってわけにはいきませんから~、

あえて北方の連中カリタールシの言葉を使ったそうですよ~?」


 ちなみにカリターとは帝国北方領地の氏族に伝わる古い言葉で

“財布”を意味するらしい。北方に居ても帝国の連中のブレない姿勢に

呆れを通り越して感心してしまったトマ。


「ん? とすれば大熊白王国の連中は自国を何と呼称してるのやら」


大いなる白銀王国ボリショイセレブリャカロリュストぞ」


「む…」


 聞き覚えのある声がしてその方を見れば、騎馬武者姿の背中に二本の大剣、

腰に数本の小剣と両手斧を携えた顎鬚と片眼鏡をした壮年の偉丈夫が、

少数だが騎馬部隊を伴って立っていた。


「久しいなハルマローシュの子らよ。七年ぶりであったか?」

「どちらさまなのです?」

「兄上…? こちらの方は…?」

「もしや、北方公爵殿…?」

「如何にも。ほんの数回しか顔も合わせておらず、かつ儀礼装であったというに

よく覚えていたな。眼鏡外し髭も剃っていたのだぞ…?」


 ハッとしてトマは礼をし、エアメルドゥクとエンリルエニシュもそれに倣う。

ちなみにハノークとイェルムンナはトマが北方公爵と言ったのを聴いた瞬間に

すばやく礼を執っていたので心配は無用だった。

 あと何か声かけられた段階からメイユィンシンがビタッと

隠れるようにくっついてきたので、ちょっとうざったいなと思ったトマ。


「良いのだハルマローシュの。今回はお前達と会う予定もなかった…

とはいえ、中々に様になっておるぞ? 男子三日会わざるば括目して見よ…

とはよく言ったものであるぞ」


 馬から降りてエアメルドゥクから先に握手をしていく北方公爵。

エニは相変わらず「?」であるが、エアメルドゥクはガチガチだ。


「ふむ、そういえば正式には名乗っておらんかったな。改めて名乗ろう、

某は帝国四方公爵が一人、北方諸侯・豪族の指揮を預かる

氷山ビンシャン一狼牙イーランファン=メツァシュタヤ・フラウロティ六世である。

某のことはイーランないしメツァスとでも呼んでかまわぬぞ」

「恐れ多いのでフラウロティ公爵とお呼びします」

「そうか……………ではメイユィンシン殿下。後で某とオハナシしましょうぞ」

「にゃへげっ!?」


 トマは内心セム公爵がセム公爵なのでフラ公爵とか呼ぼうかと思ったが、

うっかり口を滑らしたら面倒くさい事になるのが予想できたのでやめた。

 あとメイユィンシンがフラウロティ公爵に朗らかな笑顔だが、

その実中々に剣呑なオーラを発して「後でオハナシ」しようと言われて

すごい顔になっていたのはちょっと面白かった。


「ところでフラウロティ公爵は何故こちらに?」

「その点に関しては、イェルムンナ嬢。お前の父に関係しとるぞ」

「お父様にですか~?」

「そして北方蛮族…北狄ほくてきに関することぞ」


 北方蛮族と聞いたイェルムンナは武人モードに切り替わった。


「イェスゲノフスキ…! …奴ですか?! 奴に関することですか?!」

「それに関しては侯爵に会ってからぞ」


 馬に乗ったフラウロティ公爵は「適当な騎馬兵の後ろに乗ってついて来い」と

言ったので、そうすることにしたトマ達…だったのだが、


「お、おいこらどうしたセルゲイ号? 氷河大狼ヴァナルガンドも恐れぬ

軍馬のお前がどうして怯えているんだ?!」


 トマが乗ろうとすると立派な軍馬が生まれたての仔馬かの怯えて

とてもじゃないが乗せてもらえそうにないのだ。


「………」

「兄上、兄上は何も悪くありません!」

「お兄様の凄さが分からない駄馬どもが悪いのです!」

「あー、たまにアタシもびびられることあるぜ? だから気にすんなって?」


 嬉しいような悲しいような何ともいえない感情だったトマだが、


「ガウ、ガウ!」


 と軽く吼える声がするのでその方を見ると。


「ハッハッハッハッハ…ぐわふ!」


 いつの間にそこに居たのか、大瘤鹿よりさらに一回り大きな

白熊と白獅子と白狼を合体させたかのようなクソ馬鹿でかい獣が、

トマに対してブオンブオンと尻尾を振り仰向けに腹を見せて

「だったら我に乗れ★ 我が明王☆」とでも言わんばかりのドヤ顔をしていた。


「ま……ままま…?!」

「ま?」


「「「「「月喰大狼王マーナガルムううううううう!?!?!」」」」」


―うわああああああ!?

―何で主都にいいいいいい?!

―喰われるっ!? 喰われるぅうううう!?

―ひぃいいやああああああああ?!


 マーナガルムなる大きな獣の闖入に兵士達の叫びで場が騒然としたが、

トマはその獣が自分に分かりやすいレベルで服従の意を示していたので

とりあえずそのお腹をモフっておくことにした。


14:に続く

もはや定番のモフりんモンスターが出ちゃったか…無論私は犬派です。

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