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「#幸せな家族」  作者: 浅見つむぎ


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第八章:商店街の祭典

登場人物


名前: 横山悠斗(よこやまゆうと)(夫)、横山瞳(よこやまひとみ)(妻)

年齢: 夫・妻ともに 32 歳

職業: イベント協力店の店主(小売業)

地元商店街のイベント「大野知花ちゃんファン感謝祭」において、協力店舗を運営する重要な役割を担っています。


本文


夏の日差しが、地元の商店街を照らしていた。


大野知花(おおのちか)ちゃんファン感謝祭」の看板が、商店街のアーケードに掲げられている。立て看板には、笑顔でポーズをとる知花のポスターが貼られ、通りを歩く人々の視線を集めていた。


イベントは13時から始まる予定だったが、すでに商店街の入り口付近には、早めの到着したファンたちが集まっていた。


「さあ、いよいよだ」


父・宏樹(ひろき)と母・京華(きょうか)は、会場設営を手伝うスタッフたちと挨拶を交わしながら、準備を進めていた。


「今回は地元商店街とのコラボだから、盛り上がりも予想以上だよな」


宏樹がスマホでチェックしているスケジュール表を見ながら呟く。


隣に立つのは、いつも通り笑顔の京華だった。だが、彼女の瞳には、少しだけ疲れの色が浮かんでいた。


会場内では、すでにスタッフたちが最後の調整を行っていた。ステージは簡素だが、知花のファン向けに用意されたグッズやサイン会用のペンが並べられている。



宏樹がスマホを片手に、少し離れた場所から声をかけた。


その言葉に応えるように、すぐそばで佐々木家のみんなが到着していた。


父・大輝と母・真由美は、それぞれに大きなバッグを持ち、娘の杏は興奮した様子で知花のポスターを指差している。


「ちかちゃん、来たよ!」


杏が手を振って挨拶すると、ステージ上の準備を終えていた知花も、すぐに振り返って微笑んだ。


「あー、杏ちゃん!」


二人は互いに抱き合ったりして、いつものように楽しそうに話していた。


藤田恭平も、このイベントに姿を見せていた。


彼は普段通り、作業着姿で、人混みの端から知花の姿を伺っている。


「……今日もかわいい」


彼の視線は、ステージ上の知花に固定されていた。


今回はイベント会場として商店街が使われているため、自宅に近い場所でもあったが、恭平はあえて遠くから眺めるようにしていた。


「あの時、怯えた顔も忘れられないな」


彼はポケットの中のスマホを指先で撫でながら呟いた。


ステージ上の知花の姿は、完璧に整えられたアイドルのような輝きを放っていた。だが、その背後には、誰にも見えない影が潜んでいることを、恭平だけが知っている。


「さて、いよいよ本番だ」


宏樹がスタッフに合図を送ると、ステージ上から知花が現れた。


彼女はイベント用の衣装を着ており、髪も整えられていた。だが、その表情には、少しだけ緊張の色が見えた。


「みんな、こんにちは!」


知花がマイクに向かって声をかけると、周囲のファンたちが一斉に拍手を始めた。


「おおっ! ちかちゃん来たよ!」


「サイン会もあるんだって? すごい!」


商店街の人々も、子供たちも、大人たちも、それぞれがそれぞれの理由で集まっていた。


その中で、特に活発だったのは、横山夫妻だった。


彼らは、このイベントの協力店を運営する小売店の店主であり、知花のファンでもあった。


「さあ、準備完了です!」


横山夫妻は、ステージの周りを動き回りながら、スタッフたちと連携を取っていた。


「宏樹さん、今回は特に盛り上がってそうですね」


横山悠斗が、宏樹に声をかけた。


「はい、地元の方々の反応も良いですね」


宏樹が応えると、隣で京華が微笑んだ。


「でも、ちかちゃんには少し休んでもいいからって言ってあげてね」


彼女は、ステージ上の知花の姿を気にしながら言った。


その言葉に、宏樹はうなずいた。


「そうだな……今回はイベントだから仕方ないけど、次の撮影はもう少し間隔を開けよう」


会場内では、サイン会や写真撮影が行われていた。


ファンたちは順番待ちをしつつ、知花のグッズを購入したり、記念写真を撮ったりしていた。


その中で、特に賑やかだったのは、杏と知花との交流だ。


「ちかちゃん、またダンス教えて!」


杏がステージ上で踊りを見せると、知花も一緒に手を振って応えた。


二人の笑い声が、商店街全体に響き渡っていた。



その光景を眺める藤田恭平の表情は、恍惚とした笑みを浮かべていた。


彼はポケットの中のスマホで、ステージ上の知花の姿を撮影していた。


彼の瞳には、好意という名の眼差しが注がれていた。


「知花は俺の嫁(オレノモノ)になる運命なんだ。」


彼は呟きながら、次の瞬間に知花が誰かと握手をする様子を捉えた。


その瞬間、知花の表情は少しだけ硬かった。


「……疲れてる?」


横山瞳が、ステージ上の知花に声をかけた。


「うん、でも大丈夫」


知花が微笑って応える。だが、その声には、わずかな震えがあった。


会場内では、まだ盛り上がりは続いていた。


子供たちは興奮して走り回り、大人たちは談笑しながらグッズを購入していた。


商店街の照明が点灯し、夜の色が深まってきた。


イベントは予定通り、午後8時頃まで続いた。


最後に、ステージ上で知花がファン全員に感謝の言葉を述べた。


「今日は本当にありがとうございました!」


その声に応えて、会場全体から拍手と歓声が返ってきた。


宏樹と京華は、スタッフたちと挨拶を交わしながら、みんなに感謝を述べていた。


佐々木家も帰路につくことになった。


「またね、知花ちゃん!」


知花が手を振って応えると、杏も微笑んで応えた。


その場に残ったのは、藤田恭平だけだった。


彼は、最後の瞬間までステージ上の知花の姿を見つめていた。


「……また会えるかな」


彼は呟きながら、スマホで撮影した写真を確認した。



会場から少し離れた場所では、横山夫妻も立ち止まって見送っていた。


横山悠斗が呟きながら、瞳の手を握った。


「ちかちゃんみたいな子供が欲しいね。」


瞳も同じ気持ちだった。


「私たちの娘になればいいのにね。」


二人は商店街の入り口から、ゆっくりと歩き出した。




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